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嗚呼、アフガニスタン!カブールの仲間たちは・・・今?③

アフガン取材を支えてくれた仲間たち


アフガニスタンからの米軍完全撤退からまもなく1週間。日本人と共に働いてくれた現地の人たちなどおよそ500人の国外避難はできぬまま、自衛隊の輸送機は日本に戻りました。

私にとって何より心配なのは、十数年前に、カブールで取材を助けてもらった、当時二十代の青年だった現地の仲間たちの状況です。

現地の言葉も習慣も何もかもが分からない私には、彼らの助けなしに取材は成立しませんでした。


海外脱出できた仲間


■その中の一人、A君。

パシュトゥン人とタジク人の両親を持ち、流暢な英語を話し頭脳明晰。本人も「俺はmost democratic Afghanだ」と笑いながら話していた開明的な彼は、近年は欧米の通信社の特派員を務めていました。

彼こそは、まっさきにタリバンの粛清の対象になりそうな人物で、実際にタリバンから何度も「殺害予告」電話がかかってきていたとのこと。

少し前に既に家族を中東のある国に移し、自らも国外に出ようとしたところを、あの大混乱で足留めに。しかし、どうやったかはまだ聞けていませんが、なんとか家族と合流できたとのこと。

よかった!しかし彼は私との英語のSNSでこう書いていました。

"It is a relief I made it but so many others, relatives friends, were left in Kabul. Having a sense of guilt I left them behind and can’t get over it. "
(成功したことには安堵したけど、まだ多くの親戚や友人がカブールに残されている。彼らを残してきたこと、何もできないことに、罪悪感を感じる)

彼はまた、「国外に脱出したことは、果たしてよかったのか」と悩みを見せていたのです。


■もう1人の仲間、B君。


彼は、謙虚で忍耐強くまじめで、日本人に広く好かれるタイプ。実際我々との関係もずっと続いています。名門大学出で、父親も国際機関で勤務していたそうです。

彼も、海外脱出を選択。家族を先にヨーロッパに逃がし、彼も一時カブールを出られなくなりましたが、家族と合流できたそうです。

以下は、彼とのやりとりから。

"Once we have peace we will shift to our homeland again. At present we have shifted our families to (欧州の国名)to start new life it is tough but we have to go ahead. "
(和平が実現したら私たちは母国に戻る。今は家族を脱出させ、新しい人生が始まるところ。厳しいけれど、前に進むしかない)

なんとか国外に脱出できた二人とも、これからが大変。どういうステータスで外国に滞在できるのか。どう収入を確保するのか、今後母国に戻れるのか。

しかし、安全な国で何十年も過ごしてきた私には全く想像すらできないほどのエネルギーを彼らは持っています。それにしても、なんという劇的な人生!

(写真: カブール中心部を流れる川。干からびて流れがほとんどない。2004年撮影)


パスポートさえ手に入らぬ仲間も


■その一方で、C君、そしてD君は、国外退避の目処が全く立たぬまま、時が過ぎています。

私がいた当時、事務所の、いわば雑用係から始め、今では取材や撮影をするようになったC君。

A君やB君と違って大学卒のエリートではありませんが、独学で苦労して覚えた英語を使い、謙虚で誰よりも誠実で、人に対して思いやりのある彼。

そして、英語も一言も話せないものの、長年ドライバーを務め、安全に、確実に私たちを取材先に連れて行ってくれたD君。

普段から海外出張などなく、コネクションなどもない彼らは、出国先のビザどころか、パスポートもなし。役所が閉まっているため、パスポートを入手できず、ひたすら待つしかないというのです。

期待していた自衛隊の輸送機にも乗ることができませんでした。


そして、出国が仮に出来たところで、どこに行くのか。全く当てもなく、仕事を見つけるのも困難。将来へのビジョンが全く見えないのです。

「隣国パキスタンに行くか、日本に行くか、どっちがいいと思いますか?」--- 自衛隊機派遣の話が出た時に彼にアドバイスを求められた私は、胸が痛みました。

彼らが、この日本に難民として住み、辛いながらも希望を持って頑張る姿を、私は想像できなかったからです。長年日本人を助けてもらったのに、彼らの命の危機を前に何も出来ず、日本が希望の地だとも言えないことに、本当に心苦しくなりました。


それにしても、日々タリバンに怯える彼からのメールは、読んでいて辛すぎます。

"..we are hopeful to manage bring our families out of this country with help of Japan, because I don’t think Taliban will change. By passing every day they are showing they’re evil faces. "
(なんとか日本の助けで家族を国外に出したい。タリバンは変わらないと思うから。日に日に恐ろしい顔を見せ始めているのです。)


そして、夜眠れない日が続いていると言います。

"...we are in tension after hearing that Taliban are started searching home by home the afghan who worked with former government and foreigners still I don’t sleep well."
(タリバンが一軒一軒回って、旧政権と外国人と働いたアフガン人を捜索していると聞き、緊張しています。まだ夜寝られないのです。)


最近ニュースでは、もっぱらタリバンの新政権がどうなるかについて報じられています。

しかし、抵抗運動は続いているし、人々の恐怖感と絶望感はまだ存在し、何より、我々に協力してくれた彼らが、まだ恐怖の中で身動きが取れずにいるのです。

今は何もできませんが、アフガニスタン情勢を考え続けます。


ここまでお読みいただきありがとうございました。


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(カブールで出逢った兄妹)

AJ😄



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