台湾映画『ゾンビ・プレジデント』ネタバレ感想/国会でゾンビが発生したら……?
終始一貫してふざけているゾンビムービー…ではあるが、どうしても穿った見方をしてしまう。怒号が飛び交い取っ組み合いでまともに議論もできない立法院(台湾の国会のこと)の様子は単なるおバカムービーのノリの延長だろうか。
汚職まみれ、金がものを言う。金になるからと化学工場の建設を推し進めていくなか、工場立設地が故郷であり、突如家を奪われたインインは建設を阻止するため立法委員となる。しかし、賛成派多数のなか反対を掲げる上に過激なインインはいとも簡単に暴力を理由に委員を辞めざるを得ない状況に。
そこに白羽の矢が当たったのが、立法院で警備院をしていたヨウウェイ。失血性の病気で鼻血がよく出るという冴えない青年をインインは自分の身代わりとして出馬させようとするが考えることは皆同じ。賛成派の委員らもこぞってヨウウェイを唆し、手駒にしようとする。
そんななか巻き起こるのがゾンビパニックなのである。工場から排出された狂犬ウイルスに感染した台湾総統によって議会は地獄絵図になる。工場の化学物質という人的要因でゾンビパニックが巻き起こる点など粗いもののそれなりの設定はあり、もれなく韓国の『新感染 ファイナル・エクスプレス』などの映画の影響は受けていそうなゾンビ映画である。
格闘術やゲームのような演出など、おバカノリ全開の映画ではあるが、逆に考えてみればそういうノリだからこそ描けるものもあるのではないかとふと思ってしまうのだ。お話にならないような政界の様子をコミカルに描いているのはそうでないと描きにくいからでは…と思ってしまうのは考えすぎか。
金や権力を求める委員とは違い、インインはただ故郷を守りたい一心でぶつかっていく。ゾンビパニックの中を見事に生き抜いたインインは、今度は新たな家のために戦う決意をする。新たな家とは、国家そのものなのである。
確かにゾンビ映画で諸悪の根源が企業であったり、政府であったり…というのは特に韓国映画でよく描かれる手法であり、そう珍しいものではない。とはいえ、おバカに振り切ってはいても破綻した政界の様子を描くのにはそれなりの意味もあるのでは。と思いたいのが正直なところ。
程よく家族の物語、恋愛が展開していてさらりと見やすく振り切ったコメディとしても楽しめる映画でもある。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?