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家では甘える犬系男子の元ヤン

「ふっざけんじゃねーよ!!二度と俺に近寄るな...!!」

路地裏で見知らぬ不良に絡まれた。
俺は先月、いわゆる暴走族の集団から足を洗った。
とはいえ、見た目の怖さが抜けていないせいか、時々絡んでくる輩がいる。

「クッソぉ、こんなはずじゃねーのにな...」

元々ケンカで負けたことは無かった。
多少の怪我をすることにも慣れている。

別にそれ自体は何も困らない。
だが...
イライラしながら俺は、家に帰った。

小さなアパートの2階に俺たちの部屋はある。
そう、俺「たち」の部屋だ。

俺がドアを開けると「おかえり」と優しい声が聞こえる。
…彼女だ。

俺より3つ年上の彼女は、優しく暖かく俺を包んでくれる。
俺の命を救ってくれた、大事な人だ。

俺が暴走族から足を洗ったのも、彼女のためだった。
優しく純粋無垢な彼女は、俺の怪我を見るなり心配そうな表情をする。

「あ、これは...その...また絡まれちゃってさ。気にするなよ」

彼女はそれ以上、何も聞かなかった。
ただ、優しく俺を抱きしめてくれた。

俺は彼女の柔らかい感触と、優しさに包まれる。
さっきまでのイライラした感情が、すーっと溶けていく。

「ごめん、いつも心配かけて。」

彼女は笑顔で、俺の髪を撫でる。
こうして彼女に包まれていると、今まで散々暴れてきた人生を後悔する。

人を傷つけてしまったこともあった。
自分の生い立ちを責め、親を憎んだこともあった。

でも...今はその全てがどうでも良い...。

こうしてずっと彼女の優しさに包まれていたい。
彼女を守れる存在でありたい。

俺がこんな風に考えるようになるなんて、数年前までは思ってもみなかった。

「...愛してるよ」

そう言うと、彼女は嬉しそうな表情を見せてくれる。
この笑顔のために、俺はまた、日々を頑張れる。

せっかく用意してくれた夕飯が冷めるのは悪い気がしたが、
俺は我慢できずに、彼女をお姫様抱っこでベッドに運んだ。

「...愛してる」もう一度そう言うと、彼女の柔らかい唇に、夢中でキスをした。

あたたかくて柔らかな肌に、今日も俺は、飲み込まれていくのだった...。


ナレーションありがとうございます!

ナレーション 厚崎ゆうま様
https://twitter.com/yuma_atsusaki


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