【エッセイ】詩集「家路」完売
拙詩集「家路」が完売した。
2020年6月23日に発行した「家路」はコロナ禍に入る直前の2019年末頃から具体的に形にする為の準備が始まった。
今振り返ると「家路」製作が私の詩人としての分岐点となった。
私はその頃スマホすら持っていなかった。
製作の過程でコロナが対岸の火事ではなくなってきたことから話し合いの場も満足にもてなくなり、当初考えていた完成日がどんどん延びていった。
取り残されていく焦りと不便さを肌身に感じた。スマホにしたのもコロナがきっかけだったのだ。
だが、それが私の運命を変えた。
無事「家路」が誕生して東京の七月堂さんで委託販売していただける運びとなったのもスマホに変えなければ実現しなかったことである。
沢山の方にお世話になった。
そこに至るまでも、その後も、人との繋がりがあってなんとか50冊、手元からはなれていった。
たった50冊と思われる方もおられるだろう。
だが、無名の詩書きの私家本に貴重な時間とお金を費やすのだ。
それがどれだけ厚い壁か…。
ご理解いただけると思う。
3年…。
3年かけて50冊(その内1冊は記念に自分用)を完売することが出来ました。
間に入ってくださった七月堂さんには感謝しかありません。
そして、七月堂さんでお求めくださった方々に心より御礼を申し上げます。
「本当に、本当に、ありがとうございました!」
「家路」には色々な想いが詰まっている。
その想いの中で完売した今だから私はひとつ気付けたことがある。
それは言葉にしてこなかった想いだった。
「家路」は挽歌だった。
音符のない文字の楽譜であったのかもしれない。時に憤りや悲しみ、怨み、理不尽、やり場のない怒りや苦しみを嘆き打ちのめされ、それでも信じたくて希望を託し、夢をみて、生きたいと叫ぶ。それらをすべて1冊に詰め込んだのが「家路」だった。
完売した今、生まれて初めて開けた景色がある。
こんな経験はこれが最初で最後。
人生で初めての完売経験はこの「家路」なのだから。
そして今は「家路」完売記念企画…なんて出来たらいいなとひとりではしゃいでいるのであった。
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