漫画の描き方のコツ備忘録vol.11【ネーム・プロット編】【話作り】③ネームの初稿を完成させる
こんにちは、晏藝です。
今回も、漫画制作に役立つ情報を書き留めていきたいと思います。
いつも通り描く人に向けたお話が中心のマニアックな内容ですが、制作にご興味ある方にもお付き合いいただければ幸いです。
さて、漫画の描き方のコツ備忘録【ネーム・プロット編】【話作り】の3回目の今回からは、いよいよ実践的なネーム作成の方法のです。
前回までに、描きたいものの見つけ方や、コマの割り方、登場人物の人数の当て方、著作権においてセーフのラインの知識などについてのお話をいたしました。
これらを基礎に、見つけた描きたいネタを元にストーリーを立て、ネームに起こしていくという段階です。
以下はここまでの参考バックナンバーです。
ネーム作成準備は万端の方は、スクロールして下さいませ。
◇描きたいものが見つかっていない・見付け方が分からない方はこちらを。
◇創作における著作物や模倣やパクリとオマージュって何?そのセーフラインや注意点は??まだよく知らないなあ。
という方は自衛としても使えるこちらを。前中後編…長いです。
◇ネーム作りの基本の基本。読み切りの組み立て方や、ページの基本構成の理解にはこれらを。
それでは実践編スタートです。
◆ネームの描き方・実践!
ネームを描き方についてはまず、大きく分けて二つのやり方があります。
Aは一見ヤバそうに見えますが、やろうと思えば可能です。
私も実際に商用の8ページ程度のギャグ漫画の場合を、これで立てた事もありますし、この方が出来が良い事もあります。
やり方としては、
最初にパッと思い付いた任意の一場面を描き、次はこう展開したら面白いかなあという展開を数コマ先まで考えつつも、あくまでもノリでライブ的に、確定のコマを一コマずつ増やしていったり、アドリブで一気に完成させるなどの方法です。
聞くからに本番にはヤバそうな方法ですが実は、人によってはこれが意外とうまく行きます。
ギャグ漫画の巨匠 赤塚不二夫先生は、最初から最後まで思い付くまま一気に、一本の本番原稿を描かれていたというお話があります。
つまらなかったら、また最初から違うものを描けば良いと仰っていたというので驚きです。
ギャグの場合には、この方が先の展開が読めないもの(自分でもわかっていないため)が出来て面白かったりします。
ギャグやコメディがメインの方などであれば、もしかしたらこの描き方に適正がある方がいるかもしれません。
また、ストーリーの初稿やネタ出しを、この方法で行う事もあります。
しかしこの一発描きは、しっかりした構成のストーリー漫画の読み切り漫画や、動かし慣れていないキャラクターが登場する読み切り漫画などの場合には、
ネームから本原稿作業を何百回と繰り返したベテランさんでもなければ出来を安定させるのも難しく、やはりちょっと厳しいかな…と思います。
というかオススメは全く出来ません。
なので、ストーリー漫画の場合は、Bの【丁寧に組み立てて描く】が基本型かと思います。
というわけで今回から数回に渡り、ネームの立て方【丁寧に組み立てて描く】について、基本的かつ詳しいやり方をお話してまいります。
一回目は、草案・プロット・初稿の完成までです。
◆ネームを丁寧に組み立てて描こう
さて、Bにもいくつかの仕上げ方があります。
作者さんによっても変わりますが、この大まかな分類は以下の4つのようなものが主かと思います。
(これらの過程に、絵コンテなどをはさむ場合もあります。)
①文字や絵でプロットから。
文字や絵入りでプロットを書く。
それをネームに起こす。
②脳内で完結してから。
頭の中でネームを描く。
決まったらそれを紙などに起こす。
③頭と手を動かす過程から。
思い付くまま描きたいシーンを描き出す。
何個か繋ぎ合わせて一本のネームに起こす。
④キャラクターから。
キャラクターを作る。
そのキャラクターが活躍出来る話を考える。
ネームに起こす。
この複合型や、話によって変わる。慣れれば、はしょれる。
などあります。
ぶっちゃけ、完成が良ければ何でも良いかなと思われます…。
色々ありますので、どうご説明しようかと考えましたがひとまず、どのやり方でも通用するように、これらのネームの作り方の全部のせバージョンで、ザックリとネーム制作の流れを解説してみます。
私自身は話によって変えますが、おおむね、
話やシーンやキャラクターを考える→構成する→ミニネーム→本番ネーム
という感じで制作しております。
また、漫画の描き方は、描き手によって無限にあり、これが正解というものはありません。
強いて言えば、自分が楽しいやり方、自分が一番やりやすいやり方、もしくは自分が一番効率的に面白いものが描けるやり方。というものなどが正解になるかもしれませんがともかく、
ここでは基本的ないくつかの方法を基礎として、お伝えしておきたいと思います。
適宜、はしょったり、組み替えたり、組み合わせたりしていただき、また、他の方のやり方などの知識も取り入れて、ご自分に合うやり方を開発・模索してみていただければと幸いです。
◆ネーム制作の実践/《初稿》を作ろう!
①骨組みを作る
それではまず、最初の段階でやる事からです。
ここでは、必要な材料を揃えつつ、作品の大枠を決めます。
材料と大枠とは主に、
などです。
これらが揃うとネームを組み立てるための核、骨組みとなります。まずは、これらを用意してください。
以下解説です。それぞれ、
これらの見つけ方や何を描いていくかは、これまでの項ですでにご説明いたしましたので省かせていただきます。
さて、骨組みが出来たら、次の作業です。
②内容を膨らませる
次に以下の二点。
ストーリーとキャラクター面において、もう少し内容を具体化&練り練りしておきます。
ここまでが、揃えた材料を膨らませたり下味を付けたりと、下ごしらえする段階。
これでいよいよ物語を作るための下準備が完了です。
③草案・初稿=プロットを作る
初稿を作る、最後の作業です。
ストーリーの流れに、膨らませたエピソードやシーンを当てはめ、起承転結を整えていきます。
それをプロットなどとして《仮の物語の形》に構成していきます。
他人に話してストーリーが大体伝わるくらいの状態です。
ここまでで、この漫画がどんなお話になるかをひとまず確定します。
漫画では意外と最初の思い付きや、草案や初稿が大事だったりします。
後で詰まった時に、ここに戻ってくる可能性が高いので、必ずとっておきます。
このやり方も以下の、ABCのように複数ありますので、しっくりくるやり方を試してみていただければと思います。
私はストーリーの種類や、ネタの出方によって変えたりもします。
さてさて、ここまで来るとやっと今回の目標である、描く作品の《初稿》が出来たような段階です。
そのままネームに起こす方も多いかなと思いますが…、
ちょっと待ってください!!
ネームにする前に、もう一手間、二手間加えます。
非常に大事なお話をすれば、
自分で面白いと感じる漫画も、つまらないと感じる漫画も、ここまでの出来は大体同じです!!
実は、ネームにおいて肝心なのは、この先のいくつかの作業です。
ここが、プロっぽい印象のネームと、アマチュアっぽい印象のネームの境目とも言える部分です。
これは、本当にマジな話です!!
俗に言う「担当さんがつく」という状況となると、これらの作業を個人的にやってこなかった方でも、「作業の流れ上やる事になる」という状況に置かれます。
そのため、人によってはこの作業をネームに組み込む事で、ネームのレベルが上がるという事もあります。
反対に言えば、個人的に作成するネームであっても、これらをしっかりと行えれば「担当さんがついているような状態と同じようなレベルや状態」を、ある程度保持する事が出来ます。
しかしながら、長くなってしまいましたので、それらのやり方は次回に引き続きお話していきたいと思います。
この先は少々、地味で基本的な作業とはなりますが、漫画創作においては非常に有用かつ重要なお話ですので、ぜひお付き合いいただけますと嬉しいです。
↓ 続きです。
<余談です>そのやり方の開発過程についての余談と、漫画家とエージェント制についての余談。
私が紙でプロとして描いていた時代…、
すでに色々と社会人経験もあったはずの新人の頃に、どーしても何をやってもどんなアプローチの仕方を試しても、完っ璧に反りが合わない
(良い人とか悪い人とかでなく、もはや人としてお仕事として漫画の好みとして一発目のネームチェックから全く反りが合わなかった…
それでなぜ私に付いてくださったかは未だに謎の。
もうお一方、かなり好意的に手を挙げてくださっていたらしいけれど、そちらの方はもうすでに何人かご担当されていたらしいので見送られた模様?という)
初代担当さんに当たり、
「この人からネームに意見をもらうと、
一言で創作意欲が荒野になるので、完成形以外は絶対に見せたくない…!」
というヤバい精神状態になり、まだ新人のうちに、
次回お話する【編集さんにいちいち見せなくても商用に耐える原稿制作のやり方】を編み出しました。
以来、お仕事の度に「今回は先方はどんな作品が欲しいか」のヒアリングをするほかには打ち合わせは無しで、
自分一人で仕上げたネームを毎回、ド新人が編集長チェックまでほぼ一発で通す(直しがあっても1、2コマ調整程度)という鬼の所業を行っていました。いつも胃が痛かった。
(稀にダメな時は全ボツにして一から描くという、ゼロイチ方式です。)
今思えば、新人漫画家なら特に通常は担当さんと一緒に行う作業までを、一人で手探りで行った上で提出していた形だったのか…と思います。
当時は限界まで頑張ってやっていましたし、お陰様で勉強にもなりましたが、これは非常に孤独で不安な作業でした。
なんやかんやあって、担当さんが変わってからも他人にネームを見せる事が、創作に支障が出るほど苦痛になってしまったので、私は基本はずっとこのやり方で作品を作っています。
でも実は、普通は編集さんに協力してもらい作るけれど、自分は一人で作っていてちゃんとしたものが出来ているのか?
他人に意見をもらわない作品は良くない。くそです。ダメでござる。みたいな意見も当たり前みたいな感じで結構聞くしな…。
とはいえ他人に完成前に意見をもらうと、いまだに精神的に苦痛が大きくて物理的に創作が出来なくなったりしてしまうので、無理も出来ないし。
と、割と最近までもやもやが残っていました。
ですがこの前、手塚治虫先生の著書を見返していた際に、
「(ネームなどを)出来上がるまでは他人に見せない方が良い」というような事が書いてあり、「うわああ!ですよね!!(泣) 良かった!」とめっちゃ安心しました。
※人によると思いますので参考までに。他の方とがっぷり協力出来るというのも素敵な事です。
もう、漫画は人によってやり方が無数にあるので、自分にあったやり方が一番ですね本当に…。悩み過ぎず楽しんで作品を上げてくのが一番…。
しかしまた、それらを経た現在の自分の考えとしては、
これらの創作の重要部を当たり前の事として「編集さんに共同作業してもらっている」文化が、
「自分の作品として自信や誇りを持つ」
「独立した作家として一本立ち出来ている作品を、売ってもらう」
「著作権を本当の意味で自分で所有する」
という形が取りにくくなったり、それらの意識の持ちにくさに繋がり、
それが本来は作家の報酬が多くなり、労働環境もコントロール出来るようにもなり、漫画家にも有益なはずの、海外の作家のようなエージェントという体制の取りにくさにも繋がっているのでは…?
実はそこにも「日本の漫画家の労働体系などが整備されない原因」の一つとしての、大きな課題があるのでとは?とも感じます。
せっかく漫画描きが、個人的にグローバルに漫画を売る事が出来る社会になってきたのに、描く側の意識が変わらなかったら非常にもったいないのではと思います。
この点を改善していくためには、
昔ながらのやり方の良い面は残しつつも、自分に最適な発表のアプローチの仕方を選び、
漫画家自身がそれらを理解して自立した作品を創れる、プロになって経験を積む前から「そういう形で作品を創れる人」も、
これから先、ある程度の人数まで増えていく必要があるのではないかなあと思います。
作品として独立したしっかりとした面白さを持つ漫画を、独り立ちした作家として常に創り出していける。
そんな漫画描きになるのが現在の私自身の作家として目標でもあります。
もちろん、最高の状態の作品を作るため、それを楽しく無理をせずに出来るように。
なのでnoteの中で、私が知っている範囲で作品の完成度を自分一人でも高められる方法を、お話していきたいなと思います。
この一歩一歩が、AIには絶対に代われない人の心を潤す仕事である漫画家が、ごくまともな生産値や労働環境で生計を立てる事が出来る、当たり前の職業になっていく事に繋がれば良いなと切に思います。
また、かつての私のような状況になって心細くなってしまっている方や、創作に悩める方のお役に立つ記事ともなれば幸いです。
余談までお読みいただき有難うございました!
よろしければ次もお付き合いくださいませ。
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