見出し画像

【コラム】井森美幸伝説−バラドルパラダイス−

バラドルのことばかり考えていた1日だった。

頭の中では井森美幸さんの「瞳の誓い」と「99粒の涙」が鬼リピされていた。
歩いていても、横断歩道で信号待ちしていても、レジに並んでいても、井森美幸さんのことばかり考えている自分がいた。
もう慣れている。こういうことはよくあることなのだ(それもどうかと思うが)
無意識は正直だ。
これは潜在的な説明し難い何かが井森美幸さんについてよーく考えてみろと言っているのだと。
するとパァーッと一斉にバラドルと呼ばれている生ける伝説たちが花開いていく。
なるほど。そういうことだったのか。
無意識が訴えかけている。
今一度バラドルに真剣に向き合えと。


◆毒なき饒舌・井森美幸

ことの発端となった人物。
私の中では榊原郁恵さんと一緒に料理番組に出ていたおっちょこちょい担当の美人なお姉さんという印象が強かった。
小学校から帰ってテレビをつけたら知らないうちに「郁恵・井森のお料理BAN!BAN!」は流れていた。
年数を重ねても料理が上達しないおもしろい人。そんなざっくりとした印象に好感しか抱いていなかった。
もちろん当時は井森美幸さんがアイドルとして歌っていたことも知らなかったし、ましてやホリプロタレントスカウトキャラバンで約12万人の頂点に立ち優勝していたことも当然知ってるわけもなかった。
有名すぎるあのダンス。
井森美幸と検索するとダンスがくっついてくる。
通称「井森ダンス」はあらゆる番組で鉄板ネタとして使用される。
本人も、やーめーてーよーもぉー、と言いつつ老若男女に浸透している井森美幸の代名詞と理解しておられるのでやむなし。ただ使う頻度を調節していかないと飽きられるとまで計算している猛者である。
井森美幸というタレントのポテンシャルは芸能界でも最高位クラスである。
頭の回転もはやくトークはあの黒柳徹子さんにあなたも口が早いわねと言わしめるほどの饒舌。それもただの早口ではなくそれが聞き取れてしまうトーク力の持ち主である。ひと笑いを安定して獲ることが出来る。よって起用する側も安心である。
井森さんが重宝される理由も納得である。
デビュー時のキャッチフレーズ
「井森美幸16歳、まだ誰のものでもありません」をいまだに誰のものでもありませんという有名な自虐ネタを自ら誘導する。
私たちは待ってました!とばかりに予定調和の笑いに浸る。

だが、オーディションというものは全くもってわからないものだ。謎だ。
15歳でホリプロタレントスカウトキャラバンに出場した井森美幸さんは「瞳の誓い」だけあって美しい瞳を輝かせたあどけなくも天真爛漫で愛らしい群馬の少女だった。グランプリに相応しいとも思う。松田聖子さんの「夏の扉」を堂々と大きな声量と力強い歌唱で審査員に披露していた。
音が割れるくらいに。
その映像をはじめて観た私はなんて度胸だ…と、度肝を抜かれた。
審査の基準はわからない。
スター性をプロの審査員が見抜くのだろう。
そのスター性が軌道修正することまではさすがに読めはしないだろうが井森美幸さんはかなりの謎に包まれた同業者からも視聴者からも好かれる一流タレントとして今もかわらず絡み絡まれている。

もし、あの「井森ダンス」がぎこちなくリズムに乗り切れてなくてなんかちょっとおかしい(失礼)ということでよろしくないと落とされていたら…
歴史は変わっていたのだろう。
もう歴史問題レベルである。

丹波哲郎に「霊界に帰っちゃえ」と物怖じせず言い放ったことも岡本太郎の頭を叩いて「うーん、わからない」と悩ませたことも、梅宮辰夫に「まきでお願いね」とNGのダメ出しをしたことも、「上毛かるた」の普及に大きく貢献したことも、お口クチュクチュモンダミンも存在しなかったのだ。(いや、存在はしたか)
それは歴史が大きく変わる。

あのオーディションで井森美幸のタレントとしての才能と未来性を見抜いた審査員の方々に感謝している自分がいる。


◆オールスターを起立させる島崎和歌子

がっはっはっはーーー!

ワッコさん(島崎和歌子)のあの豪快な笑い声は林家パー子のきゃっはーーはぁーはーに対抗できる芸能界で数少ない笑い芸の持ち主である。(芸ではないか)
私がタレント島崎和歌子を認識したのが「オールスター感謝祭」というTBSの番組改編期と重なるタイミングで放送される番宣ありきの自局をあげたクイズ番組の進行アシスタントである。

いつしかワッコさんはメイン司会者と呼べる貫禄とその位置に立っていた。
決して怯まず回答席に飲食物を持ち込んだ大御所にも退場を促すワッコさんはまるでジャンヌダルクだった。

そして井森美幸さんと同様に、ワッコさんも元はアイドル歌手だったことを後から知った。
劇場版のドラえもんのテーマソングも歌っていたことも言われなければ気づかないままだったろう(気づけよ)
ワッコさんは近年大河ドラマや朝ドラで女優としてもその存在感を放っている。
高知出身のワッコさんのネイティブな高知弁(土佐弁)が腰を据えてという言葉にぴったりな新たなワッコ伝説の夜明けを予感させる。


◆元祖工藤静香のものまね使い森口博子

工藤静香はよくものまねされる。
こんな諺があってもおかしくはない(おかしいだろ)
元?ものまね四天王コロッケさんのものまねは子供心にめちゃくちゃ大袈裟すぎてものまねで笑っているというよりその身振り手振りの全てに笑える形態模写、アクションとしての面白さを感じ取っていた。
そんなものまね界で抜群の歌唱力を持ちながらわざと変顔したり程よく崩して笑えるものまねをみせてくれていたのが森口博子、通称ぴろ子だった。
ものまねをする歌の上手い女性というのが私とぴろ子の最初の出会いだった(画面越し)

中学を卒業する頃、はじめて「機動戦士ガンダム」を全話観た。
少し遅いくらいのガンダムデビューだったかもしれない。
つづけてZガンダムに手を付けた。
そこで心奪われた主題歌「水の星へ愛をこめて」を歌っていたのがぴろ子だった。
しかもその歌がデビュー曲と知った時の衝撃たるや。なんて歌の上手いアイドルだろうと。
そこで重なったのがとさかヘアーで肩パッドのボディコンスーツを着たぴろ子が工藤静香のものまねをして歌う「嵐の素顔」だった。

ぴろ子は今益々歌に磨きがかかっている。
ガンダムソングをカバーしたアルバムやアニソン全般をカバーしたアルバムを次々に世に出しぴろ子の聖域(サンクチュアリ)が確固たるものになろうとしている。
アニソンの歌姫として。

「ぴろ子!いきまーす!!」



−井森美幸、アゲイン−

井森美幸、再び…。
どうしても井森美幸さんに引き戻されてしまう。
まだまだバラドルと呼ばれ今も一線で活躍されてる方はいるのに。

私は歌手・井森美幸を評価している(何様だ…)
個人の好みと世間の評価は一致しないのは世の常で私はことさらそういうずれを味わってきた側よりだと自負している(胸張って言うことでもない)
好きだからといって人にオススメするまでは良しとしても押し付けるのはよろしくない。

とはいえデビュー曲「瞳の誓い」と「99粒の涙」は控えめにいってもかなりの良曲でありどこに出しても恥ずかしくないものである。

井森さん自身も覚えがよく歌詞も間違えない、そこまでムラがなく生歌は安定している。声量もある。なにしろ度胸がすごい。
新人アイドルの賞レースでも壇上に上がって代わり映えのしない「嬉しいです」ではなく「あはは。開いた口が塞がらないです」と今まで聞いたことがないような喜びのコメントを返すのだ。
司会者もこれはとんでもない新人が現れたもんだと感嘆(呆気にとられるに近い)の感想を口に出して曲紹介に入る。

井森さんは芸能界にもまれて「井森美幸」になったのではなくもともと「井森美幸」だった(芸名を募集しながらも本名の井森美幸を選んだこととも違う意味で)
これは画面越しでの「井森美幸」考察であり、共演者たちの「井森美幸」観とは違う。
違うがほぼズレはないと推測する。

芸歴は約40年と大御所の域である。
にも関わらず、ずっと昔のままのイジリOKよ♪のスタンスを変えない。本人の意思というより自然とそうなってしまっているといった感じがする。誰もどうすることができない。そこに「井森美幸」が存在する限りそうなることは避けられない。逃れられないといった宿命さえ見え隠れする(大袈裟)

安心して周りの後輩(先輩関わらず)絡んでいける。
多少失言しても井森さんが美味しく調理してくれる。もっと頂戴といったところだ。

デビューからしばらくは刈り上げのショートヘアだった。
冗談で少年隊のかっちゃん(植草克秀)みたいだなと言われていた。
「お料理BAN!BAN!」で観ていた時はもう黒髪ロングヘアーが定着していたし、令和5年現在まで大きく髪型を変えたことがないように思う。ずっと今の「井森美幸」をキープしている。これは和田アキ子さんとも共通している。髪型を変えないことでタレント像を象徴化している。
(もしかするとこれはホリプロの教え…なわけないか)。

野球観戦が好き。プロレス観戦も好き(ビューティ・ペアのファンクラブ会員だった)。競馬新聞も読む。特にスポーツ新聞は毎日欠かさないルーティン。特技は雑誌破り(少年ジャンプの厚さ)。
なんというプロフィールだろう。

ふとある言葉を思い出した。
かつて「徹子の部屋」で黒柳さんが井森さんを興味津々で紹介する時放った「井森語録」という単語。
これは後先考えず大した意図もない見切り発車の井森さんの発言を総じて称した言葉である。
本人にその自覚はない。
その積み重ねは井森伝説となった。

バラドルという言葉自体あまり聞かなくなったのは正統派アイドルもタレントも線引が曖昧になったからだろう。みんなある程度タレントと呼ばれる人は作った天然キャラだろうがそれなりにバラエティ番組で通用する基礎体力は有している。

バラドルの不在。バラドルの概念の風化。
バラドルとしてアイドルの美貌を兼ね備え渡り歩いてきた井森美幸さん。
井森美幸さんは数年後も数十年後もきっと安泰だ。根拠はない。タレント力というより人間としての生きる力(生命力)がそう思わせるのかもしれない。


バラドルに向き合ってみたがそこになんの意味を見出したのだろうか…

正直ない。

ただ、井森美幸という稀有なタレントの計り知れない魅力に打ちのめされたことは確かだ。

井森美幸はこれからも永遠に誰のものでもないがみんなのものなのかもしれない。(ものって…)



頼まれもしてないが書きたい気持ちが抑えられず井森さんの新曲を勝手に作詞してみました。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?