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漫画の描き方のコツ備忘録vol.1【ネーム・プロット編】【読み切り漫画のページ配分について】

漫画の描き方のコツ備忘録vol.1

【ネーム・プロット編】①
【読み切り漫画のページ配分について】

思う所があり、漫画の描き方についての小筆もちょこちょこ置いていこうかなと思い、今日から始めてみます。

私もまだまだ勉強中の身ではございますが、どのみち漫画は一生勉強中ですし、漫画制作という当てのない孤独な作業の合間に小さなコツでも助かる方が居るかもしれませんので、思いきってやってしまいます。

漫画を描く人向けの実用性と汎用性を重視した豆知識的な情報なので、必然マニアックなお話となり、描かない方には少し退屈かもしれませんが、ご興味のある方はお付き合いいただけたら幸いです。

この小筆を始めた経緯はそのうちまた記事に盛り込む事といたしまして、サクサク本題に入ります。
また、なるべく漫画制作に詳しくない方も読みやすいように漫画系専門用語には【※】印、その下に簡単な【注釈】を入れさせていただきます。

では、まず一番最初に漫画の制作手順と言えばざっくりと
〈話作り〉プロット※、ネーム※→
〈作画〉下絵→ペン(墨)入れ→トーン→仕上げ
となります。

※プロット
話の構成やあらすじを文字で書いたもの。
最初からネームに入り、省く事も多い。

※ネーム
本作画の前の漫画のラフ。
完成形をイメージしてコマを割り、セリフを入れ、後から自分で見返して分かる程度に絵を入れる。ただし、他人に見せる場合には何が書いてあるどんな漫画なのか分かるように、表情のニュアンスや背景について注釈を入れたり、しっかりめに絵を入れたりする必要がある。

漫画制作の工程を大きく2つに分ければ〈話作り〉〈作画〉であり、また実際の漫画制作にまず必要なのは〈話作り〉です。
最近は、コミカライズのお仕事を増えているようですが、ネームは作画者が起こしたりしますので、どちらにしても必要な知識となるかと存じます。

というわけで初回は、漫画の描き方のコツ備忘録の【ネーム・プロット編】と章題して、ストーリー漫画の最小単位である〈読み切り※〉のネームについての事柄から一つ書き留めていきたいと思います。

※読み切り
一話で読み切れる一話完結の、主にはストーリー漫画を指す。
反対に連載や続きものは次回に続き、一話で話が完結しない事が多い。
キャラクターは同じで読み切り話を連続して行う連続ドラマ形式の読み切り連載もある。
商業誌などお場合には、読み切りから読者の支持や編集者の要望を受け連載化する事が極めて多いので、漫画において基本形かつ非常に重要な単位。

【読み切り漫画のページ配分について】

初回からいきなりマニアックが過ぎますが、投稿や実作業で役に立つものを選ぶとこうなってしまいますのでご容赦を。

漫画の制作作業においては最初の方の工程で必要な【読み切り漫画のページ配分】を決めるコツについてのお話です。

確か手塚先生のご手記だったと思いますが、

【クライマックスはたっぷりページを取って盛り上げ、オチはコンパクトにすると良い。16ページであれば山場に5、6ページ。】

というようなお話があります。
レジェンドクラスの先生のお言葉は素直に聞いて素粒子一粒の損もなし。
というわけで、これを実際の読みきりに応用がきく具体的な数値式に起こしてみます。

漫画の基本単位は印刷都合の公倍数の8ページ。そして読み切り漫画は倍数の16ページが基本です。

16枚から必須の表紙を抜いて本編にあてられるのは15枚。
起承転結を4つの要素とし、16枚を割ると1つの要素の平均割り当ては4。
かつ、クライマックスに5枚ほど必要とする。オチは少なくて良し。

つまり、16ページの読み切りのストーリーならごく基本のページ割りの例は、


〈表紙〉1
〈起〉4
〈承〉4
〈転〉5
〈結〉2
=16


というようになります。
話によっては〈起〉や〈承〉1枚を減らし、山場の来る〈転〉を1枚増やしたりして


〈表紙〉1
〈起〉3
〈承〉4
〈転〉6
〈結〉2
=16


となるかもしれません。

〈序破急〉などの特殊な構成はまた別ですが、この数値は一定の目安として使えて特に話作りに慣れていない頃、時間がなくて頭が回らない時などに非常に便利に使えました。

例えば、自分の書いたネームの起承転結の枚数割りをざっくり数えてみて、冗長だなぁという時には起承や結が長すぎてクライマックスが足りていないなんて事もあったりします。

そしてこの数値の算出は、長いページの場合であっても多少の応用がききます。24ページを例に見ていきます。

まず、16ページの漫画のクライマックスにあてる配分5/16ページとは、総ページからすれば1/3です。
24ページの読みきりの場合には、本編にあてられるのは23枚。元々の24を起承転結4要素で割ると6。
クライマックスには1/3の8枚。オチは少なく、16の時は1/8だったので


〈表紙〉1
〈起〉5
〈承〉6
〈転〉8
〈結〉4
=24


クライマックスを重視し、オチをコンパクトにするなら


〈表紙〉1
〈起〉5
〈承〉6
〈転〉9
〈結〉3
=24


などとなります。

起承に最初の山場を入れるなら〈起〉ページを増やし〈転〉調整するパターンもありかもしれません。
24ページ以降の枚数も実はこれでいけます。最後にどんなページ数でも導き出せるように整理します。

【読み切り漫画のページ配分】計算式

これを計算式として表すと

〈表紙〉1 枚(中編や長編50ページ前後越えなら見開き2も。)
〈起〉総ページの1/4を目安
〈承〉総ページの1/4を目安
〈転〉総ページの1/3を目安
〈結〉総ページの1/8を目安

となるわけです。これを意識して行うと、ページ数が増えると構成が崩れるという罠も、中だるみをし過ぎるという罠も少し避けやすくなります。

しかし、よりページが長い時は〈起承転、起承転転結〉など大枠の構成自体変え、合計枚数でページを分配する必要があったり、〈起承〉の間にいくつかパターンの違う山場を入れたりしないと飽きられてしまいます。
が、それはまた別のお話なのでここでは置いておきたいと思います。

あくまでも目安として便利にお使いいただきたく。

漫画の描き方のコツ備忘録vol.1【読み切り漫画のページ配分について】はこれにておしまいです。


余談ですが、そう考えるとジェットコースターというものは非常に良くできているエンタメだなぁと感じます。
表紙となるスタート地点で、ワクワクやドキドキをあおり
初めと中では、ひねったり、軽く回したり、飛ばしたりして起承に飽きさせない何種かの山場を作り
転に入ると、クライマックスを匂わせながら高い所までゆっくり引っ張って一気に落とし山場を作って
最後には余韻を残して終わる。

もしかしたら富○急ハイランドに行って、あらゆる種類のジェットコースターを乗り倒してページ配分の参考にすると非常に良いのかもしれないです。
おそらく大変参考になるはず。ジェットコースターの種類だけ話の構成が作れるかもしれない。
私は御免ですが…。

この種の小筆では実務的に汎用性が高く、商業漫画のお仕事上で実際に私が役に立ったと感じた情報を少しずつ記録していくつもりですが、

それらはあくまでも私が制作で経験し、先達やその書籍から学び自分に合わせて独学し整理し編み出したものであって、漫画の描き方は人それぞれ無限にあり、ご自分の制作活動は100%自由である事を大前提としてお読みいただきたいなと願います。

次回は、時期は未定ですが
【ネーム・プロット編】
【登場人物の人数とページ数】についてを。

それではまた。



※以下宣伝につき

例によって、まだ漫画の公開をnoteさんで出来ていないので、ひとまず下記が私、晏藝嘉三《アキヨシミ》のマンガフォリオのリンクです。
ちょっとした試し読みと、電書販売ストアさんのリンク、作者プロフィールがメインです。
そのうち作品の活動の記事も増やしていきたいと思います。

電子で漫画を出版している漫画家です。
『おひとりさま』『ミケ』『猫鬼の死にぞこない』
『物見の文士』『神垣は緋』等の漫画を描いております。

晏藝嘉三AKI YOSHIMIという漫画作家のミケという漫画の表紙。COMPASS COMICSより発行。住宅街をミケ猫の着ぐるみが歩いているようなカラーの漫画絵が描かれている。
〈完結〉電子版『ミケ』


晏藝嘉三AKI YOSHIMIという漫画作家の物見の文士-狸囃子が聴こえる-という漫画の表紙。COMPASS COMICSより発行。左下に着物を着ての長い中性的な男性が物思いにふける姿の上半身の漫画の絵が描かれている。手には手紙を記すための白紙と墨の付いた筆を持っている。背景には月の見える窓、柳が描かれている。
電子版シリーズ『物見の文士』読み切り『狸囃子が聴こえる』

「マンガフォリオ」=はてなブログなどの「はてな」さんと、「集英社」さんが作ったサービス「マンガノ」内の漫画描き用のWEBポートフォリオ。 はてなブログ、機能も良くて興味はあるけどページ運用するにはまだ私には荷が重い。


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