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【短編】 秘密クラブ

 秘密クラブに入るためには、自分の秘密を告白しなければならない。
「このクラブは、学校の部活動として正式に認められた活動です。あなたの秘密は部員に共有されますが、外部に漏れることは決してありません」
 私は、そんなことが書かれた秘密クラブのチラシを手にしながら、旧校舎の片隅にある古びた部室のドアを叩いた。
 すると、いきなりドアが開いて、頭から血を流している美しい男子生徒が現れた。
「今、戦争中なんだけど、入部希望の女の子?」
 私は、反射的にドアを閉めようとしたが、その瞬間に爆発音がしてドアごと吹き飛ばされた。
 目を覚ますと、私はヨーロッパの古いお屋敷のような、やたらと装飾が多い部屋の中にいた。
 ここはどこですかと質問すると、秘密クラブの部室さと、頭に包帯を巻いた男子生徒は答えた
「驚かせちゃってごめんね。君が来て、部室内の戦争はとりあえす停止したから」
 
 次の日、私が学校から帰ろうとすると、二人の美しい男子生徒に両腕を掴まれて、昨日さんざんな目にあった旧校舎の部室へ連れて行かれた。
 部室のドアが開くと、昨日と同じヨーロッパ風の部屋が現れ、美しい男子生徒と女子生徒が左右に分かれて並んでいた。
「ようこそ、秘密クラブへ!」
 長い髪が綺麗な女子生徒が前に出てきて、わたしが部長ですと言って私と握手をした。
「われわれ秘密クラブの部員は、あなたの入部を歓迎します。さあ、この入部届にサインを」
 いや、昨日は軽い気持ちで見学に来ただけで、自分は、あなたたちみたいに全然美しくないし、戦争もちょっと……。
「秘密クラブは秘密を共有することが目的ですし、あなたは十分に可愛いじゃありませんか。でも、何を秘密とするかの基準をめぐって、昨日のような戦争が起こってしまうこともあるのよ」
 じゃあ、私の秘密もダメな場合があると?
「いえ、どんな秘密でも、その人にとっての秘密は、最大限に尊重されるべきです」
 入部するかどうかは別にして、秘密を守ってくれるなら私、話をします。
「ええ、聞きましょう」
 私の秘密は、お父さんが宇宙人だということです。
「えっ」
 私には物体を動かしたり、破壊したりする宇宙人の能力があって、小さい頃、母の故郷にある山を消滅させたことがあります。
「ま、まあ、それも秘密と言えば秘密ですが、あなたは超能力クラブのほうが……」
「きっと彼女は、超能力を使いたくないから秘密クラブのドアを叩いたのですよ、部長」

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