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【短編】 Aの生徒と、Bの生徒

 この学校では、入学すると二種類の生徒に分けられます。
 私はBの生徒で、親友のトモカはAの生徒に分けられましたが、クラスは同じだったのでとりあえず安心しました。
 
 入学した次の日、朝の教室でトモカとお喋りをしていたら、担任教師がやってきてホームルームが始まりました。
「みなさん、おはようございます。えー突然なのですが、入学のときにBに分けられた生徒は、制服を体育用のジャージに着替えて下さい。Aの生徒はそのままで構いません。Bの女子生徒は保健室や更衣室で着替えてOKです。とにかく十分以内にお願いします」
 私は意味が分からないまま、Bの女子生徒と一緒に更衣室を探して、何とかジャージに着替えて教室に戻ったら、国語の授業がすでに始まっていました。
「注文の多い料理店は、近代における人間の欲望を皮肉った寓話です。注文が多いのは近代のシステムのほうであり、われわれ庶民はそのシステムの欲望に翻弄され……」
 授業の内容は難しすぎて理解できませんでしたが、とりあえずジャージに着替えて授業を受けられたのでセーフです。
 
 次の日、制服で学校へ行くと、やっぱりジャージに着替えろと言われるので、私はそれ以降ジャージを着て登校することにしました。
 親友のトモカは、私と一緒に登校したり、気楽に話したりしていたのに、だんだんAの生徒と仲良くなって、私とは距離を置くようになりました。
 
 私はもやもやした気持ちが溢れてきて、ある日、担任教師にAとBの違いは何ですかと質問しました。
「知らないほうがいいと思うが、Aの生徒は、成績が優秀な生徒か、もしくは親が十分な資産を持っている生徒だ。あなたはそのどちらでもないからBの生徒と認定されたわけです」
 確かに、トモカの家はすごく立派で、私の家は母子家庭のアパート暮らしで。
「つまり、住む世界が違うのです」
 
 私はクラクラする頭を抱えながら、下校するトモカの腕をを掴んで、担任教師の話を聞かせました。
「知ってる。でも今一緒にいるのはまずいから、今夜八時に公園で会いましょ」
 
 夜八時に公園へ行くと、トモカが木に縛られ、その傍らに黒服の男が立っていて、刃物をトモカの首にあてています。
「フハハ、少しでも動いたら……」
 私は深呼吸したあと、千分の一秒で魔法少女に変身して黒服の男を吹き飛ばしました。
「あのわたし、できるだけ平和的にジャージ問題を解決したかったのだけど……」
 ご、ごめんなさい。

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