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家族の肖像 - 制作過程 -

実は似顔絵を描くのが苦手(だと思い込んでいたの)で、今までイラストの依頼で似顔絵を頼まれると即断っていた。理由は単純で、自分の描くイラストは、個性に合わせて描き分けるには、シンプル過ぎると思っていたのである。試しもせずに。

しかしこの度、日本の友人から家族のイラストの依頼を受けた。数多いるイラストレーターの中から、わざわざ自分を選んでくれたとあっては、引き受ける以外の選択肢がないし、同じようにシンプルな絵柄でも、個性を上手く出して似顔絵にしている絵を丁度見かけた所だった。あれ?もしかして、似顔絵って食わず嫌いしていたけど、描こうと思えば描けるかも?と、試してみたい気持ちもあり、渡りに船とばかり、仕事として有難く引き受けた。

友人一家の趣味は登山で、山を背景にした家族のイラスト、というのが唯一の要望だった。イラストの参考にと写真を頼むと、家族の様子が分かるものと一緒に、青々とした山と、山肌に沿うようにして咲く花の写真も送られて来た。余りにも見事で、そういえば彼は写真が趣味でもあったなと思い出す。この鮮やかなピンク色の花はミヤマキリシマと言って、大分に住んでいた時に、何度か名前を聞いたけれど、実物は未だに目にしていない。ぜひこの花のイメージはイラストに入れ込みたい。全体の色合いをどのようにしたら、この鮮やかなピンクが上手く入るだろうか。私はいつも、色数を絞り込むのが好きなので、この段階で既に、頭の中ではぼんやりと色の組み合わせを探し始めていた。

家族が揃う写真からは幸せな雰囲気が溢れていて、あまり考えなくても、どんな構図で皆を入れるかということは自然に浮かんで来たけれど、このイラストの完成よりも後に来るメンバーが一人居るとのことなので、その子が大きくなった時に寂しい思いをしないよう、存在をしっかり中に入れ込んでおくことにする。こういうファンタジーが可能なのが、イラストの良い所であるし、有効に活用したい部分だと思う。

イラストを描く時はいつも、何かしら新しい試みをするのが、自分なりの決まりのようになっている。今回でいえば似顔絵にすること。そしてもう一つのアイデア、縁起のいい模様を入れ込むこと。
日本古来の伝統的な模様の中から、青海波(せいがいは)という模様を選んだ。穏やかな波が絶え間なく連なるイメージから、いつまでも平安な暮らしが続くようにという意味があるとのこと。今回のイラストにぴったりだ。

ラフ案を出してOKをもらい、仕上げに入る。色合いについては最後まで悩んだ。それでも完成したイラストはとても喜んでもらえたし、自分でも満足の行くものになったので良しとする。
ちなみに締め切りは今回、約2週間見てもらい、ラフ提出までが1週間、仕上げは作業時間が上手く取れずギリギリのタイミングになってしまったが、なんとか間に合った。締め切りを破らないこと、これも自分の中で必ず守っていることである。

さて、そのようにして出来たイラスト、Webサイトに載せておいたので、よかったら是非、見てみてください。家族の肖像、あなたも一枚いかがでしょうか?


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