記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

映画『戦慄のリンク』ネタバレ感想/鶴田法男監督が中国で手がけたサスペンスホラー

2020年制作(中国)
原題:網路凶鈴 The Perilous Internet Ring
監督:鶴田法男
キャスト:スン・イハン、フー・モンポー、チャン・チン、ワン・マンティ、ニー・ムーシー、チャン・ユンイン、ハン・チウチ、ワン・ツーイー、チョウ・ハオドン、シャオ・ハン
配給:フリーマン・オフィス
アジア映画レビュー記事一覧

ホラーはそんなに得意ではない上に、中でもJホラーは怖くてなかなか挑戦できない。よって鶴田法男監督の作品は一作も見たことがなく、本作が初めて。

中国当局は幽霊の存在を認めていないため、中国では幽霊によるホラー映画が作れないらしい。確かに、中国のホラー映画と言われると思いつかない。香港では『霊幻道士』シリーズや『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』があったり、台湾では『呪詛』や『紅い服の少女』など近年注目を集めるホラー映画があったりする。

『戦慄のリンク』は、中国が舞台で、キャストも中華圏の方々だが、そのストーリーやテイストは限りなくJホラーに近い印象を受けた。幽霊らしき存在も黒い長い髪の女性で、服は白である。典型的な日本の幽霊に近い。しかし、韓国映画でも似たような女性を見るので東アジアでは幽霊というと髪の長い女性であることが多いのかもしれない。

ある夜、大学生のシャオノアの元に同じく大学生(もしくは大学院生?)の従姉から電話が来る。両親が旅行で家に1人で、怖い小説を読んで1人でいたくないから今夜泊まってもいいかという。

シャオノアは、日付も超え夜も遅いから大学で会おうと言うが、従姉はそれでも引き下がらない。しかし、電話は途中で切れ、大学に行っても従姉の姿はない。不安になって家に行くも応答はなく、ドアの下の方から血が流れていた。警察に通報すると首を切って亡くなっている従姉の姿が。

警察は自殺と判断したが、従姉が自殺をするとは思えないシャオノアは、大学で出会った犯罪心理学に詳しいというマーに協力してもらい、真相を探し始める。そして従姉のパソコン(何とサムスンだった!)から、従姉がネットで知り合った人々と書いていたというホラー小説を見つける。

3年前に削除して以来更新がなかったという小説サイトに、最新話が更新されていた。また、従姉がそのことで他のメンバーと連絡をとっていることを知るが、そのメンバーも次々と不審死をとげ、皆自殺とされていた。

Jホラーなら、幽霊が更新したということで幽霊の恨みつらみを明かしていくなどしていくのかもしれない。しかし、本作は中国映画である。あくまでサスペンスホラーなのである。小説の更新も、自殺にも人の手が関与していた。

小説を読むことで、催眠にかかり自殺するように仕向けられている、というのである。そのようなことが可能なのか、と俄かには信じ難いが、本作は「青い鯨事件」などもベースにしているという。

青い鯨事件は、ロシアで発祥したと言われるSNSを介して参加者を自殺へ教唆、扇動するミームのようなものらしい。2010年代に何人も若い少年少女が自殺したという。直接関与していると結びつけにくく、酷似の事件も複数起きているらしい。2010年代はすでに私も携帯を所持していて、SNSもやっていたというのに、そのような事件について全く知らなかった。

催眠をかけることが可能かどうかはわからないが、教唆、扇動することは確かに可能だろうな、と思う。特に10代の子のネットとの関わり方の危険性については様々なところで見聞きしている。

一応、社会性も織り交ぜたサスペンスホラーになっており、幽霊の存在を“認めてはいない”というところがうまく逃げたなと思う。犯人は、ネットで知り合い共にホラー小説を書いていた1人の人物の自殺が原因で今回の事件は起きた。

ネットでは、ズーシャンという男性の名前で活動していたシア・ウェイイーは元々精神が不安定で、現実とネットの中の虚構の区別がつかなくなっていた。そのため、小説上で恋人であったジンホンに恋をする。これはシア・ウェイイーの父親が言ったことである。

そのため、シア・ウェイイーは、ネットと現実の区別がつかなくなったのではなく、同性愛者であった可能性もあるのでは。と思ったが、検閲が厳しくなる中国映画で同性愛者を描くことはリスクも伴うので、同性愛者としては描いていないのかもしれない。

娘を失った父親は、心理学の知識と、メンバーの1人であり、AI研究を行なっていた人物と接触し、催眠によって自殺に追い込ませることに成功したのだ。真相に辿り着いても、シャオノアとマーは小説を読んでしまい、催眠状態にある。

マーは、これは現実じゃないと自分を言い聞かせ、催眠状態から抜け出したが、シャオノアは抜け出せない。正気に戻させようと追いかけてくるマーが、シャオノアには長い髪の女が追ってくるように見えている。今にも屋上から落ちそうなところに駆けつけた警官とマーによってシャオノアは助けられる。

非常にシンプルなストーリーで見やすく、王道のホラー演出もあり、見やすいホラー映画であった。悪く言えば既視感のある映画と言えるが…、色々規制のある中で作ったのだろうという裏事情を感じる部分も多く、その意味ではうまくまとめているのではないだろうか。

また、催眠によって自殺に追い込まれる…という点は、韓国映画『ヒプノシス 催眠』と似ている部分もあるな、と思った。しかし『ヒプノシス 催眠』は都合よく忘れている加害者に対しての復讐であったが、本作の復讐はやや動機が弱い気がした。

見出し画像(C)伊梨大盛傳奇影業有限公司


この記事が参加している募集

#映画感想文

65,734件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?