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トランプ現象の根底にあるもの・・・「マイルドヤンキー」「キリスト教の信仰心」による国民性

皆様、アメリカ合衆国について、どのくらい理解されているだろうか?私は、一応は、世界史でアメリカ合衆国について学んだ。もちろん、大学のゼミは中国経済だったので、中国ほど詳しくはない。専門的にアメリカ合衆国について勉強した人には負けるが、ある程度の知識はあるつもりだ。

今回、トランプ氏が圧倒的に人気を誇っている状態は、日本人からするとよく理解できない現象かもしれない。だが、アメリカ合衆国について理解を深めると、これは必然であったのかもしれない。

アメリカというと、どのようなイメージだろうか?ハーバード大学やスタンフォード大学のエリートたちが、ITなどのスタートアップを起業するイメージだろうか?それも、アメリカの一つの側面ではある。

しかし、圧倒的大多数のアメリカ人は、そうではないと思う。

初期にヨーロッパ諸国からアメリカへ到達した人たちは、実は、信仰心の深いプロテスタント系の人々だった。17世紀のイギリスでは、国王と議会の間で権力闘争が繰り広げられていた。ピューリタンたちは、議会派を支持し、王権の制限と宗教的自由を求めてた。しかし、なかなか理想が叶えられず、ピューリタンたちは弾圧を受ける。そこで、彼ら彼女らが新天地として渡ったのが、北米である。また、ヨーロッパ諸国は貴族と庶民の格差は著しく、アメリカ大陸へ渡ったのは庶民だ。新しい世界であれば、いちから平等な国をつくれる、と考えたのである。

つまり、初期に北米へ渡った人たちは、「信仰心の篤いプロテスタント」で、「どちらかというと迫害された、経済的にも貧しい人たち」であったわけだ。北米植民地は、そうした人たちがつくりあげていったのだ。決して、エリートがつくったわけではない。

その後、独立戦争に勝利したアメリカ合衆国は、西へと領土を広げていく。この時も、貴族的なエリートというよりは、西部劇でイメージされるような荒くれものが、メキシコとの戦争で活躍したり、インディアン(ネイティブアメリカン)と闘争したりして、西へと領土拡張をしていったのである。

少し、時代は飛ぶが、1848年頃から、ゴールドラッシュが始まる。金鉱山の採掘のため、一発あてるために多くの肉体労働者がアメリカへ渡ったのだ。

だいたい、私が言いたいことは、もうわかっただろう。アメリカは、もとから、ヨーロッパ諸国とは異なり、「貴族」ではなく「庶民」が国を形作っていった。そしてプロテスタントを篤く信仰し、敵との戦いも辞さない勇敢な人たちが活躍して領土を拡張し、「一発あてる」というギャンブル的な人たちも多かったのだ。

もちろん、あれから100年以上の歳月が流れているので、アメリカもかなり変わったとは思う。だが、アメリカ人の原風景は、決してエリート主義や貴族ではないことは確かだ。日本風にいえば、「マイルドヤンキー」的な、少しヤンチャな人たちなのだ。私は民族差別や偏見は大嫌いだが、ある程度は当てはまっているのではないかと思う。これは、イギリスの流刑地だったオーストラリアにも多少はあてはまる話だ。そのため、シリコンバレーなどのエリート起業家は、アメリカにおいては「異例中の異例」「例外」であると考えなくてはならない。本来は、血の気が多く、野心があり、プロテスタントを新興する人たちなのだ。

アメリカにおいては、学校教育を拒否して、キリスト教原理主義に基づいた教育を実施する家庭もある。それは、建国時から受け継がれる、敬虔(すぎる)キリスト教の価値観なのだ。キリスト教では、「神が人間をつくった」とされる。そのため、理科で習う進化論は、アメリカにおいては、一部の人は否定的なのである。

「マッチョ主義」も、アメリカの一面である。アメリカにおいては、私のような細身で眼鏡をかけたがり勉で、アニメやゲームが好きな男性は「ナード」や「ギーク」と言われ、スクールカーストにおいては最下層となる。トランプ氏を銃撃したトーマス・クルックス容疑者もナードだろう。アメリカにおいては、アメリカンフットボールの選手や、チアリーダーの女子がヒエラルキーの最上位となるのだ。「ジョックとハニービー」と呼ばれる。

話は脱線するが、実は早稲田大学と慶應義塾大学にも、「ジョックとハニービー」は存在する。今はジョブ型雇用にシフトしているので、昔ほど絶対的なパワーは無いとは思うが、昔はラグビー選手などは就活も最強だった。チアリーダーも非常にモテる。結局、早慶というのは、「リア充」のための大学なのだ。私は一橋大学に合格できなかったので、地方のさえない青年なのに、慶應へ進学した。そこで色々な屈辱も味わった。だが、そのことが、今の野心・向上心「見返してやる」につながって、ビジネスで一定の成功は果たしたといえる。私は、中高でも「がり勉」と揶揄され、大学でも女子からモテなかった。そのことが、強い「競争心」「絶対に勝つ、見返す」につながったのだ。

脱線が長くなった、話を元に戻そう。トランプ現象・・・それは、今まで説明したものから構成される。

1 マイルドヤンキー的なブルーカラー、屈強な労働者
2 敬虔(すぎる)キリスト教徒
3 野心とギャンブル性

1は、わかりやすいだろう。工場や工事現場で働く人だ。昔は、アメリカも製造業は強かった。特に五大湖周辺だ。しかし、日本・韓国・ドイツ・台湾・中国などに敗北して、今はみるも無残だ。それを象徴する言葉が「ラストベルト」(さび付いた工業地帯)である。J.D.バンス氏はここで生まれ育った。トランプ氏が銃撃されてもすぐに立ち上がって「強さ」を見せつけたのも、これが理由だ。

2は、キリスト教の原理主義だ。トランプ氏がわずかに銃弾の軌道がそれて生き残ったことを、支持者は「神のご加護」だと言っている。

3は、少しわかりづらいかもしれない。野心は、「必ず勝つ」というファイティングスピリットであり、中国に対する敵視につながる。かつては、日本が敵国認定されたこともあった(大東亜戦争、日米貿易摩擦)。そして、ギャンブル、これは「とにかく、ドナルド・トランプという男に任せてみよう。ひょっとしたら、今の状態をひっくり返してくれるかもしれない」という期待につながっている。

かなり、偏見があるので、気を悪くされたかもしれない。だが、これがトランプ現象の一部を説明できると考えている。トランプ現象は、伝統的なアメリカ人による「新興エリートへの反乱」なのだと思う。

トランプ氏は、危険な人物だ。だが、トランプ氏の支持者については、同情を禁じ得ない面もある。必死に肉体労働などを頑張っているのに、尊敬されず、ITや金融のエリートばかりがチヤホヤされる。それは本来のアメリカの伝統ではない。そのような、反骨心が、感じられるのだ。

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