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アドベントツリーをつくる


#私の作品紹介

まだ夏の暑さが残る、9月。

デパートやネットショップに目を向けると、お盆を過ぎた頃から冬物ばかりが並んでいる。
雑貨店には、紫やオレンジと黒がふんだんに使われている、ハロウィン仕様の雑貨が並んでいる。

ふと、私の作品ラインナップにも、明確な「季節もの」が欲しいなと思った。

かといって、直近のイベント「ハロウィン」には馴染みが無いうえ、”ハロウィン三原色”を、自分の作品に昇華する自信がない。

ならば、目指すべき場所はただひとつ。

「クリスマス」

そういえば、幼い頃、輸入雑貨を扱う会社に勤務していた叔父が、「アドベントツリー」なるものをプレゼントしてくれた。

それはそれは、かわいらしく、はじめて観た ”それ” に、行ったことのない「外国」を感じた。

ツリーの下には6角形のオルゴールの土台。
その土台には、1から25までの数字が描かれた引き出しが付いている。
中には、小さなかわいらしいオーナメント。

そう。アドベントツリーとは、12月1日から25日のクリスマス当日まで、1日1個、オーナメントを飾りつけていき、完成するツリーなのだ。

その、小さなかわいらしい、1年で最も楽しみが溢れている1か月間を彩るツリーを、作ってみたい!
幼い頃の思い出と、作ってみたい衝動に駆られ、ブランド「Akarilo」初の季節ものは、「アドベントツリー」に決定したのだった。

まずは、オーナメントを入れる引き出しに悩む。
必ず25個必要。
そして、私がイメージしているのは、
「ドイツの家庭で大切に使われ続けているような、古めかしさ」

イメージはとうに頭の中で出来上がっていたため、自分で塗装し、デコレーションすることを決めた。
手に入れた素材は、ペーパーマッシュでできたチェスト。
ペーパーマッシュとは、薄い紙を何層にも重ねてのりづけし、形づくられたもの。
そのため、「紙」そのままの風合い。
要は、「段ボール色」のままのチェストを、自分の思うようにデコレーションしていくことにした。

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まずは、大切に保管していた好きなデザインの紙ものの中から、これぞというものをチョイス。
現行ものかヴィンテージものなのか不明なものに関しては、購入したお店に電話し、商用利用の許可を得た。
チェストのサイドに貼った、クリスマス感満載の包装紙は、アメリカのヴィンテージもの。
どちらのデザインもかわいいので、今回製作する2つのアドベントツリー、どちらを選んでもこの包装紙がポイントとなるよう、両サイド異なる包装紙を使用した。

さて、「ペーパーマッシュ」が「薄い紙を何層も重ねてのりづけされて出来たもの」と知ると、「耐久性は大丈夫なのか?」と思われる方も多いはず。

その点は、かなり熟考しながら作業を進めたので、自信を持つことができた。

①下地剤を丁寧に塗り、お天気の良い日に乾燥させる。
②今回のベースカラーとなる「赤」のアクリルガッシュ絵の具で色を塗り、さらに乾燥。
③仕上げ剤としてニスを重ね塗り。
④しっかりと乾燥を確認したところで、包装紙をデコパージュの技法で貼っていく。
⑤ニスを重ね塗りする。

とにかく、すべての作業の合間に、2~3日の乾燥期間を要した。

「古めかしさ」を出すためには、ニスを塗っても「つやっつや!」の感じではなく、こっくりとした「赤」を作り出さなくてはならないため、絵の具の塗り方や、使用した筆の大きさまで、細部に気を配ってみた。

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さて、引き出しの装飾と、日付を表す数字はどうするか。
日付の数字。
スタンプを押したのでは味気ない。
シールを貼るのも何か違う。
手書きできるほど、絵の才能がない。
かねてからイメージしていた、ドイツのクロモス紙を使用することにした。
ゴシック調でもあり、天使がどこからかバラとともに舞い降りてきそうなその雰囲気。
飾り文字なので、多少読みづらさはあるが、間近で読む数字だ。
デザイン性を重視しようではないか。

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とにかく、細かな飾り文字を曲線に合わせて切っていく。
この作業では、某レコード店販促部署で大きなPOPパネルを製作していた経験が大いに役立った。
この「シルバーナイフ」なくして、こんな細かなものを切っていく作業は出来ないからだ。
使うのにも、大変コツがあり、入社当時はこのナイフを扱うだけの期間があったほど。

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数字を、引き出しそれぞれに貼っていく。
引き出しは、悩んだ末に、赤のみと、白に柄2種、の3パターンを製作することにした。
飾り文字以外にも、何かワクワクするようなスペシャル感が欲しく、ヨーロッパの古切手を使用することにした。
ひとつひとつをスポンジで抑えるようにして、デコパージュ技法で貼る。
乾燥させて、ニスを塗る。

さてさて、乾燥作業の合間には、ツリーのオーナメントづくりをコツコツと。
まずは、ツリーに飾るオーナメントについて、それぞれがどんな意味をもつものなのかを知るべく、図書館で本を借りた。
クリスマスカラーの意味、トップの星が持つ意味。
それぞれを理解したうえで、自分の作品に昇華させていく。
何も知らないよりは、知識が根底にあることで、どこかで何かに変換されていくはずだ。

アクセサリー製作の要領で、すべて手作りのオーナメント。

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コツコツと集めた、ヴィンテージ素材。
それらをビーズと組み合わせて、きらりと光る、オーナメントに。
今回のツリーに合わせて選んだ真鍮の「星」は、ちょっと素敵なもの。
リボン結びで、かわいくツリーの頂上を飾れるように、裏面を加工し、リボンを通しました。

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「Akarilo」らしい、色づかい。
ツリーに飾る「綿」は、雪を表しているけれど、あえてカラフルな”ポンポン”で「綿」ならぬ「綿菓子」のように、子どものような無邪気さを。

そうこうしているうちに、チェストは完成。
引き出しのデザインバランスや、側面と上部に貼ったの包装紙の切れ端を丁寧に整え、塗装に色落ちやムラが無いか、確認。

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よし、最高にかわいくできた!

ツリーの土台はどうするか?
生地でスカートを作る?クロスステッチの布を敷いてみる?
いや、金色の要素が欲しいな。
キラッとした感じではなく、少しマットな。
メキシコ雑貨のような、マットなゴールドに、カラフルな花模様。

素材として入手したツリーの土台は、つやつやした緑のプラスチック。
これに、普通に色を付けることは難しい。
何日も調べたり、試行錯誤した。

●サンドペーパーでひたすら研磨
●プライマーで下塗り
●緑を隠すため、白のアクリル絵の具をべったりと塗る
●さらにプライマーを塗る
●ゴールドを2度塗り
●厚紙で花模様の型を作り、イメージ通りの色になるようアクリル絵の具を混ぜながら絵を描く
●綿棒で、白のビースのような模様を描く

完成!!

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こんなアドベントツリー、他にはない。
「他にはない」ということが、良いかどうかは、それぞれの価値観。

だけど私は、誰でもどこでも買えるようなものを量産する企業ではない。
ならば、「他にはない」ものを純粋に、作りたい。
いつも持っているスピリットですが、初めて挑戦した「季節もの」で表現できたことが、何よりも嬉しい。

12月1日から25日まで、毎日1つずつオーナメントを飾り付けて、クリスマスのその日を心待ちにする。
玄関先に飾って、お出かけの前に日付を思うことも、
クリスマスまでの日を心待ちにすることも叶う、そんなアドベントツリーが出来上がりました。

どなたかにお届けできますように。

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