見出し画像

「PCR漢詩」が流行!?--毎日検査させられる中国の人たちの「風刺」とは

中国の知り合いから、動画が送られてきた。雪が降る中、マンションの下の広場で長蛇の列を作らされている人たち。その先では全住人対象のPCR検査が行われている。動画の送り主も朝から並ばされて、寒くていい加減にして欲しい、これで何日目だと疲れ果てている。ちなみにマンションの敷地からは出られないのだという。

中国では、各地であまりに厳しいゼロコロナ政策「清零(=qīnglíng チィンリィン)政策」への抗議活動が起きて、地方によっては規制が緩和されたり、政府が民意に敏感になっているとのニュースがこのところ続いていたが、実態はどうなのだろう。

少なくともこの方の話では、未だにしょっちゅう「静黙」と言う措置が出され、マンション下の食料品店に買い物に行く以外は外出できないなどの制限が続いていて、毎日のようにPCRテストを受けさされているという。しかも、雪の中、外に並んで。

こんな画像も。
マンションの玄関を外から封鎖した写真が、住人全員が参加するSNSのグループに送られてきたというのだ。「皆さん、外に出られませんからね」ということだ。これじゃ、監獄だ。これを撮った人は建物の外から撮っているわけだから、ますますイライラが募る。

ゼロコロナ政策は緩和どころか、少なくともこの場所では厳しい状況が続いているように見える。

ところで、今、ある動画がSNS上で出回っていて、笑える、という。

そのタイトルは、

「诗朗诵"做核酸"」
=詩の朗読“PCR検査”」

「做核酸(=zuò hésuān ズオ・ホースワン)」

・・とは、「PCRテストをする」という意味で使われている言葉だ。

このnote上では動画ファイルは載せられないみたいなので、スクショを少し紹介。

詩の朗読というのは、いくつかの古典の有名な漢詩の朗読で、アナウンサーのような声の男女二人が詠みあげるのだが、実はその古典漢詩の最後がさりげなく「做核酸!」という言葉で締められる、という馬鹿馬鹿しいギャグ動画なのだ。

「春夏秋冬PCR!」の文字

ただ、知り合いが送ってくれた動画は、実はこれじゃなくて、声はこの男女の朗読だが、映像は、どこかのマンションから下を見下ろして撮ったもので、先ほどのようなPCR検査待ちの長蛇の列が映ったもの。

どうも投稿者が、この男女の朗読に、自ら撮った映像をつけているようだ。ネット上には似たようなパターンのもの、また自ら方言で詩を朗読する動画も出回っていた。

さて、その「PCR漢詩」の内容とは?

例えば、以下は、日本人も学校の漢文の授業で習う有名な漢詩、「楓橋夜泊」より。

七言絶句の、1234567というリズムが心地よい。

本来の詩では、
「夜半鐘声到客船(やはんのしょうせい、かくせんにいたる)」なのだが、

ここでは、「夜半鐘声〜」と、情緒たっぷりに詠みあげた後に、「做核酸!(zuo hesuan=PCR検査を為す!)」と叫ぶ。こんな具合だ。ナンセンスだが、毎日のように検査をやらされている人民のやるせない気持ちが伝わってくる。

ちなみに、客船の「船(chuan)」と核酸の「酸(suan)」で、韻もちゃんと踏んでいる(笑)

朗々と詠いあげながら、「トホホ。何につけてもPCRですわ」という自嘲気味な、ナンセンス漢詩が繰り広げられていく。

他には、

「敢问核酸何时休 」 

・・・PCRがいつ終わるのか、そんなこと聞けようか(いや、聞けない)

学校で習った。そう、「反語」だ。

「君不见 男女老少齐楼下」 

--- 君見ずや、老若男女がマンションの下に並んでいるのを!

この他にも、

「莫愁前路无知己〜」

行く先に知り合いがいないことを心配するなかれ・・・と来ると、

本来の詩では、

「〜天下谁人不识君」

・・・世の中の人は皆あなたのことを知っていくのだから(意訳)と続く。

しかし、この「PCR漢詩」では、

「〜知己都在做核酸!」

・・・その知り合いは、みんな今”PCR検査中”ですから!

・・・と、バカバカしい締め方をしているのだ。

ところで、風刺とは言え、SNSで、こういったゼロコロナ政策を茶化すようなことをするのは問題ないのだろうか、とその人に聞いたら、「これぐらいは、問題ないでしょ」との答え。

我慢を強いられ続ける生活を笑い飛ばさないとやっていられない人民。統治する側も、この程度はガス抜きとして許しているのだろうか。

しかしその後、この動画を、中国のサイトで検索したら、普通は見つかるはずが、削除されてしまったのか、「見つかりません」になっていた・・・

私の知り合いたちの、この不自由な生活は、いつ終わるのだろうか。

ゼロコロナ政策に関する、この国のトップの言葉・・・

「坚持就是胜利〔頑張り抜けば勝利する)」jiānchí jiùshì shènglì

これが、重くのしかかる。
コロナに勝利するまで頑張るのか。勝利してないのはまだ頑張りが足りないからなのか。いや、そもそもコロナに勝利ってどうなれば勝利なのか。

いずれにせよ、まだ多くの人民にとっては、この「PCR漢詩」の言うところの、

敢问核酸何时休

PCR いつ終わるのか、聞けようか?〔いや、聞けない)

・・・という状況のようだ。

世界中でウィズコロナへの転換が進む中、今も隣の国では、多くの人がこのような生活を余儀なくされている。



きょうも最後までお読みいただき、ありがとうございました。
AJ 😀




この度、生まれて初めてサポートをいただき、記事が読者に届いて支援までいただいたことに心より感謝しています。この喜びを忘れず、いただいたご支援は、少しでもいろいろな所に行き、様々なものを見聞きして、考えるために使わせていただきます。記事が心に届いた際には、よろしくお願いいたします。