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漫画の描き方のコツ備忘録vol.6/コラム『模倣と創作の深い谷』前編/著作権について

コラム『模倣と創作の深い谷』前編/著作権について

あまり知りたくない気もするけど、知らずに創作するのはちょっとあぶない。 
パクりに盗作、トレースと模倣、オマージュとリスペクトとパロディに、著作権と法律などなどについてのお話!前編です。

安全な創作においてどうしても必要となるのが、模倣の範疇やその白黒作品の著作権についての知識です。

ややこしくて難かしくて、よっくわかんねえのよ!とも、創作する人間としては言っておれませんので、自分の創作物を世にさらすにあたって、最低ラインここまでは知っておいた方が良いかなという
著作権や模倣におけるマナーの知識などを、『漫画の描き方備忘録』の番外コラムとして、前中後編の三回でお話していきたいと思います。

著作権関連の知識が浸透するのは、創作者全体の為ともなります。
また、この分野が苦手な方もご自分の創作物にどんな権利が発生しているのかを知る事は、創作する上で、非常~に大事な部分ですので、知識補完の一助や入門編として、ぜひともお読みいただければ幸いです。

分かりやすくするために、なるべく専門的な用語は使わずやっていきます!

ではさっそく。
ざっくり解説、まず前編は『著作権』そのものについてのお話です。



著作権=生み出した作品に自然に生ずる、生み出し手の権利。

創作におけるパロディ、オマージュ、リスペクトは、良い意味でも悪い意味でも使われる事がありますが、これらについて論じられるのはどちらかと言えば道徳的な観念です。

混ざりがちになりますが、混ぜてはいけないのが著作権という法律に関わる部分です。
これを無視して創作すると、盗作・無断トレースなど法律上これはいけませんよ~!のブラックな領域に入ります。
 
真面目に全部語ると大変な事になりますので、あくまでざっくりとではありますが、最初はこの著作権について、漫画を制作する上で必要最低限の情報や概念に絞ってふれていきます。
厳格に利用する場合には、必ず法律的な文書を参考にしてくださいませ。

では始めに、人が何かを創作する、著述する時、その作者には
【生み出した作品への権利】が自然に発生します。非常に雑に言えばこれが【著作権】です。

法律上のこれには、
①その著作物自体についての権利
②それを利用する権利
③それを改変する権利と、させない権利

などが複合的に含められています。

また、その作者本人が亡くなり一定の期間が経過すると、多くの場合でこの著作権の大部分がフリーつまり、権利者(作者)の許可なく誰もが自由に利用する事が可能となります。

この保証期間は芸術の種類によって法律上で定められていて、国によっても保証範囲や期間などに違いがあります。 

という所までが、基本的な著作権の定義です。
では、ここからは実例を上げながら、日本の著作権について簡単にご説明してまいります。


著作権のきれた作品と、著作権のきれていない作品の権利について。

まずは、この著作権がきれているものの扱われ方からです。

例えば、作品が作られ作者が没してから長~い期間を経ている浮世絵などには、もう基本的な著作権がありません。※
そういった著作物は、フリー(無料)画像などに近い形で誰でも利用できたりします。

これは、
・その浮世絵の著作権がきれている事をしっかり確認して、自分で古書店で古い現物を買ってきて、画像として取り込む。
などすれば、著作権的にはどこで二次的に使っても大安心です。

他に、
・ここに置いてある画像は完全に自由に利用出来ますよ~。
・商業的な利用も恒久的にダイジョブですよ~。
などと【利用規約に明記】されているサイト等の公の場所から、その浮世絵のデータを持ってくる場合も二次利用に安心です。

また、この場合にはさらに
・でも使う時にはウチにあったというクレジットをつけてくださいね?
・または、使う時は連絡して許可をとってくださいね。
・それから、使用にあたっては自己責任ですからね。
等の言及が【利用規約】に明記される場合がありますので、その時は規約の遵守が必須です。

浮世絵などには、もう基本的な著作権はありません。しかし
長い時間(令和5年秋現在は、作者没か作品発表から70年が期限)が経っていても、権利者が作者以外に移っていて、権利がきれていない作品もあります。

特に商用利用!の際には必ず一つずつ調べる必要があります。
浮世絵ではありませんが、例としてミュシャ作品などは財団が出来ているので、模倣したり商用利用したい場合には要注意、下調べが必要な作品となります。
最近では、ウイリアム・モリスの〈イチゴ泥棒〉の著作権が切れた事によりハンドメイド業界が賑わいました。

また、浮世絵は元絵と彫師と摺師が分かれた分業制の数人の手を経て完成させる工芸に近い部分があります。絵画でもレンブラントが画竜点睛的な作業をほどこした、彼の工房製などがあります。
そして、漫画も商業ではアシスタントさんが背景などをほとんど入れている分業制作画が多いですが、それら複数人の関わった創作においても基本は全て元の作者や版元が著作権を持ちます。

しかしながら、きれている浮世絵を使った他人の創作物から無許可で持ってくる事は出来ません。
例えば、その浮世絵が、とある企業や個人のHPなどに掲載されていた場合などには、
それ自体は著作権がきれた浮世絵の画像であっても、無断でそこからコピーして持って来て使いたいとすると俄然がぜん、雲行きが怪しくなってきます。
 何故なら、すでにそのHP自体が他人の創作物、著作物の一種となっているからです。

その浮世絵を角度を変えて撮った写真なども同じ理由で要注意です。

ただし、これはその利用法によっても判断が分かれてきます。

まず、そのHPから持ってきた浮世絵の画像を《自分のみが見る個人的な用途》で使う、例えば引き伸ばしてポスターとして自室に貼る。
というのはまだオッケーなグレーゾーンです。

が、もう少し利用先を拡大して、
利益は出ないけれども公の場、例えば、自身のTwitterXや無料ブログなどに引っ張って来て、無断で自分の陣地に置いておく。》
というのも、ほぼ黒か黒に近いグレーです。

しかしながら、その黒っぽいグレーでも、うちの宣伝になるなら別にいーよ怒んないよという著作権者もいます。
反対に、宣伝になっても、いかんもんはいかんじゃろがい!という方もいらっしゃいます。

そして、もしその画像元サイトに
無断の画像転載などは絶対禁止ですよ~!
明記》されていたら、明らかにそれは法律上でいけませんよの世界となりますし、

商業的に利益が出ている自身のHPや著作物なんぞに無断でちょちょいと持ってきてしまう》と、まっ黒アウトゾーンとなってまいります。

ですが、これらが明らかに黒だったとしても、版権がフリーの、そこそこよく見る浮世絵の画像のみの画像転載ですと、
それをどこかから持ってきたのかも、買ってきたのかもしれず、何らかのマークがされていない場合には、実際はあまり分からなかったりするので裁きようがないぞという事にもなります。

もちろん、その企業や個人の所有するほぼ現存しない浮世絵など特徴の強いものは、すぐ著作権者本人には分かります。

さらにさらに、こちらはあまり知られていないかもしれませんが、実は《著作権がきれていても作者が亡くなっていても、その作品を勝手にいじったりしてはいけない。》

特に、作者の意図していない表現や、侮蔑的表現だったりする改変は絶~対!だめですよ。
というような権利が著作物の中にはず~っと存在しています。
こちらは基本的な権利自体は作者の没した時に失くなりますが、それでも作者が生きていた頃やってはダメだった事はずっとやっちゃダメですよという形で残ります。

作者が認めていなければ、例え基本的な著作権がきれていたとしても、その作品や浮世絵を勝手にコラージュしたり描き変えたりするのは、場合によっては、よろしくない事であったりするわけです。
しかし、これを訴え出られる作者本人はすでにいないというのが実際の所です。その場合、熱いファンの方や親類が代わりに怒って下さったりもするわけですけれども。

さて、ここまではあくまでも著作権の切れた浮世絵などの場合のお話です。

お次は、
まだ著作権のきれていない作品や、きれておらず現在流通している最中の作品などの場合です。

これらを《著作権者本人の許諾なしに使う》と、
特にそれによって、
・権利者ではない流用者には明らかな利益があるとか、
・それにより元々の権利者には不利益が及ぶ際には、
法律や権利にふれる利用法
となります。

他人の著作物を勝手に無料転載して、広告で収入を得る、漫画の海賊版サイトなどがこれにあたります。
これらは、
著作権者が当然得るべき利益や版権所持者の利益》を、
《作り手でない人間が不当に横取りする・そういった行為により著作者の創作意欲を削ぐ事》
となり法にふれます。

いよいよややこしくなって参りましたので、ここまでをまとめます。


著作権ざっくりとまとめ

漫画制作にあたって、深い関わりのある著作権についての要素はざっくり大きく3つあります。

①その著作物に対して作者が持つ根元的な権利
②その著作物を利用する権利
③著作物自体を改変する権利とさせない権利
 

です。
実際の現場で、漫画描きがプロとして契約期間を決めて渡したり、半分こや、共同所有的な状態などにするのは、通常は②の利用の権利です。
出版権、版権などと呼んだりもし、出版する、配信する、映画化するなど用途により権利が分かれています。

この②は、漫画においては出版社や発行元と一緒に共有し、販売部分を請け負ってもらったりして、利益を分け合ったりする(※使用料を取る)部分です。
漫画は現代では、なかば共同制作となっている場合もありますが、
契約書に①を著作者に帰属しないなどのアブナイ明記がなければ、あくまでも①は法律上は著作者のものです。

これには紙での出版と、電子などの媒体での出版公共配信についてなどなどで権利が分かれていますので、この点は契約書と法律を要確認となります。

③については先ほどご説明した改変の例と、中後編でも少し追加の説明をいたします。

また、作者が亡くなったりして時が経ち、著作権が完全にきれているものは、絵画作品でも著作権フリーとして使う事が出来ますが、権利が移っていれば自由に使えない事もあります。

しかし、きれたものでも、著作権がきれているその著作物を利用しているものなどの著作権がフリーでない他の人の著作物から、
勝手に持ってきてしまうのは基本的にはいけない事であり、特に商用利用は不可
となります。

最後に著作権がきれていないものは当然、
著作者や版権の共同所有者等に権利がありますので、その許諾なしに公の場で使う事は原則としては許されていません。


さてそれでは逆に、自分で漫画を描く時などに他人の著作物や素材を使う時、自分が利用者である場合には、何に気を付けたら良いのでしょうか…?

そちらは次回、中編にて詳しくお話したいと思います。 

ぜひ前編と合わせてご確認いただき、理解を深めていただけましたら幸いです。最後までお読み下さり有難うございました!
それではまた!



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