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#20 心拍数とRPEでトレーニング効果をモニタリング

しっかりとトレーニングを頑張ったら、効果が出ているのかが知りたくなります。

zwiftにあるFTPテストやランプテスト(漸増負荷テスト)などの全力を出し切るテストを実施すれば、パフォーマンスが高まったのかが分かります。

でも、全力を出し切るテストを頻繁に行うのはハードルが高い。。

もう少し簡易な方法でモニタリングすることはできないか?

そんな疑問について、この論文は検証を行ってくれています。

記事の最後にはこの論文を元に、モニタリングメニューをご紹介したいと思います。

是非読進めてみてくださいね。




はじめに

トレーニングを行われている方にとって大事なことは、ご自身のパフォーマンスが着実に向上していることを実感できることだと思います。

「目標の大会まであと1ヶ月、トレーニングを続けたことで体力の向上は感じている。この感覚は本物なのだろうか?」

「ここ2カ月間しっかりとトレーニングを積むことができた。パフォーマンスはどれくらい上がったかな?」

このようにパフォーマンスが向上したのかどうかを数値的に評価したい場合、いつもの峠道でタイムアタックを行ったり、FTPテストなどを行うことが考えられます。

しかし、気が進まないこともありますよね。何故なら本気を出さないといけません。凄くしんどいことが確実です。

なので出来れば最大限の力を出さずとも、何かしらトレーニングの効果をモニタリングできる方法があればいいなぁと考えたことのある方もいらっしゃることと思います。

そんな皆さんに、今回の論文をご紹介いたします。

また今回の論文では6週間のトレーニングが処方されて、その後1週間のテーパリングも行われています。

是非、テーパリングの記事もご参照ください。


検証方法

今回の検証には20代前半の自転車競技選手(大学生、社会人)が参加しています。

参加者は全員オフシーズンに入っており、週のトレーニングが3時間以下の状況からスタート。

6週間のトレーニングが処方され、1週間のテーパリング期間が設けられました。

6週間のトレーニング内容は、一日のうちにインターバルトレーニングセッションと回復セッションが設けられ、一日2-3時間のトレーニングを週に4日実施しています。

その後1週間のテーパリング期が設けられています。このテーパリングは強度、量ともにかなり減らす方法が採用されています。

そしてパフォーマンス評価のため、6週間のトレーニング前後、テーパリング後に漸増負荷テストを疲労困憊まで実施。

漸増負荷テストの途中経過として、心拍数とRPEが適宜モニタリングされています。

パフォーマンス、心拍数、RPE(主観的運動強度)などにどのような変化が見られたか、が今回のポイントになります。


検証結果

まず漸増負荷テストの結果は、6週間のトレーニング前に比べてトレーニング後で、高い負荷まで漕ぎ続けることが出来るようになっていました。

つまり、パフォーマンスを上げることに成功しています。

そして1週間のテーパリング後では更に長い時間漕ぎ続けられていますので、テーパリングにも成功しています。

全力を出し切る漸増負荷テストでパフォーマンスが上がったことを確認できましたので、次に最も興味のあることが検証できます。

それは6週間のトレーニング前後において、漸増負荷テストの途中経過に違いはみられるのかという疑問です。

ここに違いがあれば、全力を出し切らずとも途中経過をモニタリングすることで、パフォーマンスが向上したかどうかをモニタリングできる可能性があります。

以下、検証結果をまとめます。

6週間のトレーニングによってパフォーマンスが向上した結果、漸増負荷テストの途中経過において、

  • 同じパワー発揮時の心拍数が低くなる:体への負荷が減っている

  • 同じパワー発揮時のRPEが低くなる:主観的に楽に感じる

上記2つの傾向がみられたとき、パフォーマンスが向上した可能性が高いと考えられます。

もし2つの結果のうちどちらかであれば、もう少し慎重に判断する必要がありそうです。

なぜなら同じパワー発揮で心拍数が低くなることは、オーバーリーチングによるパフォーマンスが低下している状態でも見られます。

そして同じパワー発揮でRPEが低くなったとしても、それだけだともしかすると単に前回のテスト時よりもコンディションが良かった、調子が良かっただけとも受け取れます。

  • 同じパワー発揮時の心拍数が低くなる

  • 同じパワー発揮時のRPEが低くなる

この二つが見られれば、パフォーマンス向上と捉えても良さそうですね。

注意点は参加者はオフシーズン明けでトレーニングを開始していること。

ベストパフォーマンスではない状態から始めて、6週間のトレーニングでパフォーマンスが上がっています。

ですので彼らにとっては通常の状態に戻っただけかもしれません。

その点を踏まえても、モニタリングを試してみる価値はあるのかなと思います。

ちなみにテーパリング実施後は、テーパリング前(6週間のトレーニング後)に比べて

  • テーパリング後、パワーと心拍の関係は変わらないが、心拍数の上限ぎりぎりまで粘れていた

  • テーパリング後、同じ強度でもほんの少し低いRPEになった

という結果となりました。

このことから、漸増負荷テストの途中経過だけではテーパリングの効果をモニタリングすることは難しそうです。


実際のモニタリング法の提案

今回の検証の結果、日々のモニタリングは全力を出さなくてもできる可能性が示されました。

ということで今回の論文と実施法は異なりますが、私なりに実践方法を提案してみたいと思います。

必要なことはおおよそのFTPを知っていること。だいたいで構いません。

そしてパワーと心拍数が測定できて、ローラーなどの止まる必要がない環境があることです。

漸増負荷テスト

  • 50%FTPほどの強度からスタート

  • 次のステージを+20w or +25wと上げていく

  • 各ステージを3min-1minレストで進めていく(レストは40%FTP)

  • レスト時に、ステージのRPEを記録(少数第一位まで)

  • 110%FTP(VO2max強度)まで実施

  • 前回のテストと結果を比較

RPE(主観的運動強度)については、本来は1刻みで評価を行うものなのですが、おそらくそれではステージが一つ進むとRPEが1上がるといった感じで同じような結果になりがちです。

少しだけ変化が起こることを考慮して、0.1刻みで行ってみると良いかなと思います。

そして前回ご自身がつけたRPE値は、テスト前には見直さないようにしましょう。

「前回これくらいだったのか、そしたら今回はこれくらいにしよう」と、ご自身の現状の評価が揺らいでしまいます。

テスト結果の評価
以下の二点が見られれば、トレーニング効果があったと考えます。

  • 各ステージの心拍数が低下

  • 3ステージ目以降でRPEが低くなる

この方法であれば、もっともキツい時間帯は110%FTPの強度で3分間行っている間。

そこまで辛すぎることはないので、日々のモニタリングとして大きな負担なく実施できるのではないかと思います。


おわりに

今回はトレーニング効果を判定するための方法として、全力を出し切らなくて評価ができる方法を取り上げてみました。

今回の例に限らず、ご自身の現状をモニタリング出来る方法が多いほど、より柔軟なトレーニング計画が組めることと思います。

今後、私の場合の具体例などもご紹介させてもらいますね。

今回も最後までお読みくださりありがとうございました。

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ご紹介した論文

Martin, & Andersen, T. ; (2000). Heart rate-perceived exertion relationship during training and taper. In Journal of Sports Medicine and Physical Fitness (Vol. 40, Issue 3).


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