【経営者インタビュー・前編】一般社団法人Ayumi 代表理事 山口広登さん
一般社団法人Ayumi代表理事の山口さんにお話をお伺いしました。
山口さんは車椅子ユーザーの従兄弟との実体験を元に、「誰もやらないなら俺がやる!」と、バリアフリーに特化した情報メディア・認証サービスを作っている経営者です。
IGNITIONも「アスリートの引退後のキャリア」と、とてもニッチな文脈で起業したということで、急速に距離が縮まり協業をさせていただいております。
まだ29歳の経営者、すごい熱量を皆さんにも浴びてもらいたいと思い、記事を作成しました。
従兄弟の「慣れてるから大丈夫」。これを解決しないといけない
--本日はよろしくお願いします。最初に自己紹介をお願いできますか?
山口広登さん(以下、山口)
一般社団法人Ayumiで代表理事を務めています山口広登(やまぐちひろと)申します。
私たちは「ふらっと。〜バリアフリー情報サイト〜」の運営と、「バリアフリー認証事業」という2つの事業を運営しています。
身体障がい者の方々のアンケートでGoogle検索やyahoo!検索した際に調べたい情報が出てこないと回答した方が48%いまして、「ふらっと。〜バリアフリー情報サイト〜」は、そういった方々の課題を解決するためのサイトとして運営しています。
「バリアフリー認証」に関しては、身体障がい者の方々と一緒に作った85項目のチェックリストと26項目の審査項目を通じて、商業施設や店舗のバリアフリーの体制チェックと接客状況のチェックを通して、バリアフリー化の支援であったり、接客力向上、ブランディングなどトータルの支援をさせていただいてる事業となっています。
--ありがとうございます。山口さんがバリアフリーを事業にしようと思ったきっかけを教えていただけますか?
山口さん
私は前職で、飲食店や店舗のマーケティング支援をしていたんですが、前職の代表や役員の背中を見て、いつか自分も起業してみたいという漠然な想いがありました。
そんな中で2020年8月くらいですかね?従兄弟と熱海旅行に行こうっていう話になりまして。私の従兄弟が車椅用ユーザーなんですね。予約係が私だったんですけど、予約に至るまで8時間ぐらいかかったんですよ。なんて非効率なんだと思って。
車椅子ユーザーのための情報がなかったんですよ。「車椅子対応可」としか書いてなくて、電話してみたらホテルの入り口はバリアフリーだけど温泉入れないみたいな話ばっかりで。
やっと見つけたホテルに行きまして、入り口は確かにバリアフリーだったんですけど、着脱室だったり温泉の施設内が階段・段差だらけで。結局従兄弟が温泉に入れなかったんですよね。
その時に従兄弟が「慣れてるから大丈夫」って話をしたんですよ。この慣れてるから大丈夫って良くないって思いまして。選択肢が色々ある世の中なのに、車椅子ユーザーというだけで楽しみたいことが楽しめない。それが当たり前になってる、それが諦めの原因になってるってところがすごく違和感を感じまして、これを必ず解決しないといけないと思って。起業するならこの文脈でやろうと準備して今に至る、という感じですね。
当事者の深層心理が見えない。当事者意識を持つために4ヶ月車椅子生活を送る。
--そんなことがあったんですね。世の中にバリアフリーに特化した事業ってあまり聞いたことがないな、って思ったんですけど、起業準備する上で不安はありませんでしたか?
山口さん
ものすごく前途多難感がすごくて(笑)。
数100万投資して、とか、営業かけてすぐに受注できるサービスかっていうとそうではないし、そもそも車椅子ユーザーの方々が本当に解決したいと思ってるものなのか、深層心理がまだ見えてなかったんですね。
前職で「圧倒的当事者意識」というバリューがあったんですよね。いわゆる現場の声を聞けって話あって、今はまだ当事者の気持ちの解像度が低いと。40~50人ぐらいの車椅子ユーザーさんにアポイントを取って、お話を聞いたんですけど、それでも解像度が低くて。。
本当に当事者が解決したい課題なのか、それを解決することよって世の中が良くなっていくのか、そしてその課題が解決されることによる社会的インパクトってどれぐらい大きいのか、というのは起業当初は本当に解像度が低かったですね。
--40~50人アポイントすごいですね!それは何でアポイントを取ったんですか?
山口さん
SNSですね。人脈なかったのでTwitterとかで15分でも30分でもいいのでって伝えてアポイントを取りました。
--ちなみにどのくらいの数のDMを送ったんですか?
山口さん
多分100から150ぐらいですかね。反応率がめちゃめちゃ良くて。自分たちのために動いてくれてるから協力しよう、って人が有難いことに多くて。DMの内容に全部の気持ちを込めて書いたので、それが返信してくださった方が多かった理由だと思います。
DMに入れた内容が、事業者目線のバリアフリーと、当事者目線のバリアフリーに大きな乖離があると。このギャップを埋めるための事業を考えてますって話をして、このギャップを埋めることで当事者の選択肢が広がり、当事者に選ばれるお店になり、選ばれた事業者にお金が落ちるという座組みを考えています、という熱量と論理を自分なりに仮説立ててDMしました。
余談ですけど、もっと解像度を上げるために4ヶ月車椅子生活を送りました。そこで一気にバリアフリーという文脈の課題に対する解像度が一気に上がりましたね。
失敗から学び、「外出支援」のポジショニングを取る
--4ヶ月もすごい。。可能であれば「ふらっと。〜バリアフリー情報サイト〜」と、「バリアフリー認証事業」のキャッシュポイントについてお聞きしても良いですか?
山口さん
もちろんです。
バリアフリー情報サイトは、掲載PR費用と、優先的に上位表示されるスポンサー費用の2つのプランがあります。
ニッチなサービスの情報サイトの運営の難しさはすごく感じてますね。情報サイトって、利用者・事業者どっちから集めるんだっけ?って議論があって、利用者を集めても情報が少なかったらユーザーは離れてしまうし、ユーザーが少ないと事業者にお金を出してもらったとしても、費用対効果をお返しできないし、すごく考えましたね。
参考にしたのがAirbnb(エアビーアンドビー)なんですよね。Airbnbの創業期から売上1,000億くらいに至るまでのストーリーが書かれている本があるんですけど、それを何回も読みました。
Airbnbの創業期って自分たちの部屋を一室貸したところからスタートしてるんですよね。AirbnbはtoCから広げていったんですよ。 これだけの登録者数いますよ、ってtoBに展開したので、最初は利用者を集める=投資期間としてビジネスモデルを設計しました。情報サイトを運営し始めて2年半経つんですけど、toBからスタートしてたらもっと早めに事業を続けられなくなっていたかもしれないです。
--現状、日本の車椅子ユーザーさんの人数と、情報サイトのユーザーさんってどのくらいいらっしゃるんですか?
山口さん
身体障がい者という枠では436万人、車椅子ユーザーという枠だと200万人と言われてます。私たちの情報サイトの月間PV数が大体10万くらいで、セッション数は4万前後なので、4万人前後は見てくれるってお伝えしています。
--ユーザーの集客は何で行なってるんですか?
山口さん
基本的にはSEO対策とSNSですね。 特にInstagramを使ってます。バリアフリー情報サイトって写真が大切になってくるので、X(旧Twitter)よりもInstagramに力を入れてますね。あと、少し年齢層が高めなのでtiktokとかYouTubeよりはInstagramが相性が良いですね。
--なるほど、今戦略的にこのエリアの車椅子ユーザーさんと企業さんにアプローチしよう、という戦略は取ってるんですか?
山口さん
元々千葉県でエリア戦略を取ってましたけど、失敗しましたね。千葉を選んだ理由は、身体障がい者率と高齢者率が一都三県の中で1番高かったんです。ですが、そもそも外出をしてる人たちが少なくて。企業さんがPRしても外出しない人が多いので、提案が破綻するわけですね。需要の調査が難しかったですね。
今はエリア戦略ではなく、カテゴリー戦略を取ってます。他のバリアフリー情報サイトでも、制度系とか家の情報系など色々あるジャンルの中で、Ayumiはどこのポジショニングを取っていくべきなのかと考えた時に、外出のポジショニングを取ろうと。外出支援や外出先の飲食店ホテルの情報、外出をする上での移動手段の情報など、ここに特化していければ掲載企業が増えていくんじゃないかと思っています。
前半は会社のご紹介にはじまり、起業された背景、ビジネスモデルをお伺いしました。
ご自身が車椅子ユーザーではない中で、ここまでの熱量でアクションを起こしている山口さんには頭が上がりません。
後半は、幼少期のお話から見据える未来について、をお届けします!
よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!