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中国映画『陰陽師:二つの世界』ネタバレ感想/独自解釈で安倍晴明とゲームの世界を見事に映像化

2021年制作(中国)
原題:侍神令 The Yin-Yang Master
監督:リー・ウェイラン
キャスト:チェン・クン、ジョウ・シュン、チュー・チューシャオ、シェン・ユエ、ウィリアム・チャン、ワン・リークン、ワン・ツーシュエン

モバイルゲーム「陰陽師本格幻想RPG」の実写化映画らしい。中国映画のVFXや、CGのクオリティの高さには、毎度驚かされる。資本の問題もあるのだろうが、こだわりの美意識もあるように感じられる。

本作には、安倍晴明の他に源博雅も登場し、その辺りは夢枕獏の小説『陰陽師』シリーズから来ているのかもしれない。ちなみに同シリーズは、野村萬斎主演で映画化されたが、山﨑賢人主演で『陰陽師0』として2023年4月に公開される。

のちに語られた安倍晴明伝説の一つに、晴明が半妖であったという説があるが、本作は完全に半妖として描いている。夢枕獏の小説からの引用もあるとは思うが、基本的にはかなり独自の解釈の安倍晴明や陰陽師といった印象であった。

チイファの手紙』や『ふたりの人魚』などに出演する中国を代表する女優であるジョウ・シュンが、陰陽師として登場する。しかし、平安当初では女性の陰陽師というのはまずいないであろうと思われる。陰陽師は陰陽道中務省の陰陽寮に属した官職の1つであり、女性が官職に就くことはまずないからである。

更に、ワン・ズーシュエンが雪女を演じているが、雪女の伝承の多くは東北であり、歌に出てきたのも室町後期である。一部地域で雪女伝承はあったのかもしれないが、平安時代に雪女の伝承は出てこない。そのように気になる点はあるが、深く考えずに見ればとても楽しい娯楽映画である。

とにかく映像美が美しく、鎌鼬や天邪鬼などの妖怪らのビジュアルも可愛い。ゲームの世界からやってきたかのような安倍晴明役のチェン・クン、慈沐役のウィリアム・チャン、源博雅役のチュー・チューシアオのビジュアルも素晴らしい。

男性陣だけでなく、女性陣も美麗なビジュアルである。ジョウ・シュンはもちろんのこと、雪女役のワン・ズーシュエン、木の精役のワン・リークンなど素晴らしかった。個人的には、神楽役のシェン・ユエがとても可愛かった。

さてさて。ストーリーについても見ていこう。安倍晴明は類まれな霊力を持ち得ており、陰陽寮で陰陽師となるべく学んでいた。ある日、鱗石が封じ込められている金塔で、師の教えを聞いていると、妖怪である相柳が晴明に囁きかける。

半妖である晴明は、相柳の声により自身の妖力を抑えられなくなる。兄弟子が抑えてくれてその場がおさまったが、兄弟子は晴明に今後同じようなことが起きた際は、“護身呪”を逆から唱えて自分を消すようにとアドバイスを受ける。そしてとある事件により、晴明は陰陽寮にいられなくなり、抜け出してしまう。

居場所を失った晴明は自分と同様様々な事情で妖界に居場所のない妖怪らを、自分の式神とし、住む場所も与えてひっそりと暮らしていた。時がたち、陰陽寮から鱗石が何者かによって盗まれる。疑いの目がかけられたのは晴明であった。ひょんなことから晴明を探す源博雅や神楽、そして晴明も鱗石を奪った黒幕を探し始める……。

シンプルなストーリーに、豪華な映像美とアクションはゲームや漫画の世界に近く、ワクワクさせる。源博雅や神楽の背景が浅かったり、展開の強引さはどうしてもあるが、世界観が好きであれば問題なく楽しめるであろう。

特に好きだったのは、源博雅と天邪鬼の乱闘シーンである。小さく、こんなの楽勝で勝てると思っていた博雅であったが、天邪鬼が負け知らずなのには理由がある。なんと、天邪鬼は殴られた分だけ巨大化するのだ。

小さくて可愛らしかった天邪鬼がむくむくと巨大化するシーンはおよよという驚きとこんな相手に勝てるのか!?というハラハラがあってよかった。

陰陽師の能力を超えすぎているようにしか思えないアクションシーンも、迫力と美麗さにおいては満点。細かい点が気になるといっても邦画の漫画実写化と比べたらえらいクオリティの差である。

本作と特に関連性はないらしいが、『陰陽師:とこしえの夢』という中国映画があるのでこちらも見てみようと思う。こちらは夢枕獏を原作としている模様。

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