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大企業と中小企業の広報、ここが違う(1)取材対応編

大企業と中小無名企業の違い。
当然あることは予想がついても、大企業に長く勤めた人は、自分がやってきたことが世の中のスタンダードだと思いがちです。
私も、はじめての転職で2社目に入ったとき、毎日のように「え?なんで?」の連続でした。広報担当者の横のつながりもそれなりにあって、各社色んなカルチャーがあるのは知っていましたが、それでも聞く限り基本的なところは一緒、そういう認識でいました。
でも、現実は違いました。
本日から不定期連載で、私が学んだ「覚悟すべきこと」とその対策について書きます。
あくまでもひとつのケースですが、参考になれば幸いです。
第一回目は「取材対応編」です。


1.覚悟すべきこと:記事と広告を混同している人が多い


私が中小企業の広報担当者になって最初にびっくりしたのはこれでした。
取材慣れ、メディア露出慣れしていないからなので、仕方がないことでもあるのですが。

広告は、広告のスペースを買うことで自社が言いたいメッセージを、自社の好きなように表現できます。しかしメディアというフィルターを介しての広報活動による記事の場合、内容の決定権を持つのはあくまでもメディア側です。発信した内容でメディアが何をニュースだと感じたかによって、時にはこちらが意図しない内容がメインになることもあります。メディアの視点で書かれた記事だから自社の思い通りの表現にならないこともありますが、客観性があり、読者からの信頼度も高いのです。

というのは、この世界にいる人であれば常識なのですが、広報活動に慣れていない中小企業にこれを理解している人が少ないのが現状です。

「広報にお願いしたらタダで載せてくれるんでしょ」

なんて認識の方も。。。


理解している人が少ないがために苦労することとして取材対応を例に挙げてみます。

取材対応後、もしくは製品、サービス紹介の記事について、一般紙は原稿確認なしで進行しますが、一部経済誌を除く雑誌、Webや業界紙は原稿を確認させてくれることがあります。それでも事実確認の修正のみにとどめるのがルールというものです。
しかし、広告と記事を混同している人はこのルールがわからないので、自社作成の広告やカタログ、コーポレートサイトの原稿同様、原型をとどめないほどがらっと直してきたりします。
「これは書いてほしくない」
「この話じゃなくてこの話をメインにしてほしい」
中には原稿を見て、写真の撮り直しを迫る会社もあるそうです。
これをするとメディアにいい印象は与えません。
面倒くさい会社、わかっていない広報担当者がいる会社だと見なされ、最悪の場合二度と取材依頼が来なくなったりします。
私も前職に入社したてのころ、電話取材で書いてもらった記事原稿の半分をがらっと直されたことがありました。
そして上記のような広告と記事の違いを言ったところ「こちらの思う通りに書いてくれないんだったら、取材なんてしてくれなくて結構」と言われてしまいました。
(その後、この会社がパブリシティよりも広告を重視することがわかったのですが、それはまたの機会に書こうと思います。)
この時は入社したばかりで取材そのものの経緯を知らなかったのですが、間に入ってもらっていたPR会社の方を通じてなんとか交渉してもらい、こちら側の意図をくんでくれることとなりました。当然、PR会社のひとからはかなり強い調子で忠告を受けてしまいましたが。

2.対策その1:取材対応者には事前レクチャーを

せっかく記事を書いてもらったのにメディアとの関係がこじれてしまわないように、最低限、下記は伝えておきましょう。

・読者への影響力も含めた記事と広告の違い
・書いて欲しくないことは最初から話さない、オフレコは基本的に通用しない(特に新聞、経済誌系)
・誤解されるような表現、専門用語の多用は避ける
・その媒体が、原稿チェックできる媒体なのか否か、どこまで手を入れられるものなのか


3.対策その2:こちらの意図と記者の理解や認識のズレを埋める努力をする

しかし、取材対応者の理解不足のせいだけにしてはいけません。
広報担当者自身、取材に来る記者がどれだけ自社や自社を取り巻く業界のことを理解しているかを確認することが必要です。こちらが伝えたいことがうまく伝わるようにサポートするのも広報の手腕の見せ所です。


・取材前

初めて取材してもらう記者には、会社概要はもちろんのこと、取材内容に関わる資料はできるだけ事前に用意するようにします。本来であれば記者本人が事前にリサーチすべきことですが、正直な話、不勉強のまま取材に来る記者も一定数います。当日になって「え、そこからレクチャーしなきゃいけないの?」とならないように、準備はしっかり行っておきましょう。

・取材中

取材中、取材対応者が専門用語やわかりにくい表現を使ったらさりげなく記者に「それはこういう意味ですよ」と伝えましょう。また、その場で判断できないような質問を投げかけられたら無理せずにいったん預かって、確認してから答えるようにしましょう。

・取材後

取材時に、相手が本当に理解してくれているのか、こちらの伝えたいことが伝わっているのか不安になったら、取材後、会社の出入り口までお見送りするまでのタイミングでさりげなく反応を伺うとか、メールで補足説明を行うなどのフォローを行うことも可能な限りやってみることが大切です。


メディアの向こうにいるステークホルダーのみなさまに、自社について正しく理解してもらい、企業価値を向上するための重責を担っている広報担当者としてやらなければならないことはたくさんあります。


こんなえらそうなことを言っている私も、日々ノウハウアップデート中です。


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