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東京にはない「地元店」がある横須賀が好き。だけど今度「さいか屋」が閉店するらしい。/ヨソモノ、ヨコスカ。#03

東京から横須賀に移ってきたとき、「いい、すごくいい!」と思ったこと。それはチェーン店じゃない地元店がたくさんあるところです。

街の「金太郎アメ化」に物申す

いま、何がつまらないって、どこの駅に降りても金太郎アメみたいに(死語かも)似たような店がずらずら~っと並んでるのがつまらない。駅前にはスタバとマック。駅ビルにはユニクロ、無印、ABCマート。彼らは悪じゃないし、便利だからいいんですけど、どこにもある店ばかりになっては、街の雰囲気っていうものが消えてしまう。

やっぱりね、雰囲気のない街を愛せ、って言われても難しいんです。どこも金太郎アメならば、利便性や家賃みたいなスペックで比較するしかないですし。そういう意味では、この街にしかない風景がある、とか、この街にしかない店がある、とかって思いのほか大切なことで、高円寺とか戸越銀座とか、門前仲町とかもそうだけど、活気のある商店街がある街がいまだに人気なのはそういうとこなのかな、と思ったり。

東京から友人が遊びに来てくれて、何度か飲みに行ってるんですが、横須賀中央の駅前とかすごく喜んでくれる。というのはきっと、多少の金太郎アメ感はやむなしとしつつも、横須賀らしさがちゃんと残ってるから。

街の歩みや文化を感じられるってステキなこと

たとえば横須賀中央駅の周辺って、午前中からお酒を飲める店がたくさんあるんです。

駅を出てすぐの通りにも、朝から開いてる酒場がポロポロ。そういうの「不道徳!」みたいに隠すべきもの、と考える人もいるのかもしれませんが、港湾事業で栄えた街として、夜通し働いたあと朝飲みに来る労働者がいた文化の名残りなのかな?とか考えると、すごく横須賀らしいし、ぜひ大切にしていってほしい。

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手前に見える『亀松』さんに至っては24時間営業。一度だけ行きましたが、カウンターにいるハスキーボイスのお母さんがいい味出してました。

この通りの奥にある、朝10時開店の『中央酒場』さんも、まさに酒場!って感じで雰囲気いいんです。

汐入に向かって歩いて行くと路肩には「ドルが使える街!」とか書いてあり。別にドル、使わないんですけど異国情緒があって楽しいです。

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メインストリートに沿って、いくつもTATTOOスタジオがある、というのもいい。TATTOO=悪!みたいな風潮もありますが、こういうものが昔ながらの洋品店やスーパーと溶けこんでいるところに「米軍基地がある街」という横須賀ならではのムードを感じさせてくれます。

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こういう文化を「朝から飲むのを助長するようでいかがなものか」「米軍基地という存在はどうなのか」みたいな論点で、触らぬ神にたたりなし的に排除しちゃう選択もあったと思います。

でも、問題点があるからダメ、嫌がる人がいるからダメ、じゃなくて、互いに共存しながら在り方を一緒に考えていくって、すごく今の時代に大切な姿勢である気がする! そんなことを熱く横須賀が地元の友人に話したら「きっと、そこまで深く考えてないよ!」って言われました……そうなの!? どうなんですか、 横須賀市さん!

横須賀発祥の百貨店『さいか屋』

ちょっと横道に逸れましたが、街歩きしていて印象的だったことがもうひとつ。それは「へえ、横須賀ってちゃんと百貨店があるんだな」っていうことでした。

横須賀の百貨店は『さいか屋』。初めて聞く名前だったので検索してみたところ、あの時代小説とかに出てくる戦国時代・最強の鉄砲隊「雑賀衆(さいかしゅう)」の末裔が開いた店、と書いてあり「すごい!」とかなりテンションアップしました。

さいか屋の前身は、雑賀(さいか)衆の末裔(まつえい)とされる岡本傅兵衛が1872(明治5)年、横須賀・磯崎(現在の本町)に「雑賀呉服店」を開業したのが始まり(『さいか屋小史』)。1928年に「雑賀百貨店」となり、翌年「さいか屋」の商号に改称された。横須賀店は発祥の地でもあり、創業以来148年を迎える。  

横須賀経済新聞より引用

今の10~20代は百貨店に対して「へえ」とか思わないかもしれないんですが、私は「街に百貨店がある」=誇らしいことだった時代を、子どもの頃になんとなく味わっている世代。

東京や大阪みたいな都会だと、ターミナル駅ごとに百貨店が乱立してるので、そういう誇らしさは少ないのかもしれませんが、北海道の地方都市生まれの私にとっては、100万都市である札幌をのぞけば、百貨店はごく限られた街にしかない存在。それが我が地元にあるのは「活気のある街だぞ!」という感じのする喜ばしいことでした。

子どもの頃の休日、家族で百貨店に買い物に出かけたり、最上階にあるレストランで食事をしたりとかっていうのは、やっぱり特別な「ハレの日」感があったんです。

神奈川県と言えば不動の横浜があり、人気急上昇の川崎があり、という感じですが、横須賀も街に百貨店を持つ規模の消費マーケットがあり、それを維持しているんだ、という意味で「へえ」と思った。のですが。

残念なことに、ゴールデンウィークも終わりにさしかかった先日、『さいか屋横須賀店』閉店、のニュースを見ることに。

横須賀中央駅と汐入駅、どちらからも徒歩圏内の一等地にある大きな建物ですが、2021年の2月をメドに閉店することを発表したとのこと。

ブルータス、お前もか。
いや、別に『さいか屋』は何も裏切ってないけど、完全にデジャブです。

地方生まれの心にある「弱りゆく」地元の記憶

私の地元にあった百貨店も、残念ながら今はもうありません。『さいか屋』同様、駅前の一等地にありましたが、2016年に閉店。しかもずっと次の用途も決まらず4年を経過し、地元の友人から「最近ようやく解体が始まった」と聞きました。跡地の一部はホテルに、もう一部はドラッグストアを主体とした商業ビルになるそうです。

ドラッグストア、大好きです。よく使います。でも、百貨店だったところがドラッグストア系ビルになるのは、なんかツラい。ドラッグストアに罪はないのですが、それが「弱りゆく地元」の象徴みたいでリアルだった。

そんな記憶があったもので、ちゃんと地元の百貨店に足を運んでおきたいな、と何度か『さいか屋』には行ったんです。

回転ドアがあるエントランスを抜けると、エスカレーターの手前にはイベントスペース。小さい頃の記憶にある昭和の雰囲気が残っていて、なんだか懐かしかった。でもやっぱり、というか、館内には人が少なく、かなり寂しげなムード。

そのときは旅行用のバッグを買って帰ってきたんですが、接客も丁寧で、品物も造りが良く「うん、百貨店だな」というクオリティ。一方、品揃えがどうしてもご年配者向けの雰囲気なので、もっと買いたくても買うものがあまりないもどかしさもありました。

でもねえ。地元ではないヤツが突然引越してきて、ひょっと覗いてそんなこと言われてもねえ、とも思うし。

そもそも横須賀は、人口の約30%が65歳以上(※平成27年国勢調査より)という高齢化の街です。そして、想像以上に市の面積が大きい(無双・横浜の大きさと、リニア・相模原の大きさもすごいけど)。

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※画像引用元 神奈川県

面積が広いぶん、市内には20以上の電車駅があるし、久里浜とか追浜とか、その駅周辺だけでも十分栄えている街も少なくありません。加えて、広いとクルマ率も高くなりますから、クルマ利用者ウェルカムの郊外型モールもたくさん。そうなると、子連れファミリーはクルマでモールに行き、セリアや無印でお買い物。『さいか屋』には百貨店に良い印象を持つ、ご年配のバスユーザーが集まりやすいでしょう。

ヤフコメに見た『さいか屋』の思い出たち

まあそんな理由は、百貨店という業態×市場の変化、経済の衰退をはじめ、もっともっと、いくらでもつけられます。そして、その目線の延長線上には「時代の変化だからしょうがない」という着地点が待っている。でもなんかすごくモヤモヤして、ついついヤフコメ(Yahoo!ニュースのコメント)を見ていました。

そしたらコメント1058件(2020.5.17現在)! 地方の百貨店、閉店のニュースにです。

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ヤフーニュースより引用

(ヤフコメらしく、ひどいコメントも散見しましたが)読んでるこちらもちょっとセンチな気持ちになる、古きよき時代への思い出を語っている人の多さが心に残りました。

金太郎アメな店は便利です。役に立ちます。助かってます。だけど、便利から、後で振り返りたくなるような思い出はどれだけ生まれてくるんだろうか。

たまに北海道の地元に帰り、友人とランチや食事をしようと駅前エリアに行くと、シャッターが下りたままの店が帰るたびに増えているのが目につきます。人が集まっているのはチェーン店ばかり。そもそも、歩いている人がそんなに多くありません。そして、だいたい定型文のように言われます。

「いま、人がいるのは郊外にある『イオン』ばっかりだよ」と。

イオンは悪じゃない。むしろコスパのいいものを多くの人に届けようとしてくれてるし、それで私たちはたくさん助かってる。でも、日本中の地方が「みんなイオン」じゃつまらなすぎる。

時代の荒波に揉まれながらも、がんばっている個人店がたくさんあるのは、ヨソモノ目線で見たら、ものすごい横須賀の魅力。コロナで大変だと思うのですが、私もできるだけ地元の店に買い物に行くし、今の時期は家の近くにある地元店に目が向きやすいタイミングでもあるはずなので、どうかどうか生き残ってほしい。そう願う思いの中には、遠く離れた場所にいて、何もすることができないまま、弱っていくのを遠くで見つめているふるさとへの気持ちもちょっぴり入っているのかもしれないけど。

地方は、小さい東京じゃなくていい。小さい東京に住むのなら、リアル東京に住めばいいだけだから。

飲み屋だけでなく、いい肉屋とか、いいパン屋とか、食材の宝庫・三浦半島らしい店もたくさんあるので、そういう店もおいおい紹介していきたいな。カレーやスカジャンはもちろんいいけど、もっともっと横須賀って魅力があるよ、って住んでみて感じてます。

そして『さいか屋』には、来年の閉店までにまた何度か足を運ぼう。横須賀市民の心に残る一時代を築いたリスペクトを込めて。

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木内アキ

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たいてい書いてるか、読んでるか。生まれは北海道。経験最低温度は-36℃。2018年秋、思い立って東京を離れて横須賀を拠点にしました。フリーライター。家族は夫と雑種犬。https://www.take-root.jp/