二度は見たくないウツ映画の話
長雨が続いて、うっとうしいからウツ映画を見よう。
……とはなかなかならないと思いますが、人生長い道のりの中でそういう機会もあるかもしれません。そんなときに必ず役に立つ、『二度は見たくないウツ映画』を4本ご用意いたしました。
皆様の役に立てることを心から祈っています。
ちなみに、ウツ映画といえば真っ先に出てくるであろう『ダンサー・イン・ザ・ダーク』とか『ミスト』とかは決して嫌いではありませんが、有名なんではぶきました。
あと、見たあとの文句等は受け付けておりません。自己責任でお願いいたします。ネタバレは極力避けるつもりです。
【1】マーターズ
ハリウッドのリメイク版は未視聴ですが、あまり評価も良くなさそうなので元のフランス版がオススメ。
リュシーは何者かにより長期間監禁され凄惨な拷問を受けていたが、自力で脱出し、その後施設に預けられる。そこで知り合ったアンナの支えにより心の傷を癒してゆく。
15年後、平和な4人家族の朝食にリュシーが突如あらわれ家族を虐殺。直後、アンナを電話で呼び出した リュシーは、この両親が自分を監禁していた犯人であったことを告げる。
最初からエグくて痛いし、血だらけで濃厚にはじまります。おおまかには復讐の話なのかな? という思いはわりとすぐに裏切られ、我々の理解を大きく超えるカルトなお話に。
全体的に痛々しいシーンは満載ですが、なんと言っても拷問シーン。
長いし。痛いし。つらいし。エグいし。とにかく不必要に長い。いや、そこがキモなんでしょうから、この場合は「必要に」長いというべきなのでしょう。見ているこっちがもう勘弁してくださいと謝りたくなってきます。
意図もわからず殺されるというのは、ホラー映画ではよくある話ですが、「聞いても意図が理解できない」というのはまた新しい感覚です。この辺がね、この映画をひとまわウツウツしくしている大きな要因ではないでしょうか。
たまに、いやそんなに? 我ながら盛ってない? と思って見たくなることはあるんですけど、今のところあと5年は見ないと思います。
【2】シシリアン・ゴースト・ストーリー
シチリアのちいさな町。ある日、突然13歳のジョゼッペ少年が姿を消す。ジョゼッペに思いを寄せていた少女ルナは、彼の身を案じ、彼を隠してしまった闇の世界へと踏み込んでいく。
『実際におきた誘拐事件から紡ぐ寓話的ラブストーリー』とうたっておりまして、作品の評価は高いです。映画としてはキラキラして素敵な部分もたくさんあったと思います。でもわたしの中ではこれは完全にウツ映画です。
そもそも「実際に起きた誘拐事件」とは? 記事をお借りするとこれがよくまとまっていると思います。端的に内容を書くと、ジョゼッペ少年がマフィアに人質にされ、約25カ月地下室に監禁されたあげく、絞殺されて硝酸で溶かされた事件です。
――え? 恋愛映画じゃないの? とお思いのあなた。この実際に起きた出来事はそのまま作中でもやりますし、序盤の序盤からジョゼッペ少年はさらわれて、ルナと会うことすらかないません。
寓話的とあるように、彼女の思いと、その想像で物語は進んでいくんです。そして勝手に妄想爆発している間に、ジョゼッペ少年は首を絞められて、硝酸で溶かされる、と。
どう考えてもウツ映画です。
評価する人の気持ちはわかりますが、ラブストーリーなんて嘘っぱちです。ウツ映画だと思って見ましょう。
【3】ブルーバレンタイン
結婚5年目のディーンとシンディは、夫婦関係が上手くいかず悩んでいる。何とかして関係を良好にしようと努力するディーンに対し、シンディは素っ気無い態度を取り続ける。
これは上のやつと違ってちゃんと恋愛映画です。
でも恋愛における「一番エグイ部分」を切り取って見せてくれる。そんな恋愛映画なのです。ちなみにみなさんは恋愛の一番エグイ見せ方ってなんだと思いますか? これを考えていくと最終的には皆さんも同じ答えに落ち着くんじゃないかと思います。その答えは、
「始まったばかりのラブラブでキラキラの時期と、終わる間際のドロドロでどうにもならない時期を交互に見せる」です。
終わる間際だけを描くよりも確実に効果的。そして、効果的でエグイその演出をやってのけたのがこの映画『ブルー・バレンタイン』なのです。
ビフォーアフターでライアン・ゴズリングが禿げ上がっちゃってるのとかもあれなんですけど、最初はあれほど純粋でまっすぐに愛があった、今もまったく愛がないわけじゃないけれど、5年の間に積もったすれ違いがもうどうにもならなくなっている。
ケンカ別れとか、浮気をしたとか、そういうきっかけがある方が人間納得しやすいですし、変化も受け入れやすいと思います。でもそうじゃない、ただすれ違ってしまっただけの変化って、逆にどうにもできなくて見ていて辛く耐えがたいものがあります。
しかも随所に、恋愛初期のキラキラだった映像がちりばめられ、負の変容から目を背けようと思っても背けられないというドSっぷり。
感情を揺さぶられるという意味では、この映画を好きな人も居ると思いますが、わたし的にはちょっと受け入れがたいほどウツな映画でした。
【4】SF核戦争後の未来・スレッズ
核戦争後を描いた映画というのは他にもいくつかあると思いますが、ここまでおぞましい映画は他にないでしょう。
イギリスBBCが制作した今作は、様々な世界的権威者50人以上に取材を重ね、核戦争後の世界を限りなく真実に近いかたちで描きだします。
テロップが出来事を淡々と伝えるなか凄惨な映像が流れる様は、映画やドキュメンタリーというよりも資料映像を見ているよう。地味と言えば地味です。
予告編では核が落ちた瞬間のわりと派手なシーンが使われていますが、実際に怖いのはそのあとです。経済やライフラインが崩壊し、核の冬が訪れ、放射能や伝染病も蔓延する。人々は飢えと寒さにただ耐えるしかない。そんな様を時系列にそって描いてゆくのです。
水も食料もない。日も差さない。これから冬も訪れる。それでも人は生きていかなければならない。作中に出てくる人たちになんの希望も持てない未来が続いていくように、見ている私たちがどれだけもう勘弁してほしいと懇願してもまだまだ映画は続いていゆくのです。もう終わってくれと何度思ったことでしょうか。
恐ろしいのはこれが、核が落ちたあとに十分想定されうる現実的な未来であることです。つまり世が世ならいつ自分に降りかかってもおかしくありません。正直、もう二度と見たくないです。
【5】まとめ
そんなウツ映画4選でした。
結構バラエディに富んでいるな、と思いますね我ながら。オススメは『SF核戦争後の未来・スレッズ』ですけど、これあんまりレンタルDVD屋さんとかにはおいてないんじゃないだろうか。この中では一番見るのが難しそうな気がします。
痛いのがダメな人は間違っても『マーターズ』を見てはいけません。恋愛にトラウマがある人は『ブルー・バレンタイン』を見てはいけません。マフィアに狙われている人は『シシリアン・ゴースト・ストーリー』を見てはいけません。核攻撃される可能性のある人は『SF核戦争後の未来・スレッズ』は見てはけません。
そんな感じで考えると、この中ではシシリアン~が一番見やすいかもしれませんね。多分一番、比率は低そうですから。
再度ことわっておきますが、見るかどうかは自己責任でお願いいたします。
どれも抜群に見ごたえはあります。
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「欲しいものリスト」に眠っている本を買いたいです!(*´ω`*)