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連作

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連作 親友なんです

連作 親友なんです

今から三年前に発表した連作を見つけたので、載せようと思います。2017年の大阪文フリで配布した関大短歌のフリーペーパーに載せた連作です。その時に載せた自己紹介も載せました。海遊館に行きたい。

親友なんです見覚えのある背中に体当たり 友達以上恋人未満

知ってるけど夏の思い出聞いておく 吐息がかかる電車の中で

チケットをなれた手つきで買ってきて今日だけ「ツレ」の称号を得る

シーラカンス 

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春と夏の子

春と夏の子

相席短歌に載せていただいた連作です。

「春と夏の子」

すれ違う人を桜と呼んでいて君を欅と呼んでいる日々

手のひらをくすぐるような冷風で夏の便りを受け取りました

チョコモナカジャンボを食べる早朝に給油している軽トラック

大雨が奏でる音に立ちどまる鍵盤がわりの傘は小さい

まるまるとまどろむ猫がいる日陰駐車できない5番の車 #tanka #短歌

海の足跡

海の足跡

心臓を持たないものが支配する夜から朝へ移りゆく時間

布団からでたら覚めちゃう夢だから匂いも熱も今はわたしの

味噌汁の湯気がくすぐる 美味しい、と食べる前から伝わるサイン

古びてる学生ローンの看板を見つめる人を追い越す群れよ

夢ばかり見ていた人が今もまだ夢を語って画面にでてる

押し寄せる波、波、波の砂浜に打ち上げられない思い出があり

ゆらゆらと雲の形は変わるから空を見上げて歩いてしまう

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笹井宏之賞応募作「透明な傷あと」

笹井宏之賞応募作「透明な傷あと」

「透明な傷あと」

気づいたら知らない場所に着いていた 短歌ってほらそういうとこがある

毎朝の間違いさがし ひとつでも合わないピースは脱ぎ捨てるあそび

靴下を引っぱって履くなにもかも正しい形にしなくちゃいけない

枯葉色に髪を染めてるあの子から別れ話をきく新学期

唇が重なるくらい構わない言葉でさわる魂の丸み

単縦な脳みそである やめるって言っても続く関係だった

離れても離れられない人でし

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ヒーローとヒロイン、私

ヒーローとヒロイン、私

「ヒーローとヒロイン、私」月一で京都に通う 京阪に乗れば始まるプロローグは

十五分遅れてヒーロー参上し本を閉じれば劇が始まる

ヒーローは優柔不断パフェ一つ選べないままおやつの時間

二番目でいいから私、続かないセリフの前に笑いあってる

ヒロインは怒った顔も美しい空気も光もひざまづかせる

微笑んで貰ってくれたヒロインの手の甲にいる毛糸の子猫

振り向けば二人がいない舞台上 照明係は仕事をやめ

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連作 ゆきちゃんへ

連作 ゆきちゃんへ

トラだって泣きたい時もあるのだと鳴いていた夜に白い流星

水滴で光るからだを見せられて甘えるなって言われたような

昨晩と変わらない道 流星が通った跡を探してみる

点滅する灯を頼りに帰る日にあくびをしている元・お星さま

鋭さを含んだ瞳とぶつかって譲ってしまうからあげ一個

銀杏の実を踏んでいく いぶかしい顔がよぎって履き替える靴

「昨日とはまた違う子よ」恋人を見せつけられる振られっぱなし

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憂鬱がタップダンス

憂鬱がタップダンス

2017年6月まで、Twitterで詠んだ短歌のまとめです

指先が触れたガラスは泣いていた空気に溶けた悲しみが雨に

しゃべれども君は聞かない悲しみで顔が溶けてく印象派の絵

君にいつどこでお土産渡そうか袋のシワが語る恋心

君の背を見つけられない水曜は憂鬱がタップダンスをする

やわらかな世界に僕は勝てなくて腰まで浸かり骨がとけそう

百五十グラムで胸が騒がしい笑みが止まらぬ単行本よ

また今

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セブンティーン

セブンティーン

ピュアハート持ってる君と飲むビール 年上だったね僕よりすこし

レンズ越しはっきり見えるこの世界外して君の輪郭を見る

剃刀で無駄を落とそう 恋心、友情なんかは少し残して

あの時に選んだものを身につけた確信犯に心奪われ

リップ音聞こえて口を見てしまうその色に染まりたい夏の夜

ユニコーンまたがる君を追いかけて優しい世界に溶けておちる

昨夜から続く気まずさ流す雨 僕の妄想も流してお

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ブルーに染める

ブルーに染める

左手は右手のおまけじゃなかった君の肌に触れるための道具

ベロニカの野に生まれしまっすぐな君の背中に恋い焦がれる

輝きを眩しく思うその瞳 僕を惑わすブルーオパール

鉛筆が誘導をする「恋愛」を 名もない想いを紙にぶつけて

そっけない態度の意味を知りたくて君んちに化けて出たい夜中

雨粒が僕の中までしみ込んで血液までもブルーに染める

黒縁の眼鏡好きなの?質問に分からないけど君もそうだね