見出し画像

漫画の描き方のコツ備忘録vol.10【ネーム・プロット編】【話作り】②描きたいネタ、作品テーマを探る

こんにちは、晏藝です。
小筆『漫画の描き方のコツ備忘録』第十回目。

今回は、【話作り】の一番最初の壁【何を描くかを決める】事について前回からの続き、

【自分の願望】から【自分が描きたいネタや、作品のテーマを】見つけ出す工程となります。

まだ、描きたいものがはっきりしていない、それが分からなくなってしまった時、根本からそれを探り出す方法についてです。
実践的な話、ネームやプロットの立て方については、次回からご説明していきたいと思います。

前半の第九回を未読の方は、よろしければこちらからどうぞ。

今回のラインナップです。


しばらく、マニアックかつ座学のような記事が続いてしまい申し訳ないのですが、本気で漫画を描いていく方には、順番に読んで確実に実になるものをと進めておりますので、ご容赦を!


◆描きたいものを探る。

前半では【自分が漫画を描く大元の理由や欲求】を確認し、その【目標の達成のため】【誰に作品を見せていくのか?】

また、自分が【ビジネス寄りのものを描ける作家】なのか、【芸術寄りのものを描く作家】なのかを探りました。

ここからは、いよいよネタの探り出しをしていきます。

前回で見当をつけた、発表場所の規約や環境により、描く漫画の

・ページ数
・漫画の表現形態

(エッセイ、ストーリー、流行りもの、ギャグ、SNS向け、商業向けかなど)

については大体の目星がついているかと思います。
ここでまだ、

何を描きたいのか分からない…
何を描けば良いのか全く分からない…

という方は、まず
《自分の感情が動くものが何なのか?》
を突き詰め、理解する必要があります。

ストーリーの本質とは、

読み手に感情を動かさせる事
=(イコール) 
作品を通して何らかの感動をさせる事

です。

・自分の感情が動くものが何か?
・自分がどんな作品に感動する人間なのか?
・自分の中の欲望とは?

これらが理解できていない状態で、他人の感情を動かす作品はなかなか出来ません。

そこで…前回、最初に確認した
・何のために漫画を描きたいのか?
・自分が漫画を描く目標や目的・欲望
が役に立ちます。

描くものが分からない時、見付けにくい時は、この【目標や目標・欲望】を頼りに、
自分が【描きたいもの・描けるもの】を探り出してみます。

それではやり方をザックリと。

まずはリラックスして、のんびりしてお茶でもしつつ、まったりと思考します。

思考の進め方は、
自分の強い願いや思いや願望
→どうしてそう思うのか、どんな状況でそう思うのか
→→それを他人にも感じてもらう作品とはどんなものか?

というようなやり方です。

例えば、最初に確認した漫画を描く事の目標や目的・欲望が、

※ちやほやされたい。だったらこんな風に連想していきます。
→どんな漫画を描いていると、ちやほやされると思うのか?
→人気がある、アニメ化する。面白い、大衆の支持を得られる。

→■私には描ける!アガリです。描きましょう。自分が面白いと信じるものを。

→そんなもん描けねえよ!なんだよそれ!
→待てよ?
そもそもなぜ自分はそんなに他人に、ちやほやされたいのだろうか??

→子供の頃からダメで、ちやほやされた事がない。羨ましかった。
→そういう人間になりたかった。めっちゃ愛されたい。

→ならば、自分のような、ダメだと思っている特徴を持つ人が、自分が思う理想の姿に成長していくような話があったらどうだろう。どんな展開ならワクワクするだろうか。
→モテるような話はどうだろう。どんな風にモテたら最高なのか。そうなるきっかけはどんなものが良いだろう。偶然か努力か卑怯な手か。

→そうやって力を得た人間を、客観的には自分はどう思い、オチではどうなって欲しいと思うのか?

※人を喜ばせたい。感動させたい。なら
→自分はどうされたら喜ぶのか。
どんなものを見て、これまでに感動していただろうか。

→落ち込んだ時に、何で元気になったのか。その時にどんな風にされたら嬉しかったのか。
小さな事でもどんな事に涙が出て嬉しかったのか。
どういう境遇のどんな人がどうなったら、自分は感動するのか。自分と似た境遇だろうか。とても不幸だと思うような境遇の人だろうか。
不幸とはどんな事を指していると思うのか。

→人生で一番感動した作品の〈どこ〉に自分は感動していたのか?
それを、自分が得たように他人に伝えるには?

→その感動が、何か自分の好きなものを通して作品に出来ないか。

※素敵なキャラクターが描きたい!なら
→どんなキャラクターが自分は素敵だと思うのか。そのキャラクターのどこに自分は魅力を感じているのか。

→どんなシチュエーションでどんなことをすると素敵だと思うのか

→そのキャラクターが一番活躍出来るのはどんな話なのか。どんな状況で何をして欲しいのか。

→そもそも、自分がそのキャラクターにそれだけの魅力を感じる理由は?
自分とのどんなギャップや、似ている所がその魅力を感じる要因なのか。
似ているならそのまま主人公として描けるかもしれない。
でも、ただただ憧れていて、自分とはかけ離れているならそのキャラクターと憧れている自分とのギャップを繋ぐ、別の主人公が必要な場合があるかもしれない。

※とにかく、とある有名商業紙でビジネスとして売れたい!なら
→そもそもその商業紙で人気が取れる作品はどういったものか?

→傾向を分析する。既存のヒット作、ヒットしない傾向の作品を全部読んでみて分析したその傾向は?、必要画力はどれくらい?、人気の出やすい形は?、体力の管理は出来るか?、現在のその雑誌の読者の層に人気の出やすい作品の傾向は?、その中で自分が描けそうなものがあるのか?etc…を分析。

→分析した要素を作品にしっかりと落とし込む。場合によっては技術の向上のための勉強を強化。

→自分が描ける状況や、描きたいテーマでそれを行える作品とは。

→それらを描けそうもないのなら、そもそも自分が売れたいと思った理由は?
売れるとどうなるのか?
そして、どうして自分はそれがそんなに欲しいのか。その欲の根本は?

何だかうまく行きそうにも見えますが、このまま当てなく思考を重ねると思考の泥沼にはまる事もありますので、ここで指標を取ります。

ここまで見ていただくと、何となく次に上げる指標の意味が伝わると思いますが、

漫画作品とは、

読み手さんへの会話の投げ掛け》
サーブする料理のようなもの》でもあります。つまり、

自分は

【こういう〈もの〉
しいては、キャラクターに、舞台に、シチュエーションに、場面に、ビジュアルに、物語に、道徳心に、信念に、概念に、美しさに、物体に、動物に、etc…に】

対し、

【〈感動をする〉
つまりは、ワクワクする、萌える、キュンとする、腹が立つ、恐すぎる、爆笑する、シェアしたくなる、泣く、幸せになる、癒される、好きが過ぎる、ドキドキする、燃える、面白味を感じる、悲しくなる、etc…】

んだけど…どうですかね?

という感じです。

・自分の中のどんな気持ちを、他の方とシェアしたいのか?
・作品にできるほど、自分が強い気持ちを感じるような事柄は何なのか?

自分の中の、

【自分はこう思うんだ!】

というものを描き、著作物の形にするのが《創作》です。
反対に、ただ漫然と、勢いで創作したものにも素直にそれが現れます。

それらをより分かりやすく、伝わりやすく、正しく伝わるように、的確に、より美しく、より派手に見えるように、真実として、時に汚いものを美しく装飾して偽り、描いていくために必要になるのが《技術》です。 

または、他人の目線から考えて、より多くの人が買いたくなるもの、求めているものはどんな作品か、もしそれが自分が一番には好きでないものだとしても選び、自分に出来そうなもので、買いたくなるような表現で作品にする、制作するのが《ビジネス的な手法》です。

自分の描きたい、好きな作品をただただ他人の目は気にせずに描きたいように、心の喜びのままに描くのは《芸術に近い創作》です。

もう察してらっしゃるかと思いますが、それゆえ創作するためには

【自分の、欲望・理想像・夢や希望・何が望みでどうなりたいか?】

を知る必要があります。

その【望み、主張、欲望、願い、気持ち、美しいもの、好きなもの】こそが、
自分が【描きたいもの・描けるもの】です。

それをどう料理するかは

・「自分が、描きたいものとして、描くか」
・「自分が、読みたいものとして、描くか」
・「読者の、読みたいものとして、描くか」

などによっても変わります。

しかしここで、待てよ?となるかと思います。

例えば自分には「漫画を描いてちやほやされる」という目的があったけれど、
これによって出来るのは、自分の作りたいと思っている、またはその夢を叶える

「描けば、ちやほやされるような作品!」
ではなく

「自分の中の、ちやほやされる欲望を写し出したような作品…」
ではないのか?

となる場合もあるかと思います。
その通りです。

大元の目的や願望を探るのは、必ずしも叶え、達成するためではありません。
自分の中の願いや欲望を作品に変えるためです。

その願望こそが、あなたが描けるもの。
他人を感動させられる種となるもの。
あなたの中の強い気持ちだからです。

なので、今回は分かりやすく強い気持ちがあるはずの【漫画を描きたい理由】を例としましたが、
その他にも、もしもほかの事に対して「自分はこう思う!」「これが好きだ!」「この感情が好き!」という強い気持ちがあればもちろん、それを突き詰めても作品の題材になります。

そしてこの、

好きなもの
・好きでなくマイナス方向にでも、気持ちが強く動くもの

を組み合わせていくと、作品や物語が作りやすくなってきます。

自分が強い気持ちを感じるほど好きなもの、気になるもの、好ましく感じるもの、誰かに伝えたい、見せたいものが何か。その反対方向に強く気持ちが動くものが何か。

色んな事を体験したり見たり聞いたり読んだりして、インプットする。
好きなのか嫌いなのか、描きたいのかそうでないのか。自分の趣味趣向を分析し、理解する事で描けるネタ、描きたいネタが分かります。

また、例えビジネス等として要求やニーズに合ったものを描く場合であっても、100%描きたくないものしか詰め込まれていない作品を描くという事は、非常に苦痛です。

何らかのニーズに合わせて描く場合も、自分の得意なものや好きなものに寄せて描くという事が相当のドMの方でもなければ、基本的には必要になりますので、このやり方は有用です。


◆自分の中にある【描きたいテーマ】を自認する。

反対に、考えずにどんどん作品を描いて仕上げてみろ!それが力になる!という事もよく言われます。

そうして、手当たり次第に作品数を増やしてみたという方もいて、それでうまく行った方もいるかと思います。

ですが、とにかく描いてはみたけれど、自分で何が描きたいのかいまいち見えてこなかった、ずっとしっくりこない…という方もいるかと思います。

そういう場合には、一度ご自身が仕上げた作品を分析して見るのが良い方法です。 

仕上げた作品から逆算しても、自分の中の欲求・欲望は知る事が出来ます。
また、そこから無意識に書いている【作品のテーマ】も分かったりします。

この場合は、一度完成させたものから読み取るという形になります。

こちらも、決して自分の創作物を批評したり否定をするのではなく、ただただ自身の作品を、そこに描いてあるものの本質をよく見て、自分が何を描きたかったのか?
作品に向き合って考えてみる必要があります。

例えば、

自分の中にどんな考えや思想や萌え、考え方があったから、こんな風なキャラクターだったり、話になっていたのだなと。
この作品で一番描きたかったもの、表現したかったものはなんだろうか。

また、その考えや思想や、萌え自体は、他人からするとどうなんだろうか。
それを分かってもらえるように描けているのだろうか?
こんな漫画を描く人を、他人として自分が見たらどんな人間だと自分は思うだろう。
受け入れられるものなのか。
受け入れてもらう必要があるのか。

そもそも、この話を描くのに今の自分の技術は足りているのか。
今の技術で、自分でも描けるものは何だろうか。

そしてこの描き方は、自分の表現したかったものや、テーマが十分に伝わるようなものだったのか。
そうでなかったなら、次はどんな風に描いたら良いのか。
足りないと思う技術を磨くには、補うにはどうしたら良いのかな。

などなど、ちょっと完成作品を観察するだけでもっと伸ばせる点が見えてきます。

さらには、そこから自分の作品のテーマ・一番表現したいもの・一番伝えたかった事もぼんやり見えてきます。

実は本来これは、出来ればネームの段階で全ての作品に意識的に行いたい作業でもあります。
その見えてきたテーマを強調する・生かすように書くと、作品に一貫性が出ます。

持ち込みなどで編集さんが見抜き、教えてくれたりもする場合もあるかと思いますが、日を開けるなりして客観的に見ると、意外に自分でも分かったりします。

例えば、自分はシリアスなストーリーを描く派だと思っていたけど、過去作品から共通した描きたいテーマ・作家(自分)の強い思いを読み取ってみたら

「モテるやつはみんな爆発しろ」

という闇だった。マジか。ギャグ描いてみようかな?

とかその逆のパターンだったとかもありますので、創作に詰まったら一度手を止めてみて、過去作品を集め、自分の作品の本質やテーマを読み取ると良きです。

そして、これは意外と突き詰めると一貫しています。
例えば、手塚治虫先生はどんな作品でもずっと【命の尊さ(大切さ)】をテーマに描いていると仰っていたようです。

読み取れた自分のテーマから逆算して、それが存分に伝わるような描き方が出来れば、ストーリーに無駄もなくなります。
この辺りは、今後の話作りのコツの続きの中でも、出来ればご説明していきたいと思っています。

最後に描きたいものを探る時に、非常に重要な言葉としてお伝えしたいのは、

どっちの道か迷ったら、ワクワクする方に行け。

です。
最後は野生の勘、インスピレーションです。
どうせ思うよりうまく描けないなら、思いっきり好きなものを詰め込んで、楽しく書きましょう。
これが私の俺の好きなもんじゃあ!何か文句あんのかコラァ!の精神です。

しかし、その好きなものは、他でもない自分がまず誰よりも理解してあげている必要があります。


◆何も思い浮かばない、描けない時。

何も思い浮かばない、描けない、という言葉を時々、見聞きします。
最後に、これについて触れていきたいと思います。

漫画が、
作品に出来るほど強い気持ちを感じるような事柄】や、
自分の中の【自分はこう思うんだ!】という意思を形にして描き、
【人に伝えるもの】。

だとしたら、何も描けない状態は、それが出来ない状況かと思います。

ならば、恐らくこれらは

・伝えたい事がない
・伝えたいと思えない
・何が好きか分からなくなった
・好きなものを他人が面白いと思うと思えない

という状態のどこかに近いのではと思います。

人間不信、疲れ、混乱、失感情、他人の目を優先して意識し過ぎ、睡眠不足、自分の好きなものがよく分かっていない、漫画という媒体限定で伝える必要性を本当は感じていない、脳疲労などが原因かと思われます。

もはや、漫画なんか描いてる場合でも描ける状態でもありません。

何に自分が感動するドキドキワクワクするのか分からない、またはちゃんと理解できていない、出来なくなっている状態で、他人にそれを伝えるのは無理ゲーです。

休むか休むか休むか、遊ぶか遊ぶか遊ぶ。
寝るか寝るか寝る!自分の好きなものを突き詰める。読む読む読む。観る視る見る。
描きたくなるまで好きな事をする。


無感情にならず、何かに感動出来る状態になるまで精神をストレッチまたは休息する必要があります。

それでも描けないなら、始めから目標を見直した方が良いかと思います。

漫画を描かなくても、
ゲームをやり倒して、映画や動画を見倒して、音楽を聴いて、素敵な寝具を買って寝て、キャンプをして、スポーツを見て、踊って、楽器を演奏して、猫や犬やげっ歯類を撫でて、人生幸せならそれで良いのです!

無理に漫画なんぞは描かなくても良ろしい!
そもそも、何かしら幸せになるために漫画を描きたかったはずです。
漫画を描いていたら幸せじゃない時は、描かなくて良いのです。
描いてまた幸せを感じる日が来たら描けば良いのです。

タワマンに住んでいる人こそが、他人より秀でて、頂上に君臨した人こそが勝ち組というのは、た・だ・の・妄・想です。
とてつもない錯誤で、競争社会からの刷り込み、タワマンを建てる人達、頂上に立つ人達が、皆に思っていて欲しい事です。

一番になりたい、高みを目指すしたいという夢はとても素敵な夢です。
しかし、

どんな境遇にあっても、今この瞬間を、毎日を心から幸福に生きている人達こそが、常にこの世で一番の勝ち組で、世界最強なのです。
自分が幸せになれる事をしてください。

何のために漫画を描きたかったのか。
変わっても良いと思います。
ですが、なぜ描きたかったのか。それを忘れないようにしていただきたいです。



漫画の描き方のコツ備忘録【ネーム・プロット編】【話作り】は、このあたりで次回に続きます。
描きたいものの掘り出し方は、以上です。
ネタに悩んだ時にでも使っていただけたら幸いです。

次回からは、より実践的な【お話作り】のお話を予定しておりますので、よろしければお付き合いくださいませ。
ですがちょっと漫画を描きたい気分が強めになってきましたので、noteの更新も隔週以下のペースに戻します…。

最後までお読みいただき、有難うございました。

よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費・コミティアへの参加費用に使わせていただきます!