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おすそわけ日記 74 「医者と伊坂と一本喰い」

医者のはしご。いつもは二時間半で、ばびゅんと帰ってくるのに、手間のかかる精算をお願いしたため、まさかの会計二時間待ち。

折角なので、病院の待合室にあったホリスティック医療の入門書を読む。名前しか聞いたことがない療法の簡単な解説が沢山載っていて、思わず前のめりになってしまった。色々なアプローチを体験してみたいなぁと好奇心がうずく。

薬局では、自分が持ってきた本を取り出す。伊坂幸太郎の『残り全部バケーション』集英社文庫。ここ数年、新刊の買い控えをして、家にある本をループの様に読み返している。中でも、伊坂幸太郎の作品は常に何かしら一冊をそばに置いておく。

どの作品も、何度読んでも面白い、巧い、勇気を貰う。そして、読み返す度に、心に響く言葉が違う。前は読み流していた言葉に感動する今の自分にも感動する。

今日は「気の合う友達を作るのと、信頼できる医者を見つけるのは、人間にとってライフワークみたいなもんだ」と云う台詞に、しみじみと肯く。有難いことに、私はそのライフワークをほぼ終えている。

本のおかげで、待ち時間も気にならなかったが、朝昼兼用の一食を食べたきりなので、腹ペコで地下鉄の階段を降りる。ケーキを、それも特別に大きなケーキをご褒美に買って帰るのです!

少し悩んで、FOUNDRYのプリンサンドを購入。どうよ、このスポンジに生クリームとプリンだけのシンプルでボリュームのある一本。

家に帰って、玄米、菜の花のお浸し、納豆、お味噌汁でさくっと夕飯を済ませ、さぁ、おまちかねのケーキタイム。

昔、バーの女の子があんこ好きで、お客さんの差し入れの高級羊羹をその場で一本喰いしたと云う話を聞いたことがあるが、私も美味しいロールケーキなら一本いけると思う。

その話を母と二人で思い出して、母に「一本食べていいよ。」と言われたが、一応、遠慮して母に一切れどうぞと勧めてみたりする。そうしたら、母が「ほんの少しでいいって!」と言いつつ、包丁を手にした私に「普通のケーキの厚さでお願いします。」と続けるので、動揺する。

「お母さん、それ、ほんの少しじゃないよね!?ケーキ一人で自立出来る厚さは、ほんの少しって言わないよね!?」

私、甘い物のことになると、ほんっと、心が狭くなるな。二時間待たされても全然平気なんだけど。

結局、二十センチ位あったプリンサンドの八割方を私が一気に平げた。その上でまだ、一緒に売っていた、金柑のチョコレートタルトも食べたかったなぁと思う私は、強者だろうか。

【今日の一枚】伊坂幸太郎『残り全部バケーション』集英社文庫

今日もおつきあい頂いて、ありがとうございます。

毎日、書く歓びを感じていたい、書き続ける自分を信じていたいと願っています。