毒づきドクコのエンターショー9
『もういい!あたしのことなんて理解できないんでしょ!!』
泣きながら去っていく女の子。
そうこれは過去のリコ。
グレーのドアを選んだリコたちは
いきなり泣きながら走っていく25歳のリコを見た。
グレーのドア。
それはリコが一番しんどい過去だった……
『ドクコさん、私、帰りたい……』
リコが塞ぎ込んでしまった。
『さっきまでの勢いはどこにいったのよ!生まれ変わるんじゃなかったの?』
前向きな顔をしてたリコは薄暗い表情に変わってた。
この世界はリコがもっとも長く付き合った彼氏との思い出のドアだった。
『初めはすごく楽しかった。でも時間が過ぎるにつれて、自分を押し殺し、自分らしさを忘れてしまった嫌な過去だから……』
『だから?』
『だから、帰りたい……』
『はぁ?何言ってんの?またそうやって逃げるの?向き合わずにただ逃げるわけ?』
『ち、ちがう!!まだ心の準備ができてなくて……』リコはうつむく。
『心の準備?それはいつできるの?いつから言ってんのよ、その言葉。』
『ドクコさんにはわからない!!あたしのこの気持ちなんて!!
堂々として悩みなんかなさそうなあなたにあたしの何がわかるのよ!!』
リコは叫んだ、心のままにドクコに。
『あっはっはー!私が堂々⁉️たしかに今のあたしは堂々としてるわね』と高笑いしながらリコを見た。
『でもね、リコ、よく聞きなさい。みんな見た目がキラキラしていたとしても心の中に何を秘めてるかなんてわからないよ。こう見えて私も過去はひどかったのよ』
『嘘だ!そんな訳がない!!』リコは疑った目でドクコ睨んだ。
『本当、信じない子ね(笑)本当よ!今の私になるまでにどんなことがあったのかそろそろ語る時がきたようね』
ドクコは近くにあるベンチにリコを座らせた。
『さぁ〜てと!始めるわよ!ドクコのエンターショースタート!』
クタクタのトランクが開き、中から白い鳩が飛び出し、サーカスのようなイリュージョン空間がリコの前に飛び出した。
リコは目をまんまるにしながらがドクコを見つめた。
小さなピエロたちがドクコを囲み、足を上げて踊りだす。バレリーナのように列を作り、クルクルと回り始め、音に合わせて踊り続ける。
ドクコにスポットライトがあたり、まるでミュージカルのように歌い出す。
『ルッタタタタ〜♪ルラ〜♪ラララララ〜♪あなたの瞳はなんて悲しい色をしているの〜♪いつの間にそんな色を持つようになったの〜♪昔のあなたはもっと輝いたキレイなピンクで輝きを心に持っていた♪今のあなたは何に怯えているの、子供の時のように欲しいものに手を伸ばして〜♪』
『リコ!わたしは昔、ロクでもない男たちに騙され続けたのよ。
傲慢な男、自分勝手な男、
浮気されたりもしたわ。
そのたびに傷つき、泣き、この世から消えようとも思った。』
『え?ドクコさんが?』
『そうよ。何をやってもうまくいかないし、悩みすぎて肌もぼろぼろで外にもでなくなって、ただ毎日を小さな息をするように生きてたの。
誰も信用できないし、友人さえも私を惨めな目でしか見ていないと思い込んで友人たちでさえも会わなくなったわ。でもそのまま塞ぎ込んでいても何も変わらなかった。』
『で、ドクコさんはどうしたの?』
『それはねー♫おいで、リコ!!』と
ドクコは叫び、リコをショーの中に連れ込んだ。
ここからまた新しいエンタショーが始まる。
つづく。
第一話はこちら↓
https://note.com/akinbo_4141/n/n33eee70e1102
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