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結局のところ…

トランプ大統領がスペクタクルに勝利したとはどういう意味なのか、改めて考えてみる。

先進国であなたは大手メディアの情報を信じますかと聞いたら、信じる人の割合はだいたい20%から多くても40%くらいの間に収まるだろう。過半数はかなり前からメディアを信じていない。
安倍総理退任時の内閣支持率が80%近かったように、メディアがどれほどこき下ろしても、それはそれとしながら人々は各自で判断を下している。

しかし大手メディアはそれとは別に公式見解の提供者としての機能を持っている。例えばあなたがビジネスで初対面の人と出会った時に、その人がメディアと同じ意見を持っていたら、「分かってないなぁ」とは思うかもしれないが、変なやつだといって距離を置くまでのことはしないだろう。常識人の範疇に入れてもらえる。
これはいわば「通貨発行権」のようなもので、情報の真偽ではなく、相互に交換可能な情報を提供しているのである。
一方今回の選挙でトランプ派が見ていたと思われる世界は、仮想通貨のブロックチェーンのように集団で真偽が認証されていく世界である。ここには奇妙な自由の感覚があり、現に仮想通貨信奉者はこれこそが価値の未来の形でありフィアット(国家発行通貨)自体が時代遅れになると主張する。
しかしこれは簡単なことではない。かくゆう私自身ビットコインのトレードは振り幅が大きいギャンブル感覚で楽しんだが、使用する通貨としては圧倒的に「円」の方が好きである。

多くの人が公式の通貨と同様に、「とりあえず」基準にできる公式の情報を強く求め、それがより正確なものであることを願っているのだが、例え今後不偏不党で人気を博するメディアが現れたとしても、それを信じる人が増えればそれに応じて誘導に利用されることはまず間違いないので、そうなればまた人々はブロックチェーン型の情報で対抗するというイタチごっこが予想される。
現にビットコインがそのように使用されているではないか。ビットコインの主たる用途は、投機を除けば、ゴールドのように国家基軸通貨からの退避か、あとは表に出しにくい取り引きに使用されるかであろう。

トランプ型の情報はまさに、大手メディアが信じられない場合の退避と、表に出しにくい、普段なら表立っては議論されない陰謀論を思う存分に語れるという機能を持っていた。
トランプ大統領がしたことの主眼は、一見馬鹿馬鹿しい主張を繰り出すことで取りすました権力構造の真の馬鹿馬鹿しさを引きずり出し、権力やメディアが再び「真実」と名付けたがっているものが気取った素振りを見せることを困難たらしめたことにあるだろう。
脂汗で髪染めが流れ落ち、公聴会でおならをしたとまで言われているジュリアーニの姿こそが権力を映し出し、それは権力の戯画ではなく権力そのものの姿だった。
みっともない?どうかな、僕はある意味美しいとすら思うけど。

スペクタクル派は「トランプ的な何か」を恐れ、トランプ派は「今はまだ陰謀論でしか語れない何か」に不信の目を向けて、お互いのことを「悪魔」と呼び合っている。「悪魔」の基本戦略が存在しないものを「在る」ように見せかけることだということを思えば、まったくもって正当な話だと言わざるを得ない。

「ほらね、結局悪魔との戦いになったでしょ」、そう言って神様がニヤついているかのようだ。


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