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企業におけるダイバーシティ活用〜テレビ局の場合〜

武田薬品工業さんがニューロダイバーシティ啓蒙

日本橋を拠点に武田薬品工業さんが産官学でのニューロダイバーシティの啓蒙を始めます。
そこに私もアナウンサーとして、かつ法人(株)voice and peaceとしてご一緒させて頂きます。

ニューロダイバーシティとは端的に言うと「発達障害やギフテッドなど含め、個々の違いやダイバーシティを理解し認める」という考え方。
私の場合、子供が「発達障害+ギフテッド」。これからの世界をニューロダイバーシティの社会にしたいと切望し起業したのでど真ん中の考え方です。

ダイバーシティとは古き良きテレビが近い?

ここで改めて「ダイバーシティ(多様性)を活かした社会は、どんな社会になるのか?」を考えました。すると面白いことに、先行事例は「面白かった時代のテレビ局」が近いと気付きました。

私がテレビ東京にいた2000年代はテレビが凋落していく真っ最中でした。当時もまだテレビ局は人種の坩堝で、才能の凄まじい方がたくさんいらっしゃいました。在籍8年間で今でも記憶に刻まれている出来事がいくつかあり、それは「企業のダイバーシティへの対応」が関係していました。
プライバシーに配慮しながら、私が大尊敬しているテレビ東京の天才・鬼才の方々の仕事ぶりをご紹介し、ダイバーシティがイノベーションを起こしている事例を3つご紹介します。

①カメラ グニョリ(ボクシングプロデューサーTさん)

テレビ東京のボクシングプロデューサーTさんは、局内外で大変有名な鬼才です。私のボクシングの大師匠で、今の私がボクシングの仕事を出来ているのは100%T さんのおかげです。尊敬しかありません。

Tさんの演出論は、私のような凡人が理解するには難度が高いものでした。今でも記憶に残るTさんの演出に「カメラ グニョリ」があります。生放送では全スタッフが見る「Qシート」と言われる指示書のようなものがあります。Tさんのボクシング中継のQシートでは、両選手がリング中央に集まった瞬間に「カメラ グニョリ」という演出をカメラマンに要求します。

グニョリを具体的に文字に起こすと、
1、カメラは両選手を下からバストアップサイズで撮影
2、両選手がグローブタッチしてコーナーに戻る瞬間に、カメラは天井の照明に向かってズームしながら「ねじる」

これにより、映像は「ワクワク・ドキドキ」が増します。これ以外にもTさん特有の言語表現がQシートには散りばめられています。
重要なポイントは「指示を見たカメラマンたち全員がグニョリなどを理解している」こと。個性的なニューロダイバーシティ人材Tさんを周囲が理解することで、イノベーションが起こっていたのです。

②たこしげ事件(伊藤P)

たこしげ事件とは、深夜番組「やりすぎコージー」でオンエアした芸人さんたちの飲み会の様子(@居酒屋たこしげ)が、のちに世間や社内で大インパクトとなったものです。
内容は、当事者のひとりである宮迫博之さんがYouTubeでお話していらっしゃるので、そちらをご覧ください。

私はこの番組の前身「やりにげコージー」の開始当初から番組ナレーターとして参加させて頂いていました。あらゆる企画がぶっ飛んでいて、おそらく当時の芸人さんたちはほとんどの方がチェックする先端的お笑い番組だったのでは?と思います。
この番組の凄いところは、ぶっ飛びすぎて「これは、大丈夫なの?」というまさに「やりすぎ」ゾーンを見せてくれていたことです。とくにダイバーシティな番組スタッフや芸人の皆さんのアイデアや熱量が凄く、ときに脱線しながらも大人気番組となりました。

そのなかでプロデューサーの伊藤さんは、全スタッフ・芸人さんへの配慮と理解をされていたように感じます。大変クレバーで冷静で温厚で、何より優しさと愛情が伝わり「charm」のある方です。(MBA時代の恩師BCG元日本代表・内田和成さんから「優れた経営者はcharmがある」と教えて頂きました)

伊藤Pという理解者がいるから、多様性のあるチームがぶっ飛べる。その結果イノベーション番組が生まれた。と感じます。
…余談ですが「たこしげ事件」のナレーション収録時、まだモザイクが無い状態で、かつオンエアではカットされた部分も見ながら私は収録したのですが、テレ東在籍時で最も涙を流して大笑いしたことを、お伝えしたいと思います。(オンエアは全画面モザイク+大幅カット)

③打ち合わせ、意味ないっすから(報道Aさん)

1年目からテレ東の看板報道番組に配属された後輩女性のAさん。私が今でも公私で信頼し尊敬しているクリエイターです。

私が彼女と初めて会話したのは夜19:00の旧テレ東4階の片隅にあるナレーションスタジオ。収録で私がスタジオに行くと、その仕事とは関係ないルーキーのAさんが椅子に座っていました。「どうしたの?」と聞くと「いや、いま番組の打ち合わせなんすけど、意味ないっすからサボってます」と。
そのAさんの服装は、音にするなら「モコモコ」「ピカピカ」「ギリギリ」です。容姿も綺麗なので、要するに目立ちます。その姿のまま取材にも行きます。
仕事は極めてクリティカル。アウトプットの作品は決して気を衒うことなく、ハートに迫る素朴で温かい演出が出来る稀有な才能があります。
数年後、彼女は異動で番組制作をしないセクションに行きました。そこで彼女は日常の仕事と並行でドキュメンタリー番組を作り、海外のコンペで賞を受賞しました。
現在彼女は退職し、クリエイターとしての才能を活かし多くの人に喜びを提供しています。

服装や言動に意思のあるAさんは、会社や上司によっては理解されず、彼女のダイバーシティな才能は埋もれたり干される恐れがあったかもしれません。しかし、テレビ東京という会社、または上司や周囲の仲間が彼女を理解し、受け入れる環境があったことが、彼女の才能を伸ばし会社の業績につながりました。

Z世代のダイバーシティ人材の就職先に異変?

私が独自にヒアリング調査した定性調査によると「テレビ局は昔に比べて個性的な若手人材が減少した」というものがあります。
同様に「ファッション業界は昔に比べて個性的な若手人材が減少した」もあります。一方で「総合商社は昔に比べて個性的な若手人材が増加した」という結果があります。(あくまでもサンプルの少ないデータです)

コンプライアンスの厳しくなったクリエイティブな業界からダイバーシティ人材が減少し、コンサバティブな業界がイノベーションを求めZ世代の多様性を積極的に採用している。
近未来のニューロダイバーシティ業界は、非クリエイティブな企業群になるかもしれません。

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