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フィンランドで出会った女の子 シリ

フィンランドで出会う人々は、個性豊かに感じます。日本人視点からは、大人の女性も、どこか女の子系のように思えます。既婚女性は仏語でマダム、英語でミセスですが、フィンランド語ではRouva。カタカナを振るとロウヴァですが、これはめったに聞き(け)ません。しかし私は、たまにお店で言われてます。( ;∀;) 最近文化に英語の影響が表れているようなので、丁寧な意味をこめてロウヴァなのでしょうが、日本人にはどうしたって老婆と脳内変換されやすいもんです。

マドモワゼルやミスにあたる未婚者はneitiネイティですが、こちらも聞いたことがありません。むしろ、小さい女の子に「お嬢ちゃん」と言う感じのようです。なお「スオミ・ネイト」と言う言葉があるので調べたら「ミス・フィンランド」でした。

フィンランドは母国とは言わず「父なる国」と言います。地図上の形は、「腕の先とスカートの端っこが隣国に取られてしまった、スカートをはいた女の子」の形をしているのがスオミことフィンランドです。

そんな厳しい目にあっても、堂々としている女の子、それが私の中のスオミネイティ像です。

フィンランドには10年前からライヴのため旅行しています。ライブの機会を通して、様々な人に出会ってきました。本当に、みな、さまざま。「フィンランド人はシャイ」と言われるようでなのですが、全員そうとは限らない。学校に通うために私がフィンランドに住み始めて間もなく、そのパターンを壊してくれた女性、いや、女の子?が一人、いや、ふたりいます。

声をかけてきたフィンランド人

フィンランドに住み始めた最初の年、住んでいた学生アパートのインターネットがなぜか使えず、私はパソコンを持って移動し、学校の後は、無料電波を求めてさ迷う毎日でした。ある日人、がいないカフェでパソコンでカタカタ宿題をしていると、あとから入ってきた女性が近くに座り、私に声をかけてきたのです。

( ゚Д゚) へ?

フィンランドへ来て間もなくの事。よし言葉の練習だ、と会話を始めました。互いに自己紹介をした後、彼女はプロジェクトに私を誘ってくれました。パウリーナ・テルヴォとの交流の始まりでした。それ以降、いくつかのプロジェクトに私もお邪魔し、無料飯(!)を頂くこともありました。彼女を通じて、学外でのフィンランド語でのコミュニケーションがゆっくりと変化していきました。

「シリ・マーの秘密」

パウリーナがある日、シリと言う女の子を紹介してくれました。12歳のシリは、周囲とは「ちょっと違う」女子。周囲と違うという自覚があり、自分でも困っているし、友達もできず、親との関係も、そのせいでぎくしゃくしています。

そんなシリがどんなふうに周囲と距離をとるかを学び、また、相手にも付き合い方を知ってもらうことになったかを、パウリーナは小説に書きました。シリはパウリーナの頭の中にいる女の子。そしてパウリーナ自身の投影でもあるそうです。

私はその「シリ・マーの秘密」の日本語訳を引き受けました。自閉症かもしれない、というシリに、なぜかしら共感することが、たびたびあったからです。記憶の中で中学生の私がよみがえり反応し、シリの喜びも苦悩も怒りも、自分自身の過去と重なって目の前をよぎっていくのです。

暮らしに慣れてくると、新聞やニュースで取り上げられることが、目に耳にはいりやすくなります。すると、生きた現実がだんだん見えてきます。日本へ届くフィンランドの学校像は理想郷かもしれませんが、実際に生きている子供たちにはまた違った現実があります。

フィンランドにも、シリのように苦しみを心にかかえて生きている子供たちがいるのです。

「シリマーの秘密」は、シリが、自分自身や周囲とぶつかり、時間をかけてどのように乗り越えてきたかを描いた作品です。フィンランドではまだ出版されていませんので、ここからの日本語での発表が先行するということになります。

シリ・マーの「マ―」とは、本来はフィンランド語で「国」と言う意味です。世界と訳すこともできますが、私にとっては、もっと強い、シリが「支配する国」だと思っています。響きが気に入ったので「シリマー」あるいは、シリ・マーと書いていくことにします。

6月19日

シリと言う名前は「へい、シリ!」と呼び掛けると話してくれるというシステムのシリと、同じ名前です。実際にはフィンランドではSiiri(シーリ)、スエーデンにおいてSiriと言う名前があります。ヨーロッパの多くの国には、365日、毎日に名前カレンダー「名前の日」があります。おめでとう!と祝う国もあちこちにあります。シリまたはシーリの名前の日は6月19日。6月19日は、私が初めて日本の外での人生を歩みだした日なのです。それを知って、訳したことに意味はあったのだ、と思いました。フィンランドでもまた、シリと新たな人生を歩みたいと思います。(6月19日に始めたらもっとかっこ良かったかもしれませんが)

「シリマーの秘密」は週末あたりに少しずつアップする予定です。

追加 シリは12歳。シリの考えの深さから、私の頭の中で勝手に中学生になってしまっていました。もしかしたら小学生かもしれません。若者にも読んでもらえたら幸いです。

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