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ショートショート2 「僕の能力」

 僕は17歳の高校生。僕にはこれといった特徴がない。学業においては学校で真ん中より少し上くらい、趣味・特技はない、というのが本音だがもうしわけ程度に答えるように、音楽や映画の流行を追っているくらいだ。運動はサッカーを小学生の頃からやっており少し出来るくらい、けれど突出して上手いわけでもない。

顔もイケメンと言えるほど、整っていない。けれど、女の子にはモテたい歳だからにきびクリームを塗って、にきびを治すのに奮闘したり、朝早起きして、髪の毛をセットしてワックスを付けて登校している。

こんな普通の僕を紹介するなら「この人、普通の高校生です。」と言うほかない。


しかし、こんな僕にも特徴がある。それは”会話が苦手”ということだ。誇れる特徴ではないし、もしかしたら負の特徴かもしれない。どうにかして、この特徴を前向きに考えていきたいんだけど、これのせいで僕の人生は下り坂になっている気がするんだ。

「僕、わたし、会話が苦手なんだよね」という人はいると思うのだが、僕は彼、彼女らとは系統が違うかもしれない。というのも何か能力的なものを宿しているかもしれないんだ。

こんな状況の時に能力が発揮される。

友達と会話をしている時、少し間が空くことがある。その間の後、どちらかが話題を振ると思うのだけれど、その際に被ってしまうのだ。
「あのさ~。。。」
「最近さぁ~。。。」

『あっ、ごめん』と二人の小謝罪が虚しく車の音にかき消される。という状況が何度も、何度も、何度も、何度も、、、はぁ。

相手は悪くないのだ。僕が2人で話している時、大体誰とでもこうなる。そして、じんわり僕の周りから友達が遠ざかっていている気がする。

ゲームの世界で僕を操っている、意地悪なプレイヤーがいるのではないのか?という馬鹿げた推測をしてしまう。
けれど、もしそうだとしたら、頼むからあの場面になった時、作戦から「ここで待機」を選んでくれ。


 こんな会話が苦手な普通の高校生でも、3日前に彼女ができたのだ。僕から告白して成功した。好きになってから半年間こじらせてしまったが、思い切って告白して本当に良かった。

彼女のためにも、どうにかして、この能力を忘れたい。無くしたい。

それは、無理だとしても、彼女は理解してくれるかな?不快に思わないだろうか。

色んな不安を抱いてもしょうがない。自分に自信を付けて、上を向いて歩こう。次の日曜はデートの日だ。大丈夫だ。

きたる日曜日。遅刻をしないように朝6時に起きた。服装も髪の毛も口臭も大丈夫だ。よし、行こう。

~13:00 渋谷 ハチ公前にて~

渋谷駅に着き、階段を上り、ハチ公の周りを見回す。

彼女を見つけた。

僕は気合を入れて、歩き出した。



「葉月ちゃん、お待たせ。」
「お、久しぶり~葉月ぃ!」



『えっ』

二人の小驚嘆は、渋谷の若者の会話にかき消されていった。

                               

                               ~了~


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