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#17 テーパリングはトレーニング量50%ダウンが効果的

大会前などにトレーニングを軽くするなど、ある期間トレーニングの負荷を落とすことをテーパリングと言います。

大会も近いし、トレーニングは軽めにしたい。でもどれくらい軽くすればいいのかな?とお悩みの方もいらっしゃることと思います。

人によってそれぞれだ、ということがまず前提にありますが、今回の論文では週のトレーニング時間を50%にすると効果があったという結果になっています。

どのような検証を行ったのか、是非読み進めてみてくださいね。



はじめに

みなさんこんにちは、川崎です。この記事に興味をもってくださりありがとうございます。

今回取りあげた内容はテーパリングになります。テーパリングというと何だか専門的と感じる方もいるかもしれませんが、疲労がたまったときにトレーニングを軽くしてみたり、大会前にトレーニングを軽くするなど、自然と行っているものにテーパリングという名前がつけられています。

ここではテーパリングについてもう少し詳しく説明していきますね。


テーパリングとは

昔から経験値として、「体力を高めてから疲労を抜くと、良いパフォーマンスになりやすい」ということが知られています。

この経験値をさらに体系化したものがテーパリングという言葉でまとめられています。

英語でTaper(テーパー)とは先細る、徐々に減らすといった意味を表していて、トレーニング用語のテーパリングもその意味からきています。

「レースや大会に向けてトレーニング負荷を下げること

が大枠の意味だと捉えてください。

大事なことは大会に向けてトレーニングを全く行わなくすることではなくて、トレーニングの負荷を下げるということです。

大切な大会一週間前までハードなトレーニングに取り組んで、一週間は体を完全に休めるのではなく、最後の週もある程度のトレーニング負荷を継続した方が当日のパフォーマンスは上がりやすいと考えられています。

また、大会の前ではなくともトレーニングを軽くする期間(つまりテーパリング)の調整の仕方で、体の適応も変わってきます。

このテーパリング、方策は大きく分けて3つの要素で調節できそうです。

  • トレーニングの量(時間、距離)を減らす

  • トレーニングの強度(ワット数)を減らす

  • トレーニングの頻度(週に何回か)を減らす

皆さんは大会前、どのようにトレーニングを調整していますか?一番手っ取り早いのは全ての要素を減らすことですね。

しかし、一般的にはトレーニングの強度は落とさない方が良いとされています。

「トレーニング強度を落とさない」とは、たとえば今までのトレーニングとして200ワットで5分間走を行っていたとしましょう。それを170ワットで5分間走を行うと、トレーニング強度は下がります。一方で200ワットで3分間走なら、強度自体は下がっていないことになります。

テーパリング中のトレーニング強度の調整については、次回の論文レビューでご紹介しますね。

今回の論文では、テーパリング期間にトレーニング量(時間)をどれくらい減らすと効果的なのか?を検証しています。

今までトレーニングを週に8時間ほど行っていたとすると、テーパリング期間はどれくらいにすると効果的なのでしょうか?週に2時間、4時間、6時間?この論文では、そのことを検証してくれています。


検証方法

検証にはロードバイク競技選手が参加しています。参加者は6週間のトレーニングを処方され、その後1週間のテーパリング期間が設けられました。

6週間のトレーニング期間中、トレーニング負荷は論文の表記を見る限りFTP前後の強度で60分行うことを週に5日行っています。ですので週の合計トレーニング時間は300分です。

テーパリング期間の1週間は、以下の3つの方法が採用されました。

  • 週全体で合計時間を30%減らす

  • 週全体で合計時間を50%減らす

  • 週全体で合計時間を80%減らす

どのグループもトレーニングの合計時間は減っていますが、トレーニングの強度はFTP前後に保たれています。

そして検証はテーパリング期間の前後に20kmタイムトライアルをスマートトレーナーで実施。6週間のトレーニング期間により疲労が重なっているテーパリング直前の状態と、1週間のテーパリングが明けた直後の状態で果たして結果は異なるのでしょうか?

検証では20kmタイムトライアル時の心拍数や酸素摂取量、RPEの評価も行われています。


検証結果

検証の結果、20kmタイムトライアルの結果が向上したのは週全体で合計時間を50%減らしたグループのみでした。時間にして1分20秒短縮。

また、50%テーパリンググループでは20kmタイムトライアルのタイム向上に加えて酸素摂取量も増えていたことから、心肺系の適応や有酸素能力の向上があったと筆者は考察しています。

心拍数やRPEはどのグループも変化が見られませんでした。

ここで注意をしたいのが、30%テーパリンググループと80%テーパリンググループの中にも20kmタイムトライアルが向上した選手はいるものの、逆にタイムが落ちてしまった人もいたりとまばらな結果だったために統計的には変化が見られなかったということです。

全く効果がないという訳ではないということを付け加えておきます。

ともあれ50%テーパリンググループの成績が良かったのは事実。もしテーパリングを行おうと考えている場合、時間の調整は50%ダウン前後で効果が高そうですね。


おわりに

テーパリングではどれくらい時間を減らすことが効果的なのかを検証した結果、50%ダウン前後あたりで効果が高そうなことが分かりました。

一日あたりのトレーニング時間を半分にするイメージですね。

記事の途中でもお伝えしたように、やはり人によって個人差がありますので、実際に効果を感じられるかを是非ご自身でトライしてみてもらいたいなと思っています。

ただ、試すといっても私たちの時間は限られています。だからこそ今回の論文のように検証を行ってくれている結果を参考にして、日々のトレーニングのトライ&エラーをより精度の高いものにしてもらえれば幸いです。

うまくテーパリングの効果を活用して、ご自身にとってのベストな方法で大会本番でも良い結果を出してくださいね!

最後までお読みくださりありがとうございました。スキ、フォローをいただけると大変励みになります!


ご紹介した論文

Neary, J. P., Bhambhanl, Y. N., & Mckenzie, D. C. (2003). Effects of Different Stepwise Reduction Taper Protocols on Cycling Performance.


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