ベン・ファウンテン 『ビリー・リンの永遠の一日』

★★★☆☆

 イラク戦争における戦闘で一躍英雄となった一時帰還兵たちが、スーパーボウルのゲストとして駆り出され、戦意高揚に利用される様子を描いた小説。

 個人的な読みどころはなんといってもアメリカ的なものの描かれた方です。読んでいて、「ああ、アメリカってこうなんだろうな」とか、「まさにアメリカ人って感じだな」と、しみじみと感じ入りました。

 私は映画やドラマというものをほとんど観ないので(昔は観ていた)、アメリカのイメージが典型的なところから抜け出ていないのだけれど、この小説内のアメリカは定形的なアメリカ像と見事なまでに合致してました。「U.S.A! U.S.A.!」というシュプレヒコールが頭の中で鳴り止まなかったです。

 観念的な考察が随所に出てきて、そこで物語の進展が妨げられる節はあるけれど(とはいえ、そこも読み応えがある)、話の展開を楽しむ小説でもないので、特に問題はないと思います。

 青春小説でもあり、反戦小説でもあり、風刺小説でもある多義的な小説。掛け値なしに面白いとはいえないけれど、読んで損はないでしょう。

 日本では公開されていないが、アメリカでは映画化されていて、You Tubeで予告編が観られます。とても感動的(もっとも、大半の予告編って魅力的なのでアテにはならなそうだけれど)。もしかすると、小説よりも映画の方がよい出来かもしれないです。

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