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自由律俳句

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記事一覧

自由律俳句28

会えない人がカメラロールで笑っている

長いデジャヴが終わった

老犬と並んで光る海を見ている

弾けないギターの埃を拭く

眠れなかった窓に金星

自由律俳句27

熟れすぎた西瓜の種飛ばす秋空

返ってきた本の8ページ目に栞

傷つくから見ない

明日の自分にゆだねる

最後の花火終わって空虚

自由律俳句26

借りた本からその人の匂い

タイムラインで見た虹を空に探す

気が狂いそうなほど真っすぐな道

海から帰って床ざらついている

雲がちぎれて月が笑った

自由律俳句25

誰にも見せなかった詩を捨てる

目がさめて淋しい夢の余韻

わたしの中に燃え残っていたもの

朝顔が夕方まで

金星が街を見おろす夜のはじまり

自由律俳句24

もう会えない人がつけた傷

どこまでも白い曇り空が眩しい

狂ったままの時計と暮らす

独りの部屋に声ひびかせてみる

立ち止まれない春を進む

自由律俳句23

昨日いた雪だるま今日はいない

やりきれない空に薄い昼月

心にも成長痛があると知る

皮ごと食べていい葡萄か迷う

サントラまで買ってしまった

自由律俳句22

忘れるための海いない君で満ちる

悲しい夢を見せた雨音

ゲシュタルト崩壊をじっくり味わう

グラス倒して酔っている

きょう着たい服がない裸でいる

自由律俳句21

ごみ箱に捨てた感情

結論が出ないまま動く月

すんなり感傷に浸れる雨

同じ服を着た見知らぬ人

果たせなかった約束を数える

自由律俳句20

うっかり淋しくなる雨音

はんぶんこ、大きいほうくれた

ケーキのクリーム鼻につけてあざとい

着ぐるみが幼子泣かせている

見送れなかった扉しまる音

自由律俳句19

諦めて起きる

重い空わたしより先に泣いた

街路樹、紅い葉がまざりはじめる

平らな道で転ぶ

「またね」と言いあって二度と会えない

自由律俳句18

「行けたら行く」と言っていた人が来た

威勢よく駆け出したがサンダル

エンドロールも作品として最後まで

浮かれても一人

コーヒー飲み干して今日をはじめる

自由律俳句17

パピコを分け合う人がいない

E.YAZAWAと装飾された車が前方に

老人にしては薄着で不安

二度寝用のアラームをセットする

良い夢しか見ないと決めて目をとじる

自由律俳句16

寝言が英語だった

店から借りたサンダルがダサい

公園のベンチに雪が座る

百円玉と見まがったゲームのコイン

まだしりとりは続いていた