天国で、元気にしてますか?

「大切な人に、noteでお手紙を送りませんか?」
そうお声がけいただき、真っ先に思い浮かんだのは、あなたでした。
元気にしてる?
私はなんとかやっていけているよ。

こうやってお手紙を書くのなんていつぶりだろう。
最後にくれたお手紙、まだしっかり大切に持ってるよ。
私からの返事、渡そうと思って、あの日の朝も持って行ってたんだけど。
とうとう渡せなかった。

私、23歳になったよ。
あなたの誕生日も、もうすぐね。
今年はプレゼント、何にしよっか。
昔、お父さんから誕生日にもらったたまごっち、覚えてる?
お揃いだったよね。
いつもいつも、私たちは一緒だった。

あなたが朝乗ってやってくるバスを待ち続けて、17年が経ちました。
いつになったら来てくれるのよ、ずっと待ち続けているのに。
いつもみたいに、とびきりの笑顔で「おはよう〜!」って、駆け寄ってきてくれるんじゃないの?

「いつか帰ってくる、いつかひょっこり現れる。また、会えるよね、きっと」
信じて止まないあなたとの再会、いまだに夢の中では遊んでるのにね。
そろそろ出てきてよ、なんてね。

あなたがあの街に越してきてクラスの仲間になった初日、真っ先に声をかけに行った。
「はじめまして!一緒に遊ぼう!」
仲良くなるまでには時間はかからなかった。
休み時間は真っ先に教室を飛び出し遊具で遊びに行き、給食やおやつは一緒に食べて。
夏祭りはうちのおばあちゃんに一緒に浴衣の着付けをしてもらったり、運動会の鼓笛隊では一緒にポンポン隊をしたり、みかん狩りにも行ったよね。

園の中でも有名な仲良しコンビ。
人生で初めてできた親友だった。

喧嘩なんか、したことがなかったのに。
あの日だけ。些細なことで大喧嘩。
「もう、知らない。明日から遊ばないからね。」
これが、最後に交わした会話になってしまった。

家に帰り、意地を張ってしまったこと、すごく落ち込んだ。
あぁ、謝らなきゃ。
そう思い、あなたからの手紙の返事を書いた。
「今日も楽しかったね!いつもありがとう、また遊ぼうね!」
そう書かれた手紙に、
「昨日はごめんね。また遊ぼうね。」

小さな私にとっての精一杯の謝罪の気持ちを添えた手紙を持ち、翌朝ドキドキしながらあなたがいつも乗ってくるバスを待った。
なんて言おうか。
昨日はごめんね、で仲直りできるかな。

あれ?今日は乗り遅れちゃったのかな。次のバスで来るかな。
3本先のバスまで待った。
バスはもう来なくなった。
園のチャイムが鳴り、先生に教室に連れ戻された。

静まり返った空気の中朝礼が始まり、先生が重い口を開けて一言。
「〇〇ちゃん(あなた)が昨日、火事で亡くなりました。」
卒園3日前の出来事だった。
頭が真っ白になった。
瞬間、クラスで私だけが号泣した。
みんな、悲しそうな目でこちらを見てた。
みんな、知ってたんだって。
私がだけが知らなかった。
本当に仲良しなのを知ってたから、誰も言えなかったんだって。

一日中泣きはらし、泣きながら乗った帰りのバス、ドアが開くと目の前には涙する母。

どうして教えてくれなかったの。
本当は今朝の新聞で知ってしまっていた。
実は昨夜夢にも出てきて、何かを訴えようとしていた。
言えなかった、悲しむのがわかるから。

どうしてあの日に限って喧嘩を。
どうしてあの日に限って酷い言葉を。
どうしてあの日に限って謝れなかったの。
過ぎたことへの後悔が押し寄せた。

立ち直れなかった、どうしても。
大切な人を傷つけ、失った。
幼いながらにして突然できた心の大きな穴は埋まることはなかった。

卒園式。
誰よりもあなたが楽しみにしていた式当日、舞台横にはあなたの遺影。
私の隣の席があなただったのに。そこは空席。
閉式後、「もしかしてあなたが珠里ちゃん?」
そういって声をかけてくれた優しそうな老夫婦。
遠方から駆けつけてくれたあなたの祖父母だった。

「あぁやっぱり。いつも孫と仲良くしてくれてありがとうね。あの子、大人しい子でね。地方出身で方言もあってよくいじめられていたから、よく引越ししてたんだけど友達ができなかったの。初めて友達ができたんだって、すごく明るくなってね。”あかりちゃん”。明るい笑顔が素敵な子ね。」
そう言って運動会の日、一緒に並び笑顔で写っている写真を見せてくれた。

私は膝から泣き崩れた。
あなたの、その笑顔が見たかっただけなのに。
仲直り、しようと思っていたのに。できなかった。
意地っ張りで頑固な自分が邪魔をして素直になれなかった。
あの時笑顔でまた明日ねと言えていたら、何かが変わっていたかもしれない。

あの日から、あなたのおじいちゃんとおばあちゃんは、私のおじいちゃんとおばあちゃん。
私のことを孫のように可愛がってくれています。
小学生の時は、あなたが使うのを楽しみにしていたピカピカのランドセルを私に持たせてくれました。
いつか一緒に使えるまで置いておく、と、大切に保管してあります。

おじいちゃんおばあちゃんに元気に成長する姿を見せることがあなたへの供養になると思い、今まで生きてきました。
あなたの分まで生きてという言葉を胸に、今日まで生きてきました。

一緒に行こうねと約束していた小学校がある地域を離れ、小中ではバレーボールを頑張り、高校は勉強を頑張り、地域で一番の進学校に行きました。
大学は遠く離れた沖縄に進学し、卒業後は広報として就職しました。
私がOLさんだよ?笑 なれるんだなって笑ったでしょ。
今は大切な人もできて、将来の夢や目標も見つかったよ。

説明しなくても、全部見てくれてたか。
いつだってお見通しだね。さすがだよ。

ずっと、ずっと、会いたかったよ。
あなたのことを忘れた日は一度もありません。
長くなっちゃったね、読んでくれてありがとう。

今大切な人がいる皆さんへ。
過ぎた一瞬は一生戻っては来ません。
過ぎた後悔は、悔やんでも悔みきれない黒い大きな塊として一生心について回ります。
大切な人を失わないように。
大切な人を、一生大事にし続けるために。
気持ちは、言葉にしなきゃ伝わらない。
伝えてください、自分の口で。

人間、いつ死んでしまうかわからない。
私みたいに、突然会えなくなるかもしれない。
突然、”当たり前”だと思っていた日常が戻ってこなくなるかもしれない。
失くしてからでは遅い。
後悔先に立たず。

伝えてください、必ず。
「ありがとう」と。

読んでくれてありがとう。
私の親友よ、また会える日まで、さようなら。

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