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居なくなったアレ

「そういえば、アレ……どこ行ったんだ」
 ふと今年を走馬灯のように振り返っていると、ふとアレのことを思い出した。
 色々あった嫌なことも楽しいことをそっちのけで、アレの行方が気になって仕方がなくなる。
 アレとは、会社で使っていた『電卓』のことだ。キャノンのそこそこいいやつで気にっていた。
 仕事柄あまり計算とかしないが、電卓は風水的に金運が上がるというから、買って机に置いておいたのだ。そう、たしかにおいたのだ。
「……いつからなくなった?」
 ダメだ思い出せない。というより今の今ままで忘れていた自分に驚きである。
 最終日の大掃除にはなかったはずだ。であるなら、それより前になくなっていたことになる。
 ――いやまて、そもそも今年電卓使ったか? 計算とか全部エクセルでやってた記憶しかない。家出? 反抗期?
 まさかカウボーイのおもちゃみたいに、懐かしい友人と出会って、そのまま友人とイチャコラしてるんじゃないだろうな。
 ――そうに違いない。おいおい、なんてこった。道理で俺様の金運が中々上がらないと思ったぜ!
 確かに、計算するときはスマフォとかエクセルでパッパと計算しちゃってたよ。悲しかったよな。ほんとごめん。
 この思い届くかな。
 届くといいなァ。
 次新しい子が来たら、積極的に使おう。
 もうエクセルやスマフォの電卓は使わないよ。(嘘である)
 それにしてもどこに行ったのか。
「そういえば、河内さんも同じの使ってたなぁ。もう退職しちゃったけど……」
 ――まさか、ねぇ。

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