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おすそわけ日記 220「ナソイソ劇場〜買い物戦士オカアサン〜」

冷蔵庫に食べ物がない。そこまではいい。

だが、トイレットペーパーが残り数十センチしかないのは如何なものか。


どうしても今日、今すぐ、買い物に行かねば。

やる気のない私を家に残し、照りつける西陽の中、果敢にもスーパーに向かう母。

後ろ姿に、戦士の趣が漂う。


一時間半後、ぱんぱんに膨れたショッピングキャリーを引きずって、母、帰宅。

まずはこれを、と差し出されたのは、トイレットペーパー。速やかにロールセット!


野菜メインで必要最低限の買い物と言いながら、出るわ、出るわ。

これは、ツヅラですか、恩返し用の。

ブラックチェリーに、まさかの西瓜まで。八分の一カットだけど。


夕食後、チェリー、食ーべよっと、いそいそ冷蔵庫に向かう私に、母が一言「ないよ」

あったじゃん!さっき、チェリーあったじゃん!?

「あれは、ブドウです」

ショックで動きが止まる。紛らわしい。

ブドウだと、テンションが上がらないんだよ。


私がものすごい悲しみのオーラを発していたようで

母が「西瓜食べたら?」

え!?

「西瓜全部食べていいよ」

全部…西瓜を…私が…歓びの驚きで、脳が止まる。危うく、息も止まりそう。


でも、人として、半分に切ろう。

「半分、明日に残しておくの?」

うん!

母の言葉に、思いきり頷いてしまった。

真夏の西瓜を前に、人としての配慮なんて、私にあるはずがない。

自分を偽るのは止めよう。


買い物戦士オカアサンは、今日も食い意地の張った怠け者の娘に優しいのだ。

け、オカアサン!こんなに買い物したのに、明日の夕飯の材料がないぞ。

明日も買い物戦士、出動だ!



【オマケのナソイソ劇場】

今日の題名を母に伝えたら「え、選手?」誰と競うんだ、一体。

「あ、天使?」その加護の矛先は何に向けられると云うのか。


【ナソイソ劇場とは】

生粋のおとぼけの母七十代と、ボケとツッコミの二刀流の娘五十代の、愛と笑いとちょっぴり心配も詰まった日常を描いた日記エッセイシリーズです。

「ナソナとイソ二」のタイトルで始めてから二年が過ぎ、今、母はギリギリ七十代。

今年中に「ヤソイソ劇場」にまたもタイトル替えの予定です。


【今日の一枚】西瓜です。早く、丸ごと食べてみたい。

【#つづく日々に】のタグをつけて、日常で心ときめいたことを投稿中。日常のよろこびをみんなでシェアしあって、笑顔が増えたら嬉しいです。

毎日、書く歓びを感じていたい、書き続ける自分を信じていたいと願っています。