ルネサスの海外買収、税制で断念!タックスヘイブン税制の罠!

本日の日本経済新聞19面(法税務)の記事を紹介する。

ルネサスエレクトロニクスが仏半導体企業の買収を中止した。「タックスヘイブン税制」が適用されて税負担が増える懸念を回避した。日本には、タックスヘイブン対策税制がある。外国子会社を利用した租税回避を防ぐための制度だ。ルネサスの買収手法では、仏シーカンスはルネサスの独子会社となり、フランスに新会社をつくり、もとの資産や負債、従業員など移管する構想だった。これが、移転元の会社がペーパーカンパニーに該当するとして、東京国税局は問題視した。

日本経済新聞の紙面から筆者が要約

一般的に、M&Aを実施する際には、デューデリジェンスというプロセスが欠かせない。「ビジネスデューデリジェンス」「財務デューデリジェンス」「法務・税務デューデリジェンス」「ITデューデリジェンス」などがある。

ビジネスは、その企業を買収することが、経営戦略として本当にメリットがあるのかを検証するものだ。財務は、対象企業の財務状況(資産・負債など)に問題がないかを検証する。法務・税務は、法律や税制面で問題がないかを検証する。ITは、対象企業のITが陳腐化していたりしないかを検証する。今回、ルネサスが買収を断念したのは、税務デューデリジェンスの結果である。

税務デューデリジェンスを正確に実施しないと、思わぬ追徴課税などでキャッシュフローを圧迫することになりかねない。これら財務や税務のデューデリジェンスは、PwCやデロイトなど監査法人系の税理士法人か監査法人系のコンサルティングファームが得意とする。監査法人は、もとは世界各国にあったが、企業活動がグローバル化するのに合わせて統合を繰り返し、「PwC」「デロイトトーマツ」「EY」「KPMG」の4陣営に集約された。世界中に拠点があるので、このような国境を越えるM&Aでも活躍するのだ。

話はタイトルから脱線してしまうのだが、公認会計士の資格を取得後、監査法人で監査業務をするよりは、こうした税務コンサルティングの仕事のほうが面白いのではないかと個人的には考えている。監査は、地道な証跡を積み上げて実施する、とても細かい作業だ。イブリースさんも「ブルシット・ジョブの王」と呼んでいた(監査法人の方が読んでいたら申し訳ない)。

一般的に、M&Aが破断に終わる(破断しそうになる)のは、株主の反対(富士フイルムとゼロックス)、労組や従業員の反対(日鉄とUSスチール)、経営陣で折り合わない(キリンとサントリー)などが多いのだが、今回のルネサスのように、税務が障害になることもあるのだ。

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