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米国博士課程のドロップアウト率

Chronicle of Higher Educationによると,分野によりますが、驚くべきことに米国の博士課程学生のドロップアウト率は50%にも上るそうです。プログラムが個別性に富んでいるため、一概には言えませんが、STEM(Science, Technology, Engineering and Mathの略)の分野では主な理由として以下の要素が挙げられています:

  • 資金難

  • 精神的な問題

  • メンターとの相性の不一致

  • 別の仕事のオファー

アカデミアでの給与はどの国でも一般的な職業よりも低い傾向があります。それにもかかわらず、研究助成金への競争は年々激しくなっており、著名な学術雑誌における論文の採択率も低下しています。「Publish or perish(発表せよ、さもなくば消え去れ)」という世界では、上司からのプレッシャーも避けられません。自分の努力に対する適切な成果が得られないと感じ、悲観的になる人も多いと思われます。さらに、卒業後もアカデミアに留まりたい人にとって、大学の教員としてのポジションを得るのが難しくなっています。多くの人が数年間、低給のポスドクを経験しなければならない状況が続いています。

博士課程の学生は、一般の人々に比べて6倍もうつ病や不安症状を経験しやすいと言われています。ラボでのハードな作業をこなしつつ、多くの授業の予習・復習やテスト対策も並行して行わなければなりません。成績が低下すると、指導教官からの評価が下がり、また学内のグラントやフェローシップへの応募も難しくなるというプレッシャーがあります。

メンターとの相性の不一致も重要な要素です。指導方法や性格の違いによる摩擦は、とても厳しい問題になることがあります。米国の主任研究員(PI)は基本的に管理職的な役割を果たし、具体的な研究方法にはあまり関与しないことが多いです。そのため、PIと面談してもプロジェクトが進行しないことがしばしばあります。一方で、他のラボメンバーも忙しく、一つ一つ教えてくれることはあまり期待できません。基本的には自己学習が求められ、自己主導で結果を出す姿勢が必要です。ただし、成果発表の際には、ラボメンバーから厳しい指摘を受けることが多いです。一歩進んで一歩下がる、という感じでしょうか。

しかしながら、全てが負の面ばかりではありません。より直接的に社会に貢献する道を選び、あるいはより高給の仕事のオファーを受けてプログラムを辞める人もいます。私もたまに臨床医に戻りたくなります。

これから米国の博士課程に進学する方々への私からのアドバイスは

  • 渡米前にできる限り貯金をしておくこと

  • 資金のバックアッププランを持っておくこと

  • 日本の研究フィールドを渡米後も大切にすること

  • 家族を一緒に渡米させること

  • 運動する習慣を持つこと

  • 疲れたらたっぷり寝ること

です.

特に渡米してからは、定期的な運動や家族とのかかわりの大切さを実感しました。メンタルを整えるためにも重要です。また、私は、日本の研究を軽視する研究者には未来はないと思っています。困ったときに助けてくれるのは、日本にいる研究者であることが多く、さらに渡米後も共同研究を続けておくと、大学外での自分の居場所にもなりますし、自分の業績も増えます。ただし、Conflict of commitment(ラボワークをおろそかにしてしまう)にならない程度にしましょう(笑)。

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