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FC物語(6)立ち上げから数年経って考えたこと


1年後(2012)のフューチャーセンターの姿

2011年9月に始まった国保ゼミの定期フューチャーセンターは、2012年9月で1周年を迎え、ささやかなパーティを行いました。1年経った現在、国保ゼミのフューチャーセンターがどのような存在として整理されているかについては、大崎さんをはじめとする国保ゼミ3期生が書いた文章が非常に的確なので、それを引用して紹介します。

--------------(引用開始)--------------

国保ゼミフューチャーセンターとは:
『未来への提案を継続的に生み出す場の創出、「提案ができる人」の人材育成』を理念に、その手段として静岡の学生・企業・地域の社会人が共に学び成長するための対話の場である「フューチャーセンター」を国保研究室として開催している。学生と社会人という多様なバックグラウンド、多世代の人材が入りまじり、同じ目線でかつ楽しそうに対話をしつつ学んでいる光景が、静岡や日本に広がることをイメージしている。

国保ゼミフューチャーセンターの機能:
機能その①:社会と大学の境目を緩やかにし、社会人と学生が共に学ぶ場

重なる場がKOKULABO

人材の教育は、主に教育機関と企業(人事部)が担っている。特に社会人としての教育は企業が自社内で行ってきた。しかし不景気や指導側の人材不足で昨今は人材教育コスト、特に経験のない新卒人材の教育コストの負担が苦しくなっている。大学では、人材育成に必要な資源を民間の研修機関よりも安価で提供することができる。そこでこれらを別々に行うのではなく、両者が一緒に行うことでwin-winの関係を築くことができると考えた。

そもそも文部科学省によると、大学の役割とは「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を発展させることを目的」であり、なかでも公立大学は、「地域における高等教育機会の提供と、地域社会での知的・文化的拠点として中心的役割を担ってきており、今後とも、それぞれの地域における社会・経済・文化への貢献が期待されている」 とのことから、本来目的の範疇である。しかし現在、一般的には社会と大学は乖離していると言われており、その現象によって以下のような問題が引き起こされている。

大学での学びが実際の社会の中でどう活きるかイメージできない
   →学習意欲の低下
社会人と大学生との接点が少ない
   →なりたい自分像(ロールモデル)がうまく描けない
   →社会・社会人に対する過剰な恐怖心が生まれる

国保ゼミのフューチャーセンターは、この問題を解決する場としても有効である。また、国保ゼミのフューチャーセンターでは、双方向性や相互作用といった要素を重視しており、誰かが講師を務めるわけではなく、ただ議論の進行を手助けするファシリテーターがいるだけである。社会の問題や人材に必要な能力は多様かつハイレベルになりつつあるため、過去の知識を教えるだけの講師ではなく、当事者たちが自分の力で答えを見つけ出すスタイルの学習方法がより効果的であると考えられる。

課題解決スタイルの変化

また、大学は地域産業の人材供給源でもある。経済産業省では、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、2006年から「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成される「社会人基礎力」を提唱しており、「基礎学力」「専門知識」に加えて、それらをうまく活用していくための「社会人基礎力」を意識的に育成していくことが今まで以上に重要であるとしている。

学生たちはフューチャーセンターで実社会での問題や意思決定の場面に接したり、自らのプロジェクトを実施したりすることで、大学の授業だけでは学べないこれらの力を培うことができる。「学生は、高校までは正解のある課題を与えられて、ゴールにどうやって到達するのか教えてもらえる環境にいるが、社会に出れば、ゴールに到達する方法はもちろん、ゴールそのものも自ら考えなければいけない。半分は大学、もう半分は社会という国保ゼミのフューチャーセンターでは、そのためのトレーニングをすることができる。まずは一歩を踏み出すためのセーフティゾーンがフューチャーセンターで、そこで慣れたらさらに外へ出て行けばいい」とは国保先生の談である。

機能その②:継続的な未来への提案とアクションを生み出す場

未来への提案を生み出す場

フューチャーセンターとは…多様な視点から、問題を解決するためにポジティブな対話をする場である。国保ゼミのフューチャーセンターは、知識を得るだけでなく、知識の使い方を学ぶ場である。培った知識を活かして、実際により良い未来を創るために行動することで知識をより深めることができる。 

--------------(引用終)--------------

8年後(2019年)の挑戦:Good Design賞

フューチャーセンターを始めて8年目、既にある程度の実績ができたので、第三者による評価を得たいと考えていたところ、東北芸術工科大学コミュニティデザイン学科がGood Design賞を受賞したことを知ります。教育が受賞対象になるということ、東北芸術工科大学の友人へのヒアリングから学んだことを元に、これは当研究室のフューチャーセンターも行けそうだと思い、応募することに。このときも印刷物の発注などの裏方作業は私がやりましたが、応募書類づくりや審査プレゼンの立ち会いなどはゼミ生に担当してもらいました。

応募書類用に添えた風景写真(2019/6/20)
イメージ写真(2019/6/20)
終了後の振り返りミーティング(2019/6/20)

動画も作った!


東京での審査プレゼンも学生だけで行きました(2019/08/05)
審査のための展示風景(2019/08/05)

結果、無事Good Design賞を受賞しましたが、嬉しかったのは審査コメント。フューチャーセンターというものを知っている人だからこそ、私たちのユニークさに気付いていただけたと思っています。

フューチャーセンターと呼ばれる活動は数あるが、本取り組みは学生たちの自治的な取り組みになっていること、地域に価値ある取り組みが生まれていること等、いくつかの視点で既存のものとは違う展開になっている。運営者の学生さんのプレゼンテーションには大人顔負けのものがあり、そこに込められていた熱量が特に印象に残っている。そんな断片からも本センターが生み出している教育的な価値が感じられた。

Good Design賞審査委員の評価コメントより

大学のウェブサイトにも載せてもらいました。

目次
(1)立ち上げたきっかけ
(2)立ち上げ前にやったこと
(3)立ち上げ初期に大変だったこと 
(4)実践を通じて分かったこと
(5)場の構成要素
(6)数年後に考えたこと
(7)プロジェクトの具体例   ←次はこれ
(8)コロナ後の大学生の状況


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