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コロナ危機をチャンスに変えるエデュテイメントと組織改革

40S CREATOR’S INTERVIEW 中間地点折り返し戦略」4回目は、コロナ禍のステイホームで伸びるネット通販と通信講座、その両方を兼ね揃えたワインやチーズの通信講座を展開しているVino Hayashiの林功二さんに成長するビジネス状況、そしてこのコロナだからこそ変えられた会社の組織改革についてお話伺いました。

株式会社VinoHayashi 代表取締役 林功二
ワイン輸入販売会社『Vino Hayashi』を2010年11月に設立。イタリア国内のみでしか流通されていなかった、希少で個性豊かなイタリアワインの輸入販売の他、累計受講者数4,000人を突破したイタリアワイン通信講座をはじめ、イタリアチーズやパスタの通信講座を展開している。Vino Hayashi(ヴィーノハヤシ)公式サイト

以下、太字はインタビュアー、細字は林さんです。

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ノンストップで生産者と消費者を繋げたい


ーー以前からイタリアワイン通信講座をやってらっしゃいましたが、最近パスタの通信講座もスタートしました。チーズもやってますし、ここ数年のビジネスの広がり、変化について伺いたいなと思いまして。

2010年の秋にVino Hayashiを設立して、11年目に突入した所です。その当時から我々は生産者からワインを輸入してワンストップでお届けしていましたが、将来的にはノンストップになるだろうと考えてました。

海外のお酒の流通で言うと、ワインを生産者から仕入れるインポーターがいて、仲卸がいて、酒屋さんとかの小売りがある。街の酒屋さんは直接インポーターにはアクセスできない場合も多く、仲卸を挟んでくださいねってなってる。で、やっと消費者に届く。この仕組みって誰がどう考えても流通でコスト高くなりますよね。間で何十%ずつ抜いていったら、ほとんどマージン飲んでるみたいじゃないですか。さらに倉庫もたらい回しするとなったら、ワインの状態も良くないですよね。というので、この流通の間をワンストップに、ゆくゆくはノンストップにっていうのが最初に考えていた事。

僕は元々商社にいて、トレーディングっていう機能の中の人なんですよ。商社の機能ってブラックボックス。海外の言語や法律もわからないでしょ、全部やってあげるよって感じで色々なファンクションがあるように見せている。昔は現地と連絡するのもテレックスとかファクスとか。そういう時代には現地もすぐ見に行けないので、商社にファンクションはあったんですけど、今みたいにインターネットが発達して、メールだったりテレビ電話でタダでコミュニケーションが取れるってなったら、ブラックボックスの中身空っぽになっちゃうじゃんって。

ーーそのブラックボックスをノンストップで置き換えると

我々の「ノンストップ」のファンクションは、物流とマーケティング。例えば世界で300本しかない希少なワインがあったら、わざわざ流通に乗せる必要性ってない。直接生産者から買って、しかも作り手が「ありがとう」って書いたメッセージ付きで届いた方が絶対いいよねって思うんですよ。限定300本であれば、そこそこ上代も高く設定できるので、直送のコストも吸収できるし。

例えば楽天で同じワインを色々なショップで売ってるじゃないですか。インポーターが持ってきて、全国の酒屋さんに流して、色々な酒屋さんが楽天に出す。何が起こるかって言うと、価格競争しか起きない。人気のワインを最安で買った経験があると、高く買いたいって思わないし、損してる気分になる。大量に持ってきてディスカウントできるワインだったら成り立つかもしれないけど、日本に持ってくるのが1,000本未満だったら、丁寧に売る方がお客さんにとっても良いだろうし、そういう生産者から直接買う時代がくるんだろうなって思って、生産者と消費者をつなぐプラットフォームを作りたいなって考えていた。けど、なかなかその時代はこなくって。で、この構想については忘れていた。

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イタリアワイン通信講座 Instagram@vinohayashi


ーー通信講座はそれとは別で?

プラットフォームの構想とは別で、もうひとつ自分たちの機能は何かって考えた時に、海外からワインを持ってくる事は誰でも出来るから、自分たちオリジナルの商品を持ちたいよね、やってて面白くないしね。で、始めたのが通信講座。4,000円のワイン2本で8,000円。それを7,000円で売ることは誰でもできる。我々は自分たちのコンテンツをつけて10,000円で売るって事をやろうって決めた。今は色々なコースができて、凄く面白いことになってる。この通信講座の展開もあってプラットフォームビジネスの事はすっかり忘れていた。それがふと、昔やりたい事あったよなって思い出して。で、今いいよね、機は熟したと。

ーー機は熟したといのは?何が変わったんですか?

食べチョクとかポケマル(ポケットマルシェ)が出てきて、産直のマーケットプレイスが違和感なくなってきたという時代。そして、SNSの発達。生産者がしっかり発信できるようになってきた。ビジネスを始めた2010年当時、日本ではFacebookは今ほどではなかった。海外の生産者が伝えるにも翻訳する手間も発生していたし。それが今すごいレベルで、コストもかからず自動翻訳でテキストが入るようになっている。これはイケるって思った。

産直のマーケットプレイスでも、生産者に直接コメントを入れることができる。それが自動翻訳があれば、海外の生産者とも大体ニュアンスでわかるようになる。「美味しかった」って書き込んだら、生産者が「ありがとう」ってコミュニケーションが生まれる。国内の生産者でも嬉しいのが、海外の生産者からそんなの来たら、めちゃくちゃ嬉しいじゃないですか。こういうコミュニケーションに、モノだけじゃない価値があるなって。モノだけのやりとりって別に面白くないなって。エールの交換じゃないですけど、メッセージのやりとりって凄い価値だなって思うんですよね。

それを強みであるイタリアでやろうとしてるんですけど、イタリアだけじゃなくて、イスラエルでもジョージアでもやりたいなって考えてる。僕らがなかなか行けないところ、ワインをたくさん作っているんですけど、そこの生産者から買って、会話が始まって、仲良くなって、「今度行くよ」みたいな展開になったら凄く良いなって思うんですよね。初めて行くのに知り合いがいる、行きつけがあるみたいな。そういうのを繋いであげたいなって。

そういう想いを思い出して、実際にプラットフォームを開発してくれるベンダーさんに話聞いたりしているところ。でも、いきなりアプリをつくって、マーケットプレイスを作るのが良いのか、もっとスモールにスタートする方法もあるのかなとも考えてる。例えば、現地の生産者のお店をShopifyで作ってあげて、アジアのマーケティングを任せてもらって、幾らか手数料をもらう。彼らがもしドイツでマーケティングやりたいってなったら、僕らは不要なので自由にやってもらう。それぐらい緩い繋がりの方が、今時かなとも思う。がちがちに儲けるぞっていうんじゃなくて、もうちょっと違う価値を生み出したいなって考えています。

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イタリア土着品種研究会 Instagram@vinohayashi


「自分らしさ」のために起業した

ーー起業された方に伺いたいのは、なぜ起業しようって思うのか、バックグラウンドを伺いたいなと

うちの実家は自営業で紳士服の用品店を名古屋で夫婦二人でやってるようなお店で。僕の周りにサラリーマンがいないんですよ。なので、そもそもサラリーマンになるイメージが無かったんですよね。親からは安定したサラリーマン、自衛官などの国家公務員になったら良いんじゃないって言われ続けたんですけど、イメージが無いから出来ないっていうか、そこで幸せになるイメージが無いんですよね。

親父は、ほとんど年中無休で働いていて、お店は10時ー8時とかで営業していて、「そんな長くやる必要あるの?」ってぐらいやってて。
でも、親父見てるとなんかハッピーそうなんですよね。好きな事やってる感じがして。凄く働いてて、こんなに働く必要ない、もっと生産性あげたらって思ってたんですけど、いざ自分が会社に入ったら、もっと生産性が低くって......もっと働いてたんですよ。9時には出社。しかも通勤で往復で2時間。

実家はお店の上だったんで、親父には通勤のストレスが無い。お昼になったらご飯食べにあがってたし。それが僕がサラリーマンになったら、寮から1時間かけて会社行って。仕事に貢献出来れば良いけど、新人なのでロクに貢献出来ないのに、夜の10時とか11時までいる。で、愚痴を言いながら遅くまで飲んで、全然回復しないまま会社に行って......何だこの競争は。この人たち幸せなのかなーって不思議に思ってましたね。中国での仕事をしてる部署だったんですけど、みんな単身赴任してて、日本に戻ってきても子供にも会えないぐらい忙しくて。

うちの親父なんかは、朝は店から子供たちが学校行くのを送り出して、学校から帰ってきて、「おかえりー」って迎えてって感じでずっと子供が見れてる。いいですよね。凄く幸せだったんだなって、自分がサラリーマンになってからわかった。

商社マンって外から見た恰好良さはあると思うんですけど、中から見たら全然恰好良くない。しかも、自分のやりたい事を我慢して会社の方針に従って。こういう風にやりたいんだっていうのは最初はありましたけど、自分のクリエイティビティを殺して、上に何と言ったらイエスと言うだろうって事だけを考えて書類をつくってあげた方が、自分の生産性は高い。自分がいる意味ってホントないなって思いましたね。

このままじゃ死んじゃう。自分が自分でなくなっちゃう感覚。早く脱出しないとって考えてました。週末、同期とビジネスプラン考えて、準備して。結局6年半勤めて、起業しました。時間かかりましたけど。

ーーどうですか、起業して。何が違いますか。

「自分らしさ」ですね。僕にとって自分らしさってすごく大事で。サラリーマンの時は、それに対する違和感を強烈に感じていて、サラリーマンを演じる、サラリーマンの林功二を演じてました。僕こういう人じゃないよなーって思ってやっていると、すごくストレスがかかるんですよ。でも、親がサラリーマンの同期を見ていると、何の違和感もなく働けてるんですよ、そういうもんだよねって。自分はそれがフィットしなかった。

ーー林さんの「自分らしさ」て何ですか

僕の特性というか、趣味嗜好としては、「人と違う事をやる」ていうのがある。他人がやらない事をやる、それが自分の価値だと思っていて、それに対してのリスクも取れる。普通、人と違うと失敗するリスクは高くなるし、不安になるし、やめとこうってなる。僕の場合は、違うことは自然だし、楽しくなるし、ストレス耐性もある。逆に同じだと、同じだったらやらなくていいよねって思っちゃう。前いた会社はリスクを取らない会社だったので、選ぶ会社間違えたっていうのはありましたけどね(笑)

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イタリアチーズ通信講座 Instagram@vinohayashi


やるかどうかは、その人の熱量だけ


ーー通信講座も増えてきてますけど、今後の展開は?

想像してた以上に凄く良いモノが出来ている。最初に始めたイタリアワイン定期購入コース、いまはItaliagrismo(イタリアグリズモ)っていう名前に変わって2本で1万円なんですけど、社内の人間で冊子の記事をやってるんですけど、凄く良くなってる。自分が始めたサービスが、自分の手を完全に離れて成長しているのが、凄く面白いなーって。


ーー冊子のレベルも高くて、出版社みたいですね。

そうなんですよ。最初はパワポのA4ペライチでやってたのが、出版社のクオリティになってる。これの上級編で出したのが、イタリアワイン土着品種研究会。ブドウの品種ごとに1号出してて、今40品種目。ちょっとマニアックなブドウ品種にフォーカスして、僕らも勉強しながら表現している。そしてもう一つ、「イタリア最高の産地を巡るワイン付きマガジン 月刊 DOCG」。イタリアの「地酒」の最高峰であるDOCG(イタリアワインの最高格付け)のワインを、毎号銘柄ごとに解説するマガジンを付けてお届けしている。デアゴスティーニみたいにしたくて「月刊」ってつけて。そんな事をやってたら、デアゴスティーニさんと仲良くなって、取引に繋がっちゃいました。それ以外にドイツワインのインポーターさんと組んで、ドイツワイン通信講座ってコンテンツ制作も行ってたりします。

あとはチーズ通信講座とオリーブオイル通信講座、今回新たにパスタを出した所。僕ら、クライアントワークではないので、誰の意見も聞かずに、自分たちがやりたい事を、楽しみながら作っている。うちのメンバーがこれやりたい、例えばパンやりたい、ビールやりたいって言ったら、やろうってなる。やるかどうかは、その人の熱量で突破できるかどうかだけなんですよね。

ーーワイン以外にもどんどん広がっていってますね

ワインって良い意味でも悪い意味でも、インテリな飲み物で、変なインテリ知識は、お客さんを遠ざけてるだけにしか思ってなくて、マガジンをパラパラ見ながら、わーキレイとか、こういう人が作ってるんだーとか、そういうふうに楽しむんだったら、そんなインテリ知識必要ないわけじゃないですか。そういう楽しみ方をしてもらえたらなって思います。

別の切り口のアプローチとして、アート・オブ・シャンパーニュっていう事業を合弁で2016年に作りました。コンテンツという付加価値でもっと勝負したいなと思って、よし動画をやろうって。
毎回、シャンパンとテキストと、メインが動画。動画は15~20分の動画なんですけど、めちゃくちゃ恰好良いんですよ。これも現地に撮影にいって、6Kのカメラで。ドローン飛ばして。これはホント、大スクリーンで見て欲しい。
これも僕としてはアンチテーゼがあって。シャンパンの名前だけとか、何々畑とか、どっち向きの斜面とか、そんなテキストベースの知識なんて無意味なんだと思ってて。それよりも、こういう感じの畑なんだね、こういう雰囲気の所で作ってるだっていうのを感じて欲しいんですよ。それと、作り手の声。動画から伝わる雰囲気で、こういう人が作るからこうなんだって伝わるものがあると思うんですよ。
当時、僕が全くシャンパーニュの知識がない中で、どれだけ面白がれるかっていうのでやりました。売れる見込みがないのによくこんな投資したよなって思いますよ。こういうところが僕のポリシーで、お金を払えば同じシャンパン飲めるけど、楽しみ方は違うよねと。それをやってるところです。

ーー今もやってるんですか

やってますよ。最近、チラシを入れたら反響よくって。コロナでみんな旅行に行きたいのに行けないって言うのもあるんじゃないですかね。今だからこそ価値がある。
僕は流れる商売が好きじゃなくて。毎月目標追ってっていうような。それよりもアーカイブを積み重ねていって、それが価値になっていくのが素敵だなって思ってて。これ(アート・オブ・シャンパーニュ)も5年前の映像ですけど、5年前の映像だからこその価値ってあると思いますし。ワインで言うとヴィンテージって価値がある。そういうの含めて面白いなって思いますね。ファッション雑誌みたいなトレンドを追ってるんじゃない、そんな価値を作っていきたいですね。

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イタリアオリーブオイル定期便  Instagram@vinohayashi

外の生存競争を社内に持ち込んだ組織改革


ーー仕事、楽しいですか?

めちゃくちゃ楽しいですね。起業した当初は何も考えられないぐらい、生き残るための事しか考えられないような状況でしたけど、今は、数字的にはまだまだですけど、精神的な余裕がでてきて、どっちに向かえば良いとか、色々な軸がはっきりしてきました。
一昨年、コロナの半年前ぐらいから、走り続けてきた歪(ひずみ)というか、違和感を感じていて。そこを変えなきゃって思っていたタイミングで、コロナがきちゃった。必然的に事業もブレーキ踏まなきゃいけない。頑張って売り上げあげなきゃいけないってやってきたのが、頑張れないじゃんってなってしまって。それで出来た時間で、組織の事をしっかり考える事ができた。普通、社内の体制を変えようと思っても既に出来上がった組織や価値観があるから、なかなか変えられないのが、有事だからこそ変えられる。自分がこうだよねって思ってた方向と、コロナでみんなが気づいた方向が一緒だった。

ーー思ってた方向というのは?

日本だとなんやかんやで時間給制度だったりするけど、成果給やジョブ型であるべきだよねって思っていた。日本は制度、整備が遅れていて、なかなか難しいんだけど、この違和感を全部解消したいなって。
何で違和感を感じるのかなって振り返ると、自分の頭で考えきれてなかったなと。事業は好きなので嬉々としてやるんですけど、じゃあ人事制度の設計どうしようかなってなると、人事系の会社のやってるセミナーを聞きに行って、なるほどなって理解して、そのままインストールしちゃってた。
そうすると、絶対あわないんですよね。何でそうするのかっていう思想の所から作っていかないと。一番根幹の部分を自分の頭で考えて、この組織はこうあって欲しいって想いも含めて作っていかないと、その方向に組織は行くわけない。何で社長がこう言ってるのに、そうならないんだろうって不思議ではあったんですけど、そりゃそうだなって。
例えば、社長が「チャレンジ精神をもって」って言ってるのに、会社の評価方法が減点法だったら、それはやらないでしょ。誰もリスク取ってやる人いないし、褒められるだけじゃ頭いい人はやらないよね、そういう歪がある。だから、制度から気合い入れて考えない限り、絶対みんなそっちに行かない。で、この春から新しい人事制度をいれて、いま経過観察中。何よりもまず僕の気持ちの良さが全然違う。違和感の原因の全ては制度にあったんだなって。それがコロナで良い時間をもらえた。

ーー変えてみて、どうですか?

2月から変えたんですけど、結構面白い。変える1年前ぐらいから対話を重ねたんですけど、みんなに言ったのは、僕がやらない事。何をやらないかと言うと、まず目標設定をしない。目標設定をするから評価っていうのがある。だから、評価しない。そして管理もしない。っていうのを決めて、やってる。

ーーそうすると、給料とかどうやって決めるんですか?

事業の利益ごとに「コミットポイント」っていうのを決めて、1ポイント×1万円で、ベース給にコミットポイント分が上乗せされる。各事業のディレクターは、事業の持つコミットポイントを振り分けてメンバーに加わってもらう。要はキビ団子みたいなもんで、キビ団子を配って仲間に加わってもらう。事業ごとのコミットポイントは年度ごとに見直す。

ーー目標は設定しないけど、数字ははっきりしてると

そもそも目標って二つあって、評価のための目標と、予算のための目標があって、評価のための目標って、野心的な目標を作る人とそうじゃない人がいるじゃないですか。この時点で不公平なんですよ。もうひとつ、予算のための目標があるんですけど、コロナになって予算なんてあってもなくても意味がなくなった。緊急事態宣言で、ワインを卸しているお店も閉まっちゃって。3カ月先も読めないのに、目標作る意味あるの?ってことで作らないでおこうと。
数字って経営者が欲しいから、怖いから欲しいだけで、無くても良いよねって考えた。目標作っちゃうとそれにあわせて、達成するともういいやってなっちゃう。そうじゃなくて、今のベストを尽くそうと。そうするとどこまでも行けるし、行けるとこまで行けば給料があがるわけで。この辺の設計をどうすれば一番いいのかなって考えて。で、今のシステムをいれてみた。そうするとディレクターみんな経営者の視点、担当する事業の社長の目で見れるわけですよ。コミットポイント、キビ団子を振る時のプランも作る、誰に何点って。で、お願いされたメンバーは拒否もできる。「〇ポイントなら」って交渉も出来る。メンバーが上司、リーダーを選べる。この人と仕事したくないなって思ったらしなくてもいいわけですよ。人望が無いと仕事にならない。

ーーなるほど。上司も気を使わなきゃいけない。

面白い効果としては、新しく立ち上げたパスタの頒布会なんかは、事業利益が出たら、コミットポイントが年度の途中でもいきなり入るわけですよ。新規サービスを出すと、いきなり月給がボンってあがる可能性があるから、みんな新しい事をやるインセンティブ、チャレンジしようって気持ちになる。
一方でゼロイチが苦手な人は、ある所のスペシャリストとして、いろんな事業でコミットポイントを満遍なく貰うっていう生存戦略も在り得る。そうすると、この分野が出来るからフリーランスでやっていきますって事も出来る。Vino Hayashiの仕事を少なくして、社外での仕事を多くやっていくとか。そうやって、うちの中の仕事だけじゃなくて、外に向かってやっていって欲しいし、それが個人の生存戦略だと思う。良くも悪くも会社に頼らないようにしたいなって。外の生存競争、市場競争を、内に持ち込んでるっていう一面もある。

この制度を入れる事で、僕も精神的に楽になりました。茶番って言ったら怒られますけど、半年に一回の、お互い気持ちのよくない評価面談をするのって無駄だと思う。評価面談もやらないし、目標設定もしない。今年はそんなに仕事したくないって時はしなくていいよ、他のメンバーにまかせればいいよって言う事が出来る。

これは、ネットに出ているような仕組みでもないし、コンサルが教えてくれた制度でもなくて、自分で考えて入れるしかないなって導入した。どうなっていくかわからないですけど、少なくとも僕は気持ちよく仕事できてるし、ストレスもなくなってる(笑)

ーー経営者の醍醐味って感じですね。

ようやくこのコロナ前から、初めて経営してるって感覚。これまではプレーヤーでしたけど、初めて新しい分野にチャレンジしてる感があって、楽しい。ただ、負荷はかかりますし、みんながみんな気持ちが良いわけではないですけど。

ーー経営の面白さの部分ですね。コンテンツは現場にまかせて、組織を設計する面白さ。メンバーにとっては大変な部分もありそうですが。

エグいんですよ。やるんだったら創業の時から導入しないと難しい。こういう評価制度に魅力を感じて入社するって人、モチベーションがあがる人はいると思うんですよ。でも、途中から人事制度をガラッと変えるというのは、凄く難しいと思うんですよね。普通は拒絶反応で退職者が続出する、みたいになると思います。

ーーそれがコロナでかえられた

そうなんですよ。最近「ジョブ型」ってよく聞きますよね。僕は管理するのも嫌いだし、管理されるのも嫌い。それがリモートワークになると、そもそも管理ができない。その人の画面監視するのも馬鹿らしいし、頑張ってるかどうかもわからない。そうなるとアウトプットしか見れないでしょ。ジョブ型にするしかないじゃないって説得力が増したんですよね。

ーー楽しみですね、今後の成果が

この変更は一回しかできないって思ってて。評価制度変更して、給料を下げる事はできない。反発する人がでてくるから、上げるしかない。だから何度も出来ない。コロナになって、to Bが激減したんですけど、to Cが伸びてそれなりにカバーできたので、それが支えになったのと、行政の支援もあって凄くお金が借りやすくなってるんですよね、金利がめちゃくちゃ低くて。これで3年はイケると。3年で体質が変わればイケる。3年猶予をもらった感じです。

コロナでない普通の時ににやったら、絶対に大きな反対がある。銀行からも数字おかしくない?って言われちゃう。それがこういう有事だから、思い切ったチャレンジが出来たっていうのはありますね。年功序列とか、歪って色々あるじゃないですか。ダメになってるのが明らかで、それを変えるためには、制度を仕組みを変えていかないと、歪を抱えたまま続ける事になっちゃう。頑張ろうって掛け声だけじゃ、どんだけかけても意味ないですよね。

ーーおもしろいですね。経営

会社面白いですよ。やっと面白いチャレンジができるようになってきましたね。

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イタリアパスタ定期便『パスタ大好き』  Instagram@vinohayashi

インタビュアー後記

僕はサラリーマンだし、親もサラリーマンなので、サラリーマンが当たり前で、そのせいなのか、気づかないうちにサラリーマン的な考え方をしてたなって気づかされました。
組織や評価制度は会社が準備・整備してくれるもので、その中で自分の専門性を磨き会社に提供し、その対価としてお金をもらって。で、会社の業績が悪くなったりして給料が下がったりすると、会社のせいや、今だったらコロナのせいとか、国のせいにしちゃったり。
特定の誰かでなく、目に見えない組織のせいにするのは、自分も他人も傷付けないので、ストレスコントロールのテクニックぐらいに思っていたのですが、あーこれがサラリーマン的思考かって思いました。経営者や経営者視点があれば、それは組織のせいでなく、その組織をつくった自分のせいだし、変えようと思ったら変えられる。これが経営の面白さなのかと、凄く刺激になりました。
自ら起業・経営してみようとは、それ以外の色々面倒そうな事が目に入ってきて、とても思えないのだけど、経営者視点、何を変えたら組織は良くなるのか、みたいな視点・考え方は、サラリーマン的にも凄く良かったなって思って、今回のお話を聞いてから、仕事や組織に対して前向きになれてる。でもストレスも増えてきて、それはまだエネルギーに変えられてるから良いのだけど、経営者スゴイ

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