見出し画像

#6 オーバートレーニングを防ぐためには心拍数とRPEのモニタリングが有効

みなさんこんにちは。今回もお読みくださりありがとうございます。今回はオーバートレーニング(オーバーリーチング)にまつわる論文をご紹介します。年齢を重ねると身体的な限界は意外とすぐそばにあるもの。今以上にヒルクライムのタイムを伸ばしたり、レースで順位を上げたいという思いでトレーニングを行うとき、トレーニングの負荷(強度や量の総量)は漸進させる必要があります。しかし、若かりし日のようにトレーニングで追い込みすぎると、体の不調があちらこちらから聞こえてくることもあるでしょう。トレーニング負荷を漸進させつつも、その負荷が体にとって過剰ではない程度に留めることも大切です。今回の論文では、オーバートレーニングにならないためにモニターすべき体のサインについて検証を行っています。


この論文で分かったこと

まず始めにこの論文で分かったことを紹介すると、オーバーリーチングの状態(後ほどご説明します)ではゾーン3(テンポ)~ゾーン5(VO2max)のトレーニング領域において

  • いつもより7~9拍心拍数が低下する

  • いつもより筋肉のキツさ(RPE)を強く感じる

  • 呼吸のキツさ(RPE)はいつもと変わらない


内容をご紹介する前に、2つの知識的な整理を手短にしておきます。

知識の整理1:オーバーリーチングとオーバートレーニング

オーバーリーチングとは十分な回復期間を設けないまま、許容できる以上のトレーニングを短期間継続している状態です。プラスにもマイナスにも働くことがあります。

一方オーバートレーニングとは、オーバーリーチングの状態が長期間続くことで陥る状態です。パフォーマンスが停滞して、常に疲労感を感じる状態が数カ月単位で改善されないこともあります。

今回の論文では、オーバーリーチングの状態を起こして検証を行っています。


知識の整理2:RPE(Rating of Perceived Exertion)

日本語訳は主観的運動強度で、トレーニングを行ったときなどに感じた主観的な負担度を数値で表したものです。「今日のトレーニング、キツさはどうだった?」これを数値化します。数値の設定の仕方にはバリエーションがありますが、今回は広く普及しているボルグの提唱した6から20の数値と主観的な表現を対応させる方法を採用しています。今回の論文では、筋肉のキツさと呼吸のキツさを分けてRPEを測定しています。


今回の論文が検証したこと

  1. 体に大きな負荷をかけると、オーバーリーチングの状態になることがある

  2. オーバーリーチングの状態が続くとオーバートレーニング状態へ移行する

  3. オーバートレーニング状態になるとパフォーマンスアップは望めない

  4. オーバートレーニング状態に陥らないために、オーバーリーチングの兆候を見つけられる指標はあるか?←ここを検証


検証方法

今回の検証にはアマチュアのトライアスロン選手が参加しています。3週間、普段とくらべると1.4倍高い負荷のトレーニングを処方されました。このトレーニング期間の前後で測定したランプテスト(階段状に負荷が上がっていくテスト)の結果からオーバーリーチングになった選手をピックアップして検証。オーバーリーチングの判定には3週間いつもと同様の負荷を行った選手たちのテスト結果から基準が定められています(基準以上にパフォーマンスが下がった選手をピックアップ)。


検証結果

検証の結果、オーバーリーチングの状態になった選手には以下のような特徴がみられました。

普段と比較した場合、ゾーン3(テンポ)~5(VO2max)の強度での

  • 心拍数が7~9拍ほど低下

  • 筋のRPE(筋の疲労感)も3~4ほど高かった。つまり同じ強度なのに相当きつく感じる

  • 呼吸のRPE(呼吸のつらさ)は普段とあまり変わりがなかった


まとめ

オーバーリーチングの兆候を早期に見つけられる指標はあるか?を検証した結果、いつものトレーニングで心拍数が上がらないこと、筋の疲労感が非常に強いことなどがサインとしてあらわれることが分かりました。また今回ご紹介は省いていますが、血中ホルモンなどの検査では変化がなかったようです。

最後に私の経験談ですが、6月末にzwiftのSST Medというメニューを実施しました。その後2週間いつも以上にトレーニングを行って、結構疲労感がある状態で検証も兼ねてSST Medを再度行ってみました。その結果、いつものようには心拍数が全く上がらずに筋の疲労感が強くなりラスト10分で断念しました。

ということでトレーニングをより効果的なものにするためにも、客観的な指標(心拍数)や主観的な指標(筋のRPE)をモニターしながら体の休め時を見極めていくことが大切だと身をもって実感した出来事でした。

みなさんも是非、日々の記録をしてみてください。

最後までお読みくださりありがというございました。



今回ご紹介した論文

le Meur, Y., Hausswirth, C., Natta, F., Couturier, A., Bignet, F., & Vidal, P. P. (2013). A multidisciplinary approach to overreaching detection in endurance trained athletes. J Appl Physiol, 114, 411–420.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?