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俺の文章術 ダイジェスト無料版

俺の文章術 #1 女性を動かすライティングとは?

 プロライターの文章テクニックを聞く連載「俺の文章術」。第一回目に登場してもらうのは女性週刊誌で多くの芸能記事を執筆し、エースライターの呼び声高い沢田公介氏(仮名)です。女性週刊誌は主に一般読者層をターゲットとしています。幅広い読者層に刺さるためには、どのようなノウハウが求められるのか。若手ライターの中でも屈指の美文家でとして知られる沢田氏にそのテクニックの極意を聞きました。

――よい文章を書くために気をつけていることはありますか?
「私がデスクからよく言われていたのは、文章は「 」から入りなさいということでした。つまり文章の書き出しをコメントや会話から始めるということですね。なぜ「 」から始めるのか。その意味は、「 」から入ると柔らかくてキャッチーな文章になるということなのです」

――文章の書き出しというのは、確かに一番苦労するところです。いろんなパターンの書き出しがあると思うのですが、やはりカッコイイ文章を頭から書きたいと多くの人が思うものです。そ「 」から入るというのは安易だなと思ってしまう方もいると思うのですが。

「冒頭から説明文、情景描写から入る文章というのはややもすると堅くなるんですね。「 」から入るとスッと読めるという効果がある。女性週刊誌というメディアは、主婦などに気軽に読んでもらう雑誌なので、あまり堅くならない文章を心掛ける必要があると思うんですよ」

――文章を読むという行為は読者に苦痛を伴うものです。その意味から考えても「 」から書くということは、読者をリラックスさせる効果があるんですね。

「もちろん「 」はなんでもいいという訳ではありません。その後の文章にも興味を持って読み進めてもらうための言葉、インパクトのある言葉を頭に持ってくる必要はあります。柔らかくてキャッチーな文章であるためにも、冒頭の言葉は大事なんです」


――あと、文章で気にかけていることはありますか?

「これも先輩記者から教わったことなのですが、記事の構成は「承起転転」で書くといわれました。起承転結ではなく承起転転です。つまり、いま起きている事件の核心から入るということです。①承②起③転④転
① まず何が起きているかを書いて。
② そもそもこの話はどういうことなのかを説明、全体像を見せて
③ 冒頭の中身に戻り
④ さらに違う騒動も起こり、問題は続くと書く
というイメージでしょうか。ポイントは「結」を書いてはダメだということです。結を書くと話は完結してしまい、週刊誌としては面白くない。いまも事件は動いている、と書くことによって翌週への期待を持たせる。つまり余白を残した記事にするということです」

――私が在籍していた週刊文春では、いちばん面白い話を冒頭に持ってくるというのがセオリーでしたが、承起転転も同じ意味ですよね。何が起きているかをまず「承」として書く。

「冒頭のツカミは大事ですよね。ここで説明文から入ってしまうと、読むのが苦痛で読者の興味が続かなくなる。だから「起」で書く説明文を読ませるためにも、冒頭にはインパクトのある、目に留まる話を持ってくる必要があるのです」

――よく広報文なので、商品の説明や会社の説明から入っているものもありますよね。こういう文章は非常にもったいないといつも思うんですよね。頭から説明を書いてしまうと、読者に読み進めようとという意欲を失わせてしまう可能性が高い。
ある意味、構成は「起承転結」という通説がつまらない文章を大量生産させている最大要因のような気もしてきます。
ぜひ、多くの人にも冒頭インパクトの法則を使ってほしいですよね。

「文章を読むことは苦痛を伴う行為だということは原則として覚えておいたほうが良いと思います。その為に創意工夫をしているのが週刊誌の記事です。
 悩むのが熱愛や不倫の記事を書くときです。要は頭で不倫と書いてしまうと、話はお終いじゃないですか。そのときは工夫が必要ですよね。
 その時は、例えば「頭の中が真っ白になりました」という謎めいた言葉から始めたりする。読者はタイトルから不倫だろうとは予測がつくわけですから、それでも「何だ?」という興味を抱かせるような話を文章の冒頭に使います。私は『チラ見せテク』と呼んでいますが、チラチラ見せて読者の興味を持続させるように気を配っています」

――なるほど。面白い話を全部書かないということも大事な場合があるんですね。伏線を入れておくという話に近いかもしれませんね。

「あと文章を書くときには、『事実止め』というテクニックもあります」

――『事実止め』は初めて聞きました。

「週刊文春でもそうだと思いますが、文章の最後に何かオチをつけるじゃないですか。『闇は深い』でも『問題は始まったばかりだ』でもいいのですが、最後に評論的なことを書くのがスタンダードだと思うのですが。事実止めは、事実を書いて終わらせるというテクニックです。
例えばベタな話でいうと、不治の病の少女が、窓から木の枝に残る最後の一枚の葉を見ている。そして、最後の葉が落ちたとします。そのときに「病室の荷物は撤去され、ベットのシーツは綺麗に取り換えられていた」と末尾に書くというイメージです。「彼女は亡くなった」とは書かずに、何らかの事実をもって死を示唆させる。これが『事実止め』です。
ある有名人カップルについて記事を書いたときに、この手法を使いました。彼氏は自然農法の詳しく、二人で野菜づくりをしていた。でも自然農法で野菜を作るのは実に難しい。彼女は別れたあとも、自然農法に取り組んでいた。その文末に「畑は荒れ、近所の人の話だと野菜の出来も悪かったようだ、と書きました。野菜の不出来で破局を示唆した(笑)」

#1のダイジェストはここまで。ご興味ある方は本編の方もお楽しみ下さい!

俺の文章術 #2 感性で書くノープラン文章術

連載「俺の文章術」、第二回目に登場してもらうのは、“若き文豪”の異名を持つ書籍編集者の佐藤佑一郎氏です。佐藤氏は雑誌編集、書籍編集と編集者としてキャリアを積んでいます。編集業務に携わる一方で、自らも多くの文章を執筆・発表しておりそのクオリティも抜群です。
文章術には様々なスタイルがあり、書き方の手法も人それぞれです。これまで紹介してきた、「構成を決めて文法を考えて書く」というスタイルに息苦しさを感じている、という人もいるかもしれません。佐藤氏は「素人こそノープランで書いたほうが文章は美しくなる」と語ります。
一味違うライティングスタイルを持つ佐藤氏のメソッドとは何か聞きました。

構成はいらない

――佐藤さんは独特な執筆スタイルをお持ちだとお聞きしました。

「赤石さんから構成を考えて書くというお話を聞いて、僕は違うなと思いましたね。私は大学で文学を学んだわけでもないし、名作・名著の類を読んだこともありません。
 なので会社に入ってから自分で試行錯誤して文章の書き方を工夫してきました」

――構成を考えずに書くんですか?

「そうですね。物語も意識しません。パズルのように要素を組み合わせるというイメージで文章を書いています」

――具体的に言うと?

「取材メモなどがあれば赤線を引いてまず大事な個所を確認しておきます。そのうえで書くべき10個の要素をピックアップします。10個はパンチのある話の順番にピックアップしていくイメージですね。
基本的にはピックした順番に沿って書き始め流れに任せていく。だから起承転結とか承起転転などは意識したことがない。行き当たりばったりで書いて行きます」

――文芸春秋の村井氏は、「構成は知らない土地を歩くときの地図のようなもの」と言ってました。佐藤さんは地図を持たずに書き始めるわけですね。かなり大胆な手法ですね。

「はい。10行書いて見直して、また10行を書くという形で文章をつないでいきます。書いた10行については何回も読み直します。そして、どう繋ぐか20分毎にウロウロ歩いたり考えたりする。だから遅筆だし時間がかかるやりかたではあります。

読み直すときに考えるのは『文章のリズム』と『繋ぎ』です。この2つを確認しながら、読んでいて単調な文章になっていないかリズムをチェックします。また文章と文章に整合性はあるかを、何回も読み返して確認します。そうやって10行ごとに繋いで行き文章を完成させます」


POINT 大事なのは文章の「リズム」と「繋ぎ」

――なるほど。推敲を重ねることで文章の精度を上げていくという手法なのですね。推敲とは文章を読み返すことです。リズムはどう意識するんですか?

「実は文を書くときは必ず部屋に籠り音楽を聴いて書いてます。音楽は映画のサントラとか、盛り上がる系の音楽をその都度チョイスしています。音楽でテンションを上げて行って、そのエモーショナルな感情のまま文章を書く。まさに文字通りリズムを意識しているんですね」

――リズムとは音楽的リズムという意味なんですね! 一般にいう推敲でリズムをチェックするというのは「~だった。~だった」など同じトーンの文章が続くことをチェックすることが多いと思うのですが。音楽からインスピレーションを得ていたとは!
たぶんペンシャープナーと同じ理屈だと思います。ペンシャープナーとは自分の好きな文章を読んでから原稿を書くと筆が鋭くなるという意味でつかわれます。ペンシャープナーをすることで書き手はインスピレーションを得るわけですが、同時に文章のリズムを会得している部分もあるんですね。佐藤さんはそのインスピレーションやリズムを音楽から得ているわけですね。

「歌詞が入る音楽は返って思考の邪魔になるので。インストメンタルやサントラをよく聞いていますね。音楽も特にこれというものはなくて、毎回YouTubeなどで探しています。エモーショナルな気分になることは大事です。楽曲とピタっとはまった原稿を書けたときは、気持ちいいですよ! やはりいい文章にもなっていますね」

――やはり音楽から文章を編むというメソッドには作家性を感じますね(笑) 私が推敲する時に初心者にオススメしているのは声を出して音読することです。音で聞くと文章のおかしさやリズムの悪さが明確にわかるので、ぜひやってみて欲しいですね。

「僕は音読まではしませんが、黙読で文章リズムは確認しています。『~だった』『~という』、体現止め(固有名詞などで文末を終わらせる手法)が連続すると文章が続いていかないので、多用していないかを確認しています。
あと『そして~』もあまり使わないようにしています。『そして~』は話題が変わっているように見えて変わってないことが多いんですね。だから、読者に興味を持たせる文章を書くという意味では有用だとは思えない。『しかし~』『だが~』は話題が変わるので使います」

――なるほど。接続詞を使うのは書き手としては楽ですが、文章的に意味がある使い方というのが必要なんですね。

「やはり文章を書くうえで、いかに『平坦な文章』にならないかは気を配らないといけないと思います」


#2のダイジェストはここまで。ご興味ある方は本編の方もお楽しみ下さい!

俺の文章術 #3 パワーエリートに勝つ取材術

 プロの文章テクニックを聞く連載「俺の文章術」。今回がseason1の最終回となります。文章にいちばん必要なのは「どう書くか」ではなく、「何を書くか」です。書く素材があってこその文章術です。

そこで第3回目に登場してもらうのは、敏腕政治部記者として数々のスクープをものにしてきた全国紙政治部記者の塩田明大(仮名)さんです。日本の最高峰の情報を入手し、機密にも迫っていく政治部記者の仕事術を存分に語って頂きました。

小澤さんは、記者の勲章ともいえる社長賞や局長賞を数々受賞している、まさに天才的な取材記者です。政治部記者が活躍する永田町は政治家、官僚といったパワーエリートが跋扈する世界です。ハーバードに東大は当たり前、ライバルとなる政治部記者もまた学歴エリートが顔を揃えています。

しかし、小澤氏は「学歴なき者でもスクープ記者になれる術はある」と語ります。

小澤さんの手法は取材術であると共にビジネスシーンでもいきる情報術でもあります。なぜなら自由主義経済であればあるほど情報が最も重要なリソースとなるからです。また政治は、財界、経済活動、会社の出世争い、地域、派閥、どのシーンにおいても付き物である一大テーマでもあります。

政治部記者が教える「究極の政治」を会得すれば、どのようなジャンルでもそのメソッドはいかせるはずです。激動する政局を見ながら、記者はどのようにしてサバイブしていくのか。私がいた週刊誌ともまた別世界なので、興味は尽きませんーー。

――まず、政治部記者はどのようなキャリアを辿るものなのでしょうか。

「新聞記者のなかでは政治部志望者は多くいます。だから狭き門でもあるのです。一般的なキャリアコースとしては、記者は入社してから地方支局に配属され、人によって個人差がありますが平均としては地方支局を2か所ほど回ることになります。

 ここで結果を出すことが政治部記者になるためには最も重要なことなのです。独自記事、特ダネ(スクープ記事)を書いて目立っておかなければなりません。

 なぜかと言うと、政治部記者は指名制で抜擢されるからです。政治部から目をつけられて呼ばれることもありますし、地方支局のデスクが政治部出身で推薦してくれるというパターンも多くあります」

――いま私は警視庁捜査一課の刑事の連載をしているのですが、まさに刑事のキャリアと同じで驚きました! 刑事も所轄で手柄をあげないと中央の捜査一課には行けない。純粋な実力勝負の世界だと言ってましたが、政治部もそうなんですね。

「私も刑事連載読ませて頂いてます! 大学生時代にエリートを気取って新聞記者になる奴ほど支局のサツ回りを疎かにするんですね。サツ回りの意味は取材技術を磨くことができることにあります。

 有名な政治部記者でNHKの岩田明子さんという方がいます。彼女は政権情報をバンバンスクープしている永田町でも5本の指に入ると言われている政治部記者です。岩田さんはNHK岡山支局時代、いわゆる地方支局時代にですね事件取材でスクープを連発していたという伝説を残しているんですね。警察の供述調書なんかは普通の記者には入手できないのですが、彼女はバンバン入手してくる凄腕なのです。

 NHK記者は、一般にはあまり知られていませんがメディアの中でも実力主義、成果主義が徹底されている会社です。入社して4~5年で結果を出せなければ、次のチャンスはほぼないとされています」

――そうなんですよね。私は週刊文春時代にNHKをよく取材していたのですが、記者の過当競争が熾烈なので驚きました。ヤラセをしてでもスクープを取ろう、出世しようという記者もいて。スクープ記事としてクローズアップ現代のヤラセ疑惑として報道して世間も騒ぎになりました。ヤラセは論外として、やはり記者は実力で勝負していくというのが、健全なジャーナリズムだと思います。

「大手新聞にA(現在は海外特派員)さんという女性記者がいます。彼女は地方支局で5年ほど勤務して政治部にあがってきた記者です。政治部に抜擢されるきっかけとなったのが、大物政治家の選挙参謀に独占インタビューしたことでした。この選挙参謀はその後亡くなったので、歴史の生き証人として貴重な記事となりました。その結果を買われて、政治部にスカウトされたのです」
――いずれも女性記者というのが凄いところですね。健全な勝負の世界で政治部記者になった、と。

「よく永田町で女性記者が活躍すると、やっかむ声が聞こえてきます。要は”女を使って取材したのだろう”、と。しかし彼女たちは支局時代から凄かった。ここがポイントです。

 もう一つポイントとなるのが20代のうちに永田町に来るということです。取材スキルもあって、かつ動けるというのが政治部記者駆け出しの時には必須なのです。
 政治部の記者はまず総理番となります。だいたい4~5年目の記者が多いですね。まぁ、権力の中枢を取材する総理番が新人記者でいいのかという議論はあるのですが、新人に任される理由の一つが体力です。

総理番はテレビなどで見ていればわかると思いますが、四六時中総理に着いていないといけない。日程調整とか作業が多い。独自取材する暇もないくらいです。だから体力がないともたないのです。年をとってから永田町にきても、やはり伸び悩みます」

#3のダイジェストはここまで。ご興味ある方は本編の方もお楽しみ下さい!


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南アフリカ・ヨハネスブルグ出身。講談社「FRIDAY」、文藝春秋「週刊文春」記者を経て2019年よりジャーナリスト◇文藝春秋digital 連載中「伝説の刑事 マル秘事件簿」◇新著:『韓国人、韓国を叱る〜日韓歴史問題の新証言者たち』(小学館新書) ◇好きな食べ物は卵、花摘みが趣味

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