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税務調査で知った財務省キャリアの実態

公文書の書き換えが発覚して、財務省の信用が失墜している。元官僚の人たちが、財務省キャリアはエリート中のエリート。皆聡明で真面目だ。そんな人たちが違法に公文書を書き換えたり、書き換えさせるなんて、よほどの圧力があったに違いない。みたいな評で共通しているようだ。

政治家からの圧力があったかなかったか。あったのでしょう。でもそんなことよりも、私にはOBたちの説明に違和感があります。財務省キャリアが書き換えをさせても不思議じゃない。それほど真面目ではないでしょう、違法なこともするよと思っていました。それは税務調査での経験があったから。


税務調査とは、こういうもの

税務調査と聞くと、悪いことをしているんだろう。誤摩化しているんだろう。そういう会社が調査されるんだと思っていました。自分の会社が初めて、税務調査を受けるまでは。

うちの会社は5度、税務調査を受けました。黒字を出していれば、4、5年に1度は必ずやってくるのです。赤字になってからは、1度も来ていません。赤字だと、税務署の皆さんは優しいのです(笑)

明らかに不正なことをやっていると目をつけられれば、突然に二人の調査官が訪れるそうです。問題がなくても、利益が出ていれば税務指導と称して定期的に、やってきます。うちの場合は、毎回ひとりの調査官がやってきました。税理士のところに連絡が入り、日程の調整があります。朝9時すぎから夕方16時ぐらいまで、二日連続で調査を行います。

帳票類はもちろんのこと、出勤簿なども過去5期分だっとと思いますが、揃える必要があるので、打ち合わせスペースは書類の段ボールで埋まります。原則は、何を聞かれても答える義務があるということです。レシート1枚でも、その内容について聞かれて「わからないです」と答えても、調べてくださいと言われます。


調査官によって、印象も調査の中身もまったくちがう

本当に酷い人もいました。女性の調査官でしたが、大きな問題が出て来ないからなのか、帰らないのです。記憶では二日目の19時近くになっていたと思います。税務署から調査官宛に電話が入り、それでも粘っていたのですが、まもなく帰ってくれました。

途中の会話で分かったのは、夫婦で税務署勤務。夫婦で大阪から東京に転勤になったばかりということでした。転勤直後の税務署でも実績を上げたかったのでしょう。

それは5度目の税務調査だったので、それまでに指摘されたような処理は、全部潰しています。不正なことをしていなければ、処理の解釈でどんな風にでも指摘されてしまうのですが、その解釈方法もだんだん分かってきます。それで3度目からの税務調査では、ほとんど何もないのです。

何度か、税務調査ではお土産があった方がいいのかどうかと、聞かれたことがあります。お土産とは、100万円近くの修正申告が発生するような漏れや仕分けを用意しておくこと。しかし調査が決まってから仕込めるのは、日頃から不適切な処理をしている会社だけではないでしょうか。

私は不正とか間違った処理をしていなければ、そんなもの必要ないと思っています。ただ、なかなか帰ってくれない調査官がいたことも事実です。


初めての税務調査は、大蔵省のキャリアがやってきた

27年間で計5人の税務調査官と向き合いましたが、うち3人は常識的な人です。たとえば2000円の領収書の中身について聞かれ、記憶がはっきりしていません。調べますかと返事すると、大した金額じゃないのでいいですと返ってきます。

誤摩化しているわけではなく、時系列を追っていかないと思い出せません。5度目の税務調査では、メールを見せてくれと言われました。どうぞと自分のパソコンの前に座らせ、メーラーを自由に触らせました。

当時だと最低でも日に30件ぐらいのメールのやりとりをしています。それを何年分チェックされたのかはわかりませんが、私の知らない・憶えていない会社は、多数出てきます。

クライアントとのやりとりするメールでも、先方4人、こちら3人にccするのなんて普通ですし、そこに別の会社が加わったり、海外の企業が加わっていたりします。そこにまったく知らない会社があったりすることは、日常的にありました。うちはほぼクライアント直の仕事だったので、媒体社や広告代理店もccに含まれていることは当たり前だったのです。

たとえばAppleの製品をプレゼントにしたキャンペーンをやったとします。そうなるとどういう表現で使われるのか、事前にApple社の許可を取る必要があります。日本のAppleもアメリカのAppleも、ぜんぜん知らされてもいない会社も何社かccの中に入っているのです。それでこの会社はどういう関係だと聞かれても、まったく知らないのです。

こういうことを聞くのは何かを疑っているというよりも、なんでも調べる権利があるんだぞとプレッシャーをかけてボロを出すのを待っているのかもしれません。実際、この方は途中からケンカ腰でした。まるで取り調べを受けているようです。

こういう人の税務調査を受けると、税務署やその上の国税庁、財務省に悪印象を持たない方が不思議です。毎年利益を上げて多額の納税をしているのに、いったいなんだよと。

しかし決定的に印象が悪くなったのは、はじめての税務調査でした。大蔵省から税務署に出向して来ている、東大卒の若いキャリア官僚がやってきたのです。


知らなかった仕掛かりの未計上を指摘される

本来、税務調査官は自分がキャリアなのかノンキャリアなのか、あるいはどういう素性なのかを話さないものかもしれません。実際にはこちらから聞かなくても、たいがいの調査官は自分から喋ります。

最初の税務調査では、会話の中に使われる単語があれ?と思ったので、「大蔵省から来られているのですか?」と私が聞くと、素性を自分から喋り始めました。当時は、財務省ではなく大蔵省です。

キャリア官僚の出世コースについてはあまり知りませんが、現場に2年ほど出て、本省の係長になったりするのでしょう。以前は税務署の署長に20代後半でなったケースが多かったようですが、現在は禁止されているそうです。

つまりこのときの調査官は、20代前半だったはずです。私は30歳のときに会社を作ったので、30代半ば。10歳差はあったはずです。順調に行っていれば、いまでは本省の課長とか、それこそ理財局の局長みたいなポジションなのでしょうか。

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