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0310/私が死んだ夢のあと

今朝、私は死んだらしい。
窓掃除の機械を見学しようとしてホテルの40階からうっかり足を滑らせて落っこちたのだ、夫の目の前で。目が覚めると川の字の対岸で寝ているはずの夫が私の布団に潜り込んできていて、ぎゅうっと抱きしめられていた。「怖い夢をみた」とちいさな声で言う。
どうやら私は死んだらしい、夫の夢の中で。

ぐっしょりと汗をかいて目を覚ました夫は、娘と私が並んで寝ているのをみて安堵したらしい。今朝はずっとくっついて離れなかった。本当に怖かった、ふたりがいればそれだけでいい、お願いだから気をつけて、死なないで。そんな言葉をぽろぽろつぶやく。なんてこった愛されてる。

自分が死んで嬉しい、だなんて不謹慎すぎる感情が生まれる。私が死んでしまって、夫が心底悲しんでいて、それが嬉しい。嬉しいと同時に「これは絶対に死ねないな」と再確認する。私は、どんどんと死ねなくなっていく。

人が死ぬ夢はいい夢だ、とよく耳にするけれど。それでも夢の中で夫を悲しませてしまったので胸がキュッとする。

大切な人の、大切な人になって、大切な人が生まれた。なんていうかもうこれだけで、私は生まれてきてよかった。

そんなことを思って「生きよう」と誓う、私が死んだ朝。抱きしめられる私を見つめる娘は、足をバタバタさせて笑っていた。

#日記 #コラム #エッセイ #ちあきろく #夢 #育児 #子育て #夫婦

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