橘玲 『働き方2.0 VS 4.0』

★★★★☆

 橘玲氏の本ばかり紹介しているような気がしますね。贔屓の引き倒しにならなければよいのですが。
 今年の4月に出版された本書では、「働き方」というテーマを軸にして、日本社会の特異性や世界の潮流についての話が展開されています。

 ところで、「働き方2.0とか4.0って何?」と思われる方も多いでしょう。本書では以下のように定義されています。

 働き方1.0:年功序列・終身雇用の日本的雇用慣行
 働き方2.0:成果主義に基づいたグローバルスタンダード
 働き方3.0:プロジェクト単位でスペシャリストが離合集散するシリコンバレー型
 働き方4.0:フリーエージェント(ギグエコノミー)
 働き方5.0:機械がすべての仕事を行なうユートピア/ディストピア

 日本では1.0から2.0への移行が叫ばれて久しいですが、世界ではもう4.0まで行ってるのに、まだそんなところにいるの?といったところが本書の大まかな主張だと思います。

 一昨日こんな記事が出ていましたが、本書を読むと、さもありなんといった感じですよね。
・日本は出世意欲が最低、断トツで自己研鑽していない国に【アジア太平洋14か国調査】https://moneyzine.jp/article/detail/216365
 もはやアジアの中ですら価値が低下しているわけです。

 元サッカー日本代表監督の岡田武史氏が、日本人はfunctionalなものとemotionalなものの区別ができない、といったことを述べていました。的を射ていると思います。日本人のそういった性質と日本の雇用環境には何らかの関係があると思います。

 論理=機能よりも情緒=感情を優先させるのは、身近な人間関係レベルではよい面もあるでしょうが、社会全体を考えるとわりと致命的です。日本社会があらゆる場面で機能不全を起こしている昨今の状況を鑑みると、日本人の宿痾ともいうべきこのあり方をどうするかが大きな問題なわけです。
(残念ながら、どうにもならない気がしますけど……)

 ここまで本書の内容にあまり触れていないように見えるかもしれません。けれども、実はこういった内容が大きく関係しています。読んでいただければわかると思います。
 ガラパゴス化した島国のあり方に辟易している人がこの国で生き抜いていくための指南書となる一冊です。

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