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合唱団に入っていた頃の話

  大学に入学した頃、どこの大学でも見られるように、連日キャンパス内のあちこちでサークル・部活勧誘が行われていた。あからさまに新歓コンパやBBQというエサで新入生を釣ろうとする先輩、ご飯代を節約するために猫をかぶって釣られる新入生。少し異様だったが、新歓に参加するのが楽しく、興味本位でいろいろ見学した。

  最終的には、複数のサークルに入り、そのうちの1つが合唱団だった。入団を決めたのは、何度も新歓練習に参加したから、そして元々中学や高校の時に合唱が好きだったからだ。


  合唱団に入って最初に気付いたのは、合唱部のある高校もあるということだった。私の高校には合唱部がなかったので、合唱経験者というのはちょっと不思議な感じがした。経験者はそれなりにいたが、初心者も多くいたので、その点は心配なかった。
  歌うのが好きなので、練習は普通に楽しかった。それに、音楽・音感の天才かと思った先輩に、初心者にしては上手い方だと言われたので、俄然やる気になった。


  ただ、入団して約1ヶ月半後、案の定問題が生じ始めた。これは入団をなかなか決断できなかった理由でもあるのだが、もう1つのサークルと明らかに活動時間が重なっていることだった。もう1つのサークル(以下「サークルA」とする)は活動が週1であり、学部の勉強に役立つものだったため、その日はなるべくこちらを優先したいと思っていた。合唱団の練習は週2日だが、その1日をサークルAにあてれば、当然合唱の練習は週1となる。そして、練習できない分は参加できる日に挽回しようとしていた。最初は仕方がないと思った。しかし、やはり半分しか練習に参加出来ないため、次第に開いていく差に焦りが生じていた。

  他方で合唱団の方では、6月には合唱祭、7月にはイベントが予定されていたため、合唱団の練習を優先した時もあった。ただ、当然週1しかないサークルAの活動には参加できず、モヤモヤしていた。

  そして、一番最初の転機だったのかもしれない。久しぶりに(思えただけかも)サークルAの活動に参加できた時、自分の居場所だと強く感じた。


  また、あちこちに手を出していた私は、これらの活動と同時に早くもインターンシップに参加する準備をしていた。

  6月末か、7月入った頃だったか、合唱団の方では約1週間の夏合宿の話が出ていた。たいていの人は参加するようだったが、非常に悩んでいた。まず、夏休みにまとめて1週間も空けられなかった。先程も言ったインターンシップが問題だったのだが、そのインターンシップに100時間という参加時間のノルマが課せられていた。こんなのアホらしいと思って辞めかけていたが、結局訳あって参加することにした。加えて、7月末頃からバイトを始め、8月からは自動車学校に通うことが決まっていた。
  また、1週間とはいえ合宿費用がかなり高かった。奨学金に頼っている上に、バイトでお金稼ぎまくろうというタイプではなかったので、正直そんなの払えないって思った。

  

  夏休みに入り、サークルAの活動だけは参加しつつ、ほぼ毎日インターンか自動車学校かバイトの生活だった。結局、夏合宿には参加せず、夏休み中の通常練習に参加したのも、たった1日だっただろうか。


  ここまで来ると、誰だってサークル活動を考え直すのではないだろうか。そして、大学1年の7月〜9月にかけて、ひたすら自らの将来を考えるようになっていた。先程「訳あって」インターンに参加すると言ったが、このインターンは公務員に関わるもので、深く考えもせず公務員を志望していた私にとって、本当に公務員になりたいのか考えるチャンスだった。

  そして、ほとんど合唱団の練習に参加できないまま9月に入った頃、「私は4年間合唱をやりたいのか」という問いが生じた。
  この9月は決断が多かった。9月末まで続いたインターンを通じて、公務員志望を辞めた。また、以前も話題に出したが、秋学期から留学のための研修予定が決まった。そして、合唱団に退団届を出した。

  本当は団長と話してひとまず「休団」という形をとることにしていた。しかし、先程の問に対して、私には大学4年間を通して他にやりたいことが思い浮かんだ。届け出るために赴いた当日に決めたことだった。在籍期間、たったの4ヶ月少し。


  ひたすら興味を持ったことに手を出してみるのは良い経験になる。一定の軸が定まっていないなら、その中に自分の軸があるかもしれない。また、手を広げれば広げるほど、自分のキャパシティの限界を知ることになり、自分は何をしたいのか、自分なりの軸が見えてくる。


  こんなこと改めて話す機会はおそらく無いだろうな。

  退団時に決めた自らの方向性は3年経った今もブレていない。だから、退団の決断は間違いではなかったと信じたい。ただ、それでも合唱が好きなのは変わりない。そして、今でも覚えてたり普通に話してくれる元同期の友達がいる。留学の時に空港まで見送りに来てくれた先輩もいる。本当にありがたいことだと思う。


  ここまで読んでいただきありがとうございました。 ※写真は合唱の練習帰りに食べた思い出のメロンパン

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