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れんあいしょーとショート

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恋は落ちるものとはヨクイッタものである。
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6月病

5月が終わって6月にはいると、
君は決まって憂鬱におそわれる。

そう決まっていつも、この時期に。
5月病ならぬ6月病。

憂鬱に襲われている君は
「たしかなことは○○ちゃんが好きなことだけだ」と言いながらまたすぐに布団に潜り込む。

わたしは「そうなの」とか「しってる」なんて言いながら、ぐしゃぐしゃになった頭を撫でる。今日も、類稀なる、芸術的寝癖。

憂鬱に襲われている君を
たまらなく愛おしく思

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おもいでと、やくそくと、ほご。

君が私のトコロを定期的に観に来ていることはうっかりつけてく閲覧履歴で知っていた。あんなサムネをつけるの君くらいだからそりゃバレる。それでも自分ばっかりちゃんと鍵垢で、ずるいなあ、と思いつつ、私は私の日常のことをあげていく。

しあわせですか?
しあわせですよ。

今日また足跡がついていた、鍵はない。
しあわせそうな新しい一家の主がそこにいて、温かな涙がふいに滲んできた。あゝ

しあわせそうで、何よ

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コリドー街の魔物。

弱った。「弱」という字をピンっと伸ばすと「羽」になることに気がつく。ああ、そうだ、こんな時だから、羽を、伸ばすのだ。

まさかこんなにあっさりと、あいつと別れることになるとは思いもしなかった。付き合って4年半、27歳、あいつは31歳。いよいよかと思っていた、私が甘かった。あっさり、乳も目も大きな女について行ってしまった。先方は29歳。勝利の味はさぞ大きいだろう。ただ、あいつきっとまた浮気するんだ。

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近距離

「ちょっとまって」を飲み込む。
縮まらない1メートル。祭りの音が、遥か遠くに感じる。
会場に着いたときには夜店は片付いてしまっていた。夜店って、もっと遅くまでやっていると思っていた。子供の頃の感覚と、カタチだけ大人になっている私との夜の距離が随分と近くなってしまっているからだろうか。
祭りの痕が私の目を奪っていく。辿ろうとすればするほど、うまくあるけない。ああ、間に合わなかった。もうあと30分仕事

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遠距離

「あいたい」とどれだけ言い合ったって
なかなかあえない距離だから安心していた。

だから私はおまじないのように「あいたい」と電話に向かって呟き、どこまでも切実そうに聞こえるあなたの「あいたい」を求めていた。その声に自分を探していた。

あいたいと言ってもいい人。
あいたいと言ってくれる人。

その存在に左耳がすがりついて、
いつの間にか眠っていた。

何時間も話せたのは何だったのだろう。
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