人間観察力、カンスト【『桐島、部活やめるってよ』ブックレビュー】
Q. なぜこの本を読んだ?
A. もともと自分は『世にも奇妙な物語』が好き→『桐島、部活やめるってよ』で有名な朝井リョウによる『世にも奇妙な君物語』っていうのがあるんだ!読んでみよう!→面白かった、せっかくだし有名な『桐島』も読もう、として買う。
基本情報
タイトル:桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)
著者:朝井リョウ
出版社:集英社
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以下、ネタバレ注意
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感想
おそらく誰もが思うことだろうが、桐島は直接出てこないんやな、という。
群像劇っていうジャンルを初めて知ったかもしれない。ここまで多数の視点で高校生活を鋭く書けるのすごい。人間観察好きなんだろうなあ。この後同じ作者による『何者』も読んだが、やはり作者の人間観察能力はカンストしている(ステータスがMAXである)と感じた。
自分の高校は、小説に出てくる高校よりも進学校よりだったので「これは多分うちではないな」と感じる事象もあった。とはいえ、「あの高校に進学した友達には的確に当てはまりそう」と思わされた。
良かった点:
やっぱり、前田涼也と菊池宏樹の交わり方が大変良い。互いに意識してないふりして意識している、自分にないものを羨ましいと思う気持ち。大人になりきれなくて、どこか欠乏するばかりで満たされない思春期の心。
だけど、そのレンズを覗く映画部のふたりの横顔は、
ひかりだった。
ひかりそのもののようだった。
青春のエネルギーの輝きが見える。この表現は心に強く刺さる。
そう、高校生は誰しも、何もかも満ち足りているように見える人も、何も考えずに楽しんでいるように見える人も、他の人にあって自分はないものを、今の自分に足りないものを意識して、欠乏を感じている。でも、やりたいことに没頭して、欠乏なんて忘れてしまうほどに熱中しているときの姿は、この上なく輝いている。
あえて微妙だった点をあげるなら、宮部実果の話は少々わざとらしさ・ないない度合いが高いと感じた。他の話よりもリアルさが薄いような気がした。
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最後まで読んでいただきありがとうございます!
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