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開かせていただき光栄です他|皆川博子

「大変な奴を持ち込んだな」
解剖台の上で気楽な鼾をかいている男を、小刀で林檎の皮を剝きながらエドワード・ターナーは見下ろした。
左手で林檎を回すたびに、赤とクリーム色が裏表になった細長い皮が、よじれながらのび、チャーリーのバケツの中にとぐろを巻く。

チャーリーの受難
開かせていただき光栄です

エドワード・ターナー三部作完結。
ダイジェストで語る。

【開かせていただき光栄です】
愛すべきかわいいバートンズ。
愛すべきエド。
どうしても、去らなきゃいけないのかい?

【アルモニカ・ディアポリカ】
風で破れた美しい蜘蛛の巣の残骸のようなふたり。
エド、君はどこに行ってしまったんだ?

【インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー】
エド、君は、幸せだったかい?
エド、エド、愛しているよ。


最後のクラレンスの手紙は、なかなか読めなかった。
何度も本を閉じた。
終わってほしくなかった。
完結が悲しくて受け入れられない。
こんなにもこんなにも苦しいとは。
もうこの物語はここで終わりなのか。
どうしてもエドに会いたい。
エドの姿を探して、ネットを彷徨って、書下ろし短編が存在することを知る。
はやる気持ちを抑えながら、届いたミステリマガジンをそっとめくる。
いた!みんな!愛すべきバートンズ!

執念
あの頃のバートンズに会えるなんて

♪ ZはZanies(道化役者)、これにて退場 ♪