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笹井宏之賞応募作「透明な傷あと」
「透明な傷あと」
気づいたら知らない場所に着いていた 短歌ってほらそういうとこがある
毎朝の間違いさがし ひとつでも合わないピースは脱ぎ捨てるあそび
靴下を引っぱって履くなにもかも正しい形にしなくちゃいけない
枯葉色に髪を染めてるあの子から別れ話をきく新学期
唇が重なるくらい構わない言葉でさわる魂の丸み
単縦な脳みそである やめるって言っても続く関係だった
離れても離れられない人でし
ヒーローとヒロイン、私
「ヒーローとヒロイン、私」月一で京都に通う 京阪に乗れば始まるプロローグは
十五分遅れてヒーロー参上し本を閉じれば劇が始まる
ヒーローは優柔不断パフェ一つ選べないままおやつの時間
二番目でいいから私、続かないセリフの前に笑いあってる
ヒロインは怒った顔も美しい空気も光もひざまづかせる
微笑んで貰ってくれたヒロインの手の甲にいる毛糸の子猫
振り向けば二人がいない舞台上 照明係は仕事をやめ