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天国に後悔はあるか【短編小説#35】

地獄はやったことの後悔が充満していて、天国はやらなかったことの後悔が充満しているらしい。

せっかくなので、天国に行き、直撃取材をしてみることにした。

「あのーすいません。あなたは自らの私財を投じて学校を建てたり、給食を手配したりと、教育者として多くの児童に笑顔を届けた功績で、天国に送られたと伺いました。ちなみに生前の後悔はありますか?」

「そりゃありますよーー。自分の時間がほとんど取れなかったですから。世界遺産巡りとかしたかったですし、常夏のビーチでぼーっと日焼けをしながら読書をして過ごしたり、妻と登山なんかを趣味にしたかったですね〜。まぁでもこれは仕方ないですね!その分有意義な人生でしたから!」

清々しく、やらなかった後悔をしていた。では地獄に行き直撃取材をしてみる。

「あのーすいません。あなたは生前に大切な友達との約束を何度も破り信用を失った挙句、自ら命を絶ったので地獄に送られたと伺いました。ちなみに生前の後悔はありますか?」

「どうして俺はあんなに大切な人を裏切ってしまったんだろう。どうして何度も何度も人に嘘をついてしまったんだろうと後悔しています。後悔しても後悔仕切れません。情けない限りです。はぁ、情けない。え、これからまた天国に戻られるんですか?私も実は一回行ったことあるんですよ。ここだけの話、私も一緒についていっても良いと言われているので、よければ一緒にこそっと連れていってくれませんか?いやいや本当ですよ?」

検証の結果、天国はやらなかったことを清々しく後悔していたが、地獄はやってしまったことを後悔してるように見えて後悔していなかった。

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