見出し画像

connecting the dots

「一体、どこを目指してるんですかー?」

2022の夏、私は人生初の北海道旅行がコロナがらみでキャンセルになり、空いた週末、家にいても悔しくて落ち着かず、炎天下、謎の「家から職場30kラン」を敢行。といっても、走ったり歩いたりコンビニ寄ったり、座って休まない以外のしばりなしの5時間。辿り着くものなんだなーと。そして、目的地に着いたものの、ドヤりたかった相手は昼休みでランチにでていて、何時に戻るか分からないと言われる次第。拍子抜けのまま、駅に向かう。そう、帰りは電車だ(走った後そのままの格好で電車に乗るのは平気になりました。汗臭かったらすみません。肩塩吹いてたらすみません)。

と思えば、むこうから頭をふりふり歩いてくる見覚えのあるシルエット。ラーメン屋から飲み物を買うスーパーまでの数十メートル、あなたの人生のピンポイントな数分にすれ違うことができた。ドラマチックぅ。後から、その話をすると「よくわかりましたよねー」といつも言うけどさ。でも特に話すこともなくて、建物の陰で立ち尽くす。ポツリポツリと話をして、でもそろそろ戻りますとも言い出さないから、その沈黙を楽しむ。高校生みたい。

一体、どこを目指してるんですか……?私の謎の行動に、うっかり突っ込んだのは君だ。それで、私はなんで自分が走ってるのか、改めて考えたんだよ。何しに来たんですか?と聞かれていたら、今の私はいなかった。無意識かもしれないけれど、そこはあなたのいいところだ。患者さんの話をきく時、ただ向き合うんじゃなくて、一緒にどうなりたいか並んで同じ方向をみながら、考える。だから、ファンが多いのだと思う。私も、そうありたい。日頃から。

数日後、私が見出した答えは、「昨日の私より、今日の私」だった。beat yesterdayだ。大人になるとね、だれも褒めてくれないし、成長を感じることって、なかなかない。バリキャリなら別なのかな。だから、人はTOEICとかにハマるんだと思う。英語がほんとに必要なら、TOEICの勉強してる暇なんてない。ゲームやってるより、ちょっと賢そうで、もしかして、役に立つ。でも、ゲームもやりこんでれば、だれかとの会話の役に立つかもしれないし、なんでも本気なら意味がある。

"connecting the dots" というフレーズに聞き覚えのある人は多いだろう。スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学の卒業式のスピーチの第2章だ。みんな、先を見据えたがるけど、まずは今やっていることに集中すること。それが何かの役に立つかとか考えても、その時には分からないんだよ。でも、一所懸命やっておけば、後から振り返った時に、ふと活かし方に出会う。どの点とどの点が繋がるかなんて、後からじゃないとわからないんだ。だから、今やると決めたこと(そもそも、彼は興味があることだけをやれ、とも言っている)は一所懸命にやるんだよ、と。

それはジョブズにとっては、カリグラフィだった。PCが美しいフォントを使うようになったのは、マックのおかげだと。そしてそれは、自分が大学時代にカリグラフィに没頭した賜物だと。Yes, we've loved it.

私も、何かの役に立つと思って走っていたわけじゃなかった。多少健康的かという思いはあったけれど、健康診断の結果で、具体的に改善したい数値があったわけでもなく。たまたま、ちゃんと走るようになったら、楽しくなってきて、楽しんで走ってたから、コーチもやりがいを感じてくれていたと思う。挙句故障して、お世話になった接骨院で出会ったトレーナーに言われたひとことで、私の目の前の景色はクリアになった。

おそらく、何かの役に立つから走っていたのだとしたら、そんなに続かなかった。目的がないからこそ、純粋にタイムやVdotO2maxがよくなるのを楽しめたのだと思う。痩せたいとか、コーチにほめられたいとか、そういうことだと、限界がある。対価を求めると、走らない私には価値がないのか、とかそういう話になりかねない。何も求めないからこそ、ラン愛好家同士、走りろうかなーって思ってたのに結局起きれなくて走れなかった、といって笑いあえるのだ。走ると、アドレナリンでちゃうから、沼る。ランニングハイはまだ経験してないけど、マジで、やばいから気をつけて。私みたいに、老後を生きていた45歳が、我に返っちゃうんだから。

ここまできて(大学院に進学して、めちゃくちゃ大変だった1年前期が終わり)、ふと振り返って、動機として語り続けてきているにもかかわらず、あらためてうまくつながったものだと感心するのだった。スポーツ栄養学という枠で進学したけれど、研究テーマは、これまで10年間関わってきた高齢者×運動。10年間は長い。思うところは、深い。そこに、ふと降ってきたスポーツが栄養学と絡んだ。「高齢者×運動×栄養学=健康寿命の延伸」は、医学部と体育学部から発展した本学では、超ホットなテーマなのだった。

何か、私の人生に役に立つと思ってやってみた、ケアマネやTOEICなんかより、あっという間に、私の人生にアクセスポイントを見出したランニングだった。私たちが考えるより、人生は複雑で、奇なり、面白い。

今、たまたま流れている私のプレイリストのBTSのONをみて、閃いた。アイドル like LDH(だってアスリートだ。細マッチョ、が好みかな。今、やってみるかと言ってもらえているのは、高校サッカー部の栄養サポートだけれど、アーティストの栄養サポートも楽しそう。

おあともよろしいようで。おやすみなさい!




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?